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腎性骨異栄養症
腎性骨異栄養(じんせいこついえいよう)症とは、腎不全に伴って起こる骨障害の総称。腎性骨症、透析骨症とも呼ばれます。
腎不全そのものが、この疾患の発症や進行に大きく影響し、長く人工透析を続ける場合の代表的な合併症となっています。発症は15パーセントの頻度といわれていますが、長期の人工透析になればなるほど腎性骨異栄養症が起こる頻度は高まります。症状はさまざまで、無症状のものから、骨の痛み、骨折、骨の変形、異所性石灰化、関節の痛み、皮膚のかゆみ、筋力の低下、さらに皮膚の潰瘍(かいよう)などが挙げられます。
原因から、線維性骨炎、無形成骨、骨軟化症、混合型の大きく4つに分けられます。
線維性骨炎は、腎臓の機能の低下とともに生じる血液中のカルシウムやリンのバランス異常や、血液中のカルシウムの濃度を増加させる働きがある活性型ビタミンD3の不足が、副甲状腺(せん)ホルモン(上皮小体ホルモン)の分泌高進を招くことによって、骨吸収と骨形成が激しい状態で骨量が減少し、それに伴って生じます。せきや日常の動作で、容易に肋骨(ろっこつ)や背骨に骨折を引き起こします。
無形成骨は、極端に骨吸収と骨形成の両方が低下した状態です。高齢者や糖尿病の患者、カルシウムやビタミンD3製剤の過剰な摂取患者では、極端に副甲状腺ホルモンの分泌が抑えられている状態で生じやすいと考えられています。カルシウムやリンが有効に骨代謝に利用されないため、容易に皮下などの軟部組織や血管などに異所性石灰化を起こします。血管の壁に異所性石灰化が起きた時には、血管が固くなり動脈硬化が進みます。
骨軟化症は、骨の形成に必要不可欠な石灰化障害の結果、骨組織の基質要素の1つである類骨量が増加した状態です。その骨の石灰化障害は、活性型ビタミンD3の欠乏、または骨のカルシウム沈着部位(石灰化前線)へのアルミニウムの蓄積により生じるアルミニウム骨症が招きます。アルミニウムは水道水、アルミニウム製剤(水酸化アルミニウムゲル、制酸薬など)などから体内に入り、腎臓から排出されないないために、体内に蓄積します。骨軟化症になると、骨折を起こしやすくなります。
泌尿器科の医師による診断では、線維性骨炎に対しては、定期的にカルシウムやリン、副甲状腺ホルモン、骨代謝マーカーなどの血液検査や骨X線検査を行います。副甲状腺機能高進が疑われる時は、頸部(けいぶ)のCTやシンチグラムによる画像診断も行います。無形成骨に対しては、 線維性骨炎と同様、血液検査や骨X線検査により、異所性石灰化を含めた画像評価を行います。骨軟化症に対しても、カルシウム、アルミニウムなどの血液検査や骨X線検査を行います。
泌尿器科の医師による治療では、線維性骨炎に対しては副甲状腺ホルモンの分泌抑制が基本となり、人工透析前の場合、多くは活性型ビタミンD3の内服で治療が可能です。活性化ビタミンD3を服用することは、骨の軟化による痛みや骨折を防ぐのに有効です。長期の人工透析例の場合、加えて炭酸カルシウムやレナジェルといったリン吸着剤や、カルシウム感受性受容体拮抗(きっこう)剤が必要になることがあります。重度の副甲状腺機能高進が続く場合、人工透析後にビタミンD3製剤を静脈投与こともあります。
副甲状腺機能高進がある場合は、リンの体内への蓄積を防ぐ必要があり、低たんぱく食を摂取する食事療法が重要になります。同じ目的から、人工透析を行う場合に、透析液の組成や、透析膜を変えることもあります。このような内科的な治療でもよくならず、はれた副甲状腺が確認され、副甲状腺ホルモンの分泌が高いままである時には、手術で副甲状腺を摘除します。
無形成骨に対しては、過剰なカルシウムやビタミンD3製剤の服用を中止し、高リン血症にはリン吸着剤の塩酸セベラマーを使用します。
骨軟化症に対しては、ビタミンD3製剤の服用や、腎臓の機能低下時にアルミニウムを含んだ胃腸薬を避けることが有効です。体内に入ったアルミニウムは、キレート剤の一つのデフェロキサミンを筋肉注射、または点滴静脈注射によって投与して除去を図ります。
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