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深部静脈血栓症



飛行機内などの座席で長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する血栓症

深部静脈血栓症とは、飛行機内などで長時間、同じ座席で同じ姿勢を取り続けることにより、静脈内に血栓を生ずる疾患。エコノミークラス症候群、ロングフライト血栓症、ロングフライト症候群、旅行者血栓症、静脈血栓塞栓(そくせん)症とも呼ばれます。

飛行機のエコノミークラス以外の座席、飛行機以外の列車、バス、自動車などの交通機関や施設の座席でも、発症することがあります。

飛行中の機内では乾燥した環境のため、長時間のフライトでは体の水分が失われ、血液が濃縮して固まりやすい状態にあります。さらに、狭い座席に同じ姿勢でずっと座り続けていることで、下肢や腰が圧迫され静脈血の心臓への巡りが徐々に悪くなり、体の深い組織内にある下腿(かたい)静脈や、大腿(だいたい)静脈、あるいは骨盤内の深部静脈内に、血の固まりである血栓ができやすくなります。

そして、およそ6時間を超える長時間のフライトを経験した時には、血栓ができる傾向があります。

血栓が左右両側の下肢の深部静脈内に同時にできることは極めてまれで、左右どちらかの膨らはぎなどの内部に不快感、鈍い痛み、はれなどを起こします。一般的には4対1の割合で、左側の下肢に発生します。  

軽症の血栓が、さらに血液の流れに沿って心臓側に徐々に延び、成長していって、大腿部あるいは骨盤内の深部静脈までふさいでしまい、片方の下肢に強い痛みやむくみが出たり、チアノーゼを起こして青紫色に変色したりします。

中等症の血栓が、座席から立ち上がった際などに血管壁からはがれ、血流に乗って大静脈を上行していったん心臓に入り、次いで、酸素を取り入れる器官でもあり、血液のフィルターでもある肺動脈に詰まると、肺塞栓症となります。

肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下し、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を来し、脈の増加、失神などを起こします。

軽度であれば胸焼けや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡に至ることもあります。

血栓が心臓を経て肺動脈に詰まる重症例は、10時間以上の長時間のフライトで発症する傾向にあります。男性よりも女性にやや多く、40歳代後半から50歳代に発症しやすいと見なされています。

とりわけ、下肢に静脈瘤(りゅう)のある人、下肢の手術をした人、血液の凝固能に異常のある人、経口避妊薬を服用している人、妊娠中や出産後の人などは、発症しやすいので注意が必要とされます。

この深部静脈血栓症は、急性期に適切な治療がなされないと、慢性期に静脈血栓後症候群に悩まされることとなります。静脈高血圧のために、皮膚の浅い部分にある皮(ひ)静脈(表在性静脈)に静脈瘤ができたり、下肢の倦怠(けんたい)感、むくみが生じたり、栄養不足のために色素が沈着したり、皮膚炎や湿疹(しっしん)を起こしやすくなったり、治りにくい潰瘍(かいよう)ができたりすることもあります。

深部静脈血栓症の検査と診断と治療

循環器科、呼吸器科などの医師による診断では、皮膚の浅い部分にある皮静脈(表在性静脈)に起こる血栓性静脈炎などの紛らわしい疾患と区別するため、静脈造影、超音波ドプラー法、造影CT、MRA(核磁気共鳴検査)、血流シンチなどを行います。また、原因となる血液凝固異常の有無や、血栓を生じたことを確認するために、血液検査も行われます。

循環器科、呼吸器科などの医師による治療では、急性期においては、血栓の遊離による肺塞栓を予防するため、下肢のむくみや痛みが軽減するまで安静を保ち、下肢を高く上げておくことが必要です。

痛みに対しては非ステロイド抗炎症薬を使い、血栓の治療と予防には抗凝固剤や血栓溶解剤を使います。下肢のチアノーゼがひどい場合や、症状が重く急を要する場合には、カテーテル治療や血栓摘除術によって直接血栓を除去します。将来、肺塞栓などの重症な疾患に発展したり、静脈血栓後症候群が生じる危険もあり、治療には十分な注意が必要とされます。

なお、深部静脈血栓症の予防には、血液が固まりにくいようにミネラルウオーターやお茶などで水分を補給したり、長時間に渡って同じ姿勢を取らないようにし、2~3時間ごとに通路を歩いたり、下肢の屈伸運動などをしたり、着席中にも足を少しでも動かしたり、ふくらはぎを軽くもむなどして、下肢の血液循環をよくすることが有効です。

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