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脊髄脂肪腫(せきずいしぼうしゅ)とは、先天的な脊椎(せきつい)骨の形成不全の部位に一致して、脊髄が正常に形成されない場合に、異常部位に脂肪組織が付着し、それが皮膚や筋肉などの周囲組織に連続している状態。
一般的には、腰背部に皮下脂肪腫、母斑(ぼはん)、皮膚陥没、異常毛髪などの皮膚異常が認められます。
成長とともに、付着した脂肪腫によって固定された脊髄が引っ張られて引き伸ばされ、脂肪腫自体の肥満による脊髄の圧迫によって、両下肢運動障害、痛みなどの感覚障害、排尿・排便障害が起こります。
脊髄脂肪腫は幼少期に発生することが多く、小児期にあまり目立った症状がなくても、身長が一気に伸びる成長期のころに脊髄が引き伸ばされる度合が強くなって、障害が目立ってくることもあります。
両下肢の運動障害として、下肢の筋力が低下する、歩きにくくなる、転びやすくなる、足がまひして動かない、足の変形、左右の足が非対称、足が細いなどがみられます。
感覚障害として、靴ずれやその部位の潰瘍(かいよう)、腰を曲げた際などの腰痛、下肢痛、下肢から足のしびれなどがあります。
排尿・排便障害として、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして、尿を漏らしたり、便秘になったりすることもあります。性機能障害が起こることもあります。 症状が一度出現すると、その改善率はあまりよくありません。
しかし、これらの障害が出る前に乳幼児の腰背部の皮膚の異常で疑われて、脊髄脂肪腫と診断されることが多いようです。中には、脊椎骨の形成不全を伴ったりするため、成長とともに脊椎側湾症になることもありますが、水頭症などの脳の異常は伴わないことがほとんどです。
脳神経外科、整形外科、形成外科、小児外科の医師による診断では、脊椎部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、病変を詳しく観察します。
また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。
脳神経外科、整形外科、形成外科、小児外科の医師による治療では、腰背部の皮膚の症状のみで発見され神経症状がない場合、手術をするかしないかは多様な意見があります。予防的手術をしないで経過観察を行った場合に、いったん症状が出ると、手術をしても症状を改善することは難しいという問題もあります。
一般的には、脊髄脂肪腫が発見されたのが生後6カ月までの場合には、少し体が大きくなるのを待って手術を計画します。すでに生後6カ月をすぎていた場合には、体調のよい時を選んで入院と手術の計画を立て、可能なら生後1年までには全身麻酔下で手術を行い、脊髄と付着した脂肪組織を切り離し、不要な脂肪組織を摘出します。生後1年以上になると、組織が硬くなって手術がやりにくくなるからです。
成長期に差し掛かった時期に両下肢運動障害や排尿・排便障害が出てきた場合も、全身麻酔下で手術を行い、脊髄と付着した脂肪組織を切り離し、不要な脂肪組織を摘出し、脊髄の引き伸ばしを緩めます。
脊髄と尾骨とをつなぐ糸のような組織である終糸(しゅうし)に脂肪腫が付着している終糸脂肪腫と呼ばれるものでは、手術の予後がよいといわれています。逆に、癒着が強かったり脊髄を巻き込んでいる脂肪脊髄髄膜瘤(りゅう)と呼ばれるものでは、難しい手術となり、手術の後かえって神経まひがひどくなることもあります。
また、症状が出てから時間が経つと、手術しても改善は難しく、特に排尿障害が改善しにくいといわれています。
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