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真菌性眼内炎
真菌性眼内炎とは、何らかの原因で真菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症。
真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。
この真菌が目の中に入って起こる真菌性眼内炎には、真菌が手術の切開部や眼球のけがから侵入する外因性のものと、体のほかの部分に感染していた真菌が血流に乗って目に波及する内因性のものがあります。
目の手術による外因性の真菌性眼内炎のほとんどは、手術後2日から3日ほどで発症します。原因となる真菌によっては、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。
内因性の真菌性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。
真菌性眼内炎の原因となる真菌は、皮膚や腸管に普通に存在しているカンジダが多く、次いでアスペルギルス、クリプトコックス、フサリウムなどが続きます。
内因性の真菌性眼内炎では、目の症状が出る前に、発熱することが多く認められます。発熱のほかに全身症状が出ることもあります。続いて1週間前後で、目の前に蚊など小さい物が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかっているように見える霧視などの症状が出ます。
眼内の炎症が悪化すると、ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、視力低下を自覚するようになり、さらに進行すると、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。
一般的に、内因性の真菌性眼内炎は程度の差こそあれ、両目に生じることが多いのが特徴です。
真菌性眼内炎は外因性、内因性とも、飛蚊症が出た時期に眼科を受診し、適切な治療を受ければ、ほとんどのケースで治癒します。しかし、数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。
眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる真菌が入った可能性が強いとして、外因性の真菌性眼内炎と判断します。
内因性の真菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無、発熱の有無を確認します。
確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。
分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている真菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。
また、同じような症状が出る細菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。
眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。
原因となる真菌はカンジダがほとんどですので、第1選択の抗真菌剤としてトリアゾール系薬剤のジフルカンを用います。
後に、真菌性眼内炎の原因であると判明した真菌に応じて、抗真菌剤の選択を調整することがあります。ジフルカンが無効な場合は、ほかのファンギゾン、アンコチル、フロリード、イトリゾールなどの抗真菌剤を選択します。
抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。
感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。
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