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シーハン症候群



分娩時の大量出血の結果、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症

シーハン症候群とは、分娩(ぶんべん)の際の大量出血によって、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症。正常分娩の後に限らず、流産の後、中絶の処置の後の女性にも起こり得ます。

妊娠中は、脳の下にある小さな分泌腺(せん)に相当し、ホルモンの倉庫である下垂体(脳下垂体)の組織の体積が増加する過形成があります。主に、分娩の後の大量出血の結果として、過形成がある下垂体への血流が一時的に途絶え、視床下部と下垂体をつないでいる下垂体門脈という血管の梗塞(こうそく)によって、下垂体が壊死(えし)に陥り、シーハン症候群がまれながら起こります。時には、10年以上も後に、シーハン症候群が起こることがあります。

通常は、下垂体前葉と呼ばれる部分が虚血性壊死に陥ることで、組織が障害されて機能が下がり、分泌されるホルモンが全般的に減少します。下垂体が分泌するホルモンには、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の6つがあります。

つまり、下垂体からは副腎、甲状腺、卵巣など各ホルモン分泌器官を刺激するホルモンが分泌されていますから、下垂体の機能低下の結果として、これらの器官から分泌されているホルモンも欠乏し、さまざまな症状が現れます。

典型的な症状としては、分娩の後に乳房の委縮や乳汁の分泌停止がみられ、その後、産褥(さんじょく)期を過ぎても、元気が出ず、全身がだるく、食欲もないためにやせてきます。月経の再来がなく、無月経の状態になることもあります。

また、恥毛(ちもう)、わき毛、まゆ毛などの脱毛がみられます。そして、徐々に下垂体機能低下症の症状が出てきて、副腎機能の低下、甲状腺機能の低下などが起こります。副腎機能の低下では、低血圧、低血糖、意識障害なども出現します。甲状腺機能の低下では、寒け、皮膚の乾燥、集中力と記憶力低下なども出現します。

シーハン症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による診断では、血液中の下垂体ホルモンの測定をします。次に、視床下部ホルモン剤を注射して下垂体を刺激し、血液中の下垂体ホルモンが増えたかどうか、その値を調べます。下垂体ホルモンの値が異常に低下しているとか、視床下部ホルモンの刺激を受けて下垂体ホルモンの分泌が増加しなければ、シーハン症候群と診断します。

 内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による治療では、エストロゲン剤、副腎皮質ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤などのホルモン補充療法が行われます。不足しているホルモンを補うと、普通の人と変わらないほど元気になりますが、生涯、毎日欠かさずホルモン剤を内服しなければなりません。

ホルモンの必要量は、体の状況に応じて変動しますので、それに合わせて調整することが重要です。特に、副腎皮質刺激ホルモンが不足している場合、副腎皮質ホルモンの補充が必要となりますが、発熱や感染時には通常より多く服用するなど、自分で服用量を調整する必要があります。これらのことができている限り、日常生活に特に制限はありません。

妊娠を望む場合には、注射による排卵誘発(HMGーHCG療法)が必須となります。

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