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症候性貧血
症候性貧血とは、造血器疾患以外の他の疾患の症状として、続発性にみられる貧血。二次性性貧血、続発性貧血と呼ばれることもあります。
主な原因としては、慢性感染症、膠原(こうげん)病などの慢性炎症、悪性腫瘍(しゅよう)、腎(じん)疾患、肝疾患、内分泌疾患などがあります。特に、慢性感染症、膠原病などの慢性炎症、悪性腫瘍による貧血は病態が共通しているため、慢性疾患による貧血とも呼ばれています。 白血病に随伴する貧血も、通常、この症候性貧血の一種です。
症候性貧血の症状は、他の何らかの疾患に基づいて徐々に進行するため、初期段階では自覚されにくいという特徴があります。進行すると、動悸(どうき)や息切れ、立ちくらみなどの貧血特有の症状が現れます。
また、高齢者でみられる軽度から中等度の貧血は、大部分が症候性貧血で、陰に消化器系の悪性腫瘍が潜んでいることがあるので注意が必要です。
結核、感染性心内膜炎、肝膿瘍(のうよう)などの慢性的な感染症のほか、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病に伴う慢性炎症、悪性腫瘍があると、鉄分を摂取しても治らない貧血が起こることがあります。その原因は、免疫にかかわる組織が活発になり、鉄が組織に取り込まれて鉄欠乏の状態になることにあります。
次に、腎疾患が悪化して腎臓の機能が失われ腎不全に陥ると、造血を促すホルモンであるエリスロポエチン(赤血球生成促進因子)が産生されにくくなるために、症候性貧血が起こります。そのほかにも、腎臓の排出機能の低下によって体内にたまる尿毒症性物質による造血抑制や、溶血の高進、低栄養、透析に伴う失血など、さまざまな原因が関係して起こります。
さらに、肝硬変や慢性肝炎などの肝疾患がある場合にも、肝臓が体内の一大化学工場のような臓器であるため、さまざまな物質の代謝機能が低下し、症候性貧血が起こります。甲状腺(せん)機能低下症、下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症などの内分泌疾患がある場合も、赤血球の産生能力が低下するため、症候性貧血が起こります。
原因となる基礎疾患がわかっている場合は、それぞれの疾患の専門医の診察を受けます。基礎疾患がわからない症候性貧血の場合は、血液疾患と鑑別するために血液内科の専門医の診察を受けます。
医師による診断では、血液一般検査で貧血の有無がわかります。症候性貧血の治療では、原因となっている疾患を治療すれば貧血も回復しますが、原因がはっきりせず診断に時間が掛かることもあります。
腎疾患による場合は、造血を促すホルモンであるエリスロポエチンが不足するため、静脈内注射ないし皮下注射によるエリスロポエチンの投与や、造血に必要となるビタミンB12、葉酸などのビタミン剤の投与が行われます。ただし、エリスロポエチンの投与で血圧上昇、高血圧性脳症、脳梗塞(こうそく)を来すこともあるので、あまり急速に貧血を改善させないほうが安全です。エリスロポエチンの投与でも貧血が改善しない場合は、ほかの原因を調べる必要があります。
内分泌疾患による場合も、不足したホルモンの補充などが行われます。重度の貧血症の場合には、赤血球を輸血するなどの治療を行うこともあります。
なお、徐々に症候性貧血になると、体がそれに慣れて、かなり重症でも自覚症状があまり出ない場合があるので、定期的に検査を受けることが大切です。
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