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先天性風疹症候群



妊娠初期の女性が風疹ウイルスに感染し、生まれた新生児に形態異常を起こす先天異常症

先天性風疹(ふうしん)症候群とは、風疹ウイルスに免疫のない妊婦が妊娠初期に風疹にかかることにより、胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に多様な形態異常や障害を生じる先天異常症。

発疹性の皮膚伝染病である風疹(三日ばしか)を発生させる風疹ウイルスが原因で、1941年にオーストラリアの眼科医グレッグが初めて報告しています。

形態異常や障害の程度とその頻度は、風疹ウイルス感染と妊娠の時期の関係によります。妊娠1カ月以内に風疹にかかると約50パーセント、妊娠3カ月以内の場合は約20パーセントの確率で、先天性風疹症候群の新生児が生まれます。妊娠6カ月をすぎれば、胎児に感染は起こっても、先天性風疹症候群は出現しなくなります。

低出生体重のほか、形態異常や障害には、生後一過性に認められるものと永久障害を残すものとがあります。生後一過性に認められるものとしては、血小板減少性紫斑(しはん)病、肝脾腫(かんひしゅ)、肝炎、溶血性貧血、大泉門膨隆(だいせんもんぼうりゅう)、間質性肺炎などがあります。

永久障害を残すものとしては、眼球異常、心臓の奇形、聴力障害、中枢神経障害などがあります。眼球異常には白内障、緑内障、網膜症、小眼症、心臓の奇形には動脈管開存症、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、肺動脈狭窄(きょうさく)症、聴力障害には感音性難聴、中枢神経障害には精神発達遅延、脳性まひ、小頭症、水頭症などがあります。

こうした先天性風疹症候群の新生児は1965年に、沖縄県で400人以上生まれました。また、1977~79年の全国的な風疹の大流行の際は、影響を恐れた多くの妊婦が人工妊娠中絶をしました。最後の全国規模の風疹流行の1993年以降は、先天性風疹症候群の発生数も対応して減少しています。

先天性風疹症候群の症状に気付いた際は、ウイルス感染症を専門とする小児科医に相談してください。

先天性風疹症候群の検査と診断と治療

ウイルス感染症を専門とする小児科医による診断は、咽頭(いんとう)ぬぐい液など患児の検体からのウイルス分離、患児血清からのIgM高値、風疹特異的IgM抗体の確認が大切です。

先天性風疹症候群の治療は、それぞれの形態異常や障害に対して行うことになります。例えば、心臓の疾患は軽度であれば自然治癒することもありますが、手術が可能になった時点で手術をします。白内障についても手術可能になった時点で、濁り部分を摘出して視力を回復します。摘出後、人工水晶体を使用することもあります。いずれにしても、遠近調節に困難が伴います。感音性難聴については人工内耳が開発され、乳幼児にも応用されつつありますが、従来は聴覚障害児教育が行われてきました。

何よりも大切な予防法は、幼児期に風疹ワクチンの接種を受け、風疹ウイルスに対する免疫性を持つ抗体を作っておくことです。

風疹ワクチンの接種の対象は1977年から94年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから風疹や麻疹にかからないようにするためです。

2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸して1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。

現在、妊娠を望むものの風疹抗体がないか少ない成人女性も、積極的に麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種を受けることが望まれます。ただし、妊婦の風疹ワクチン接種は禁忌で、風疹ワクチン接種後2~3カ月間は妊娠を避けることが望ましいでしょう。風疹抗体がないか少ない女性が妊娠した場合、風疹の流行期は特に注意が必要で、抗体価検査を定期的に行い、経過観察を続ける必要があります。

身近に妊娠を望む女性がいる場合、麻疹・風疹混合ワクチン未接種で風疹にかかったことがない成人の男性も、ワクチンを接種して予防することが望まれます。

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