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水溶性ビタミン



水に溶けやすい性質のビタミンで、血液や細抱内外の体液中に溶けてさまざまに働く栄養素

水溶性ビタミンとは、水に溶けやすい性質のビタミン。現在認められている13種のビタミンのうち、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンM(葉酸)、ビタミンH(ビオチン)の9種が、水溶性ビタミンに相当します。

一方、13種のビタミンのうち、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種が、脂に溶けやすい性質の脂溶性ビタミンに相当します。

水溶性ビタミンは、血液や細抱内外の体液中に溶けてさまざまな働きをします。しかも、一通り体内に行き渡ると、余ったぶんは尿に混じって体外に出てしまいます。そのため、取りだめができず、毎日何回か取る必要があります。

最近は、ビタミンB群が主成分のドリンク剤などが市販されていますが、こうしたドリンク剤を飲む際は可能ならば一度に全部飲まず、2~3回に分け、少しずつ飲むといった飲み方が効果的です。また、水溶性ビタミンは、水に溶けやすいため、調理する際に水に浸しすぎないように注意することも大切です。

■ビタミンB1■

ビタミンB1とは、糖質をエネルギーに変える酵素の補酵素として働く水溶性ビタミン。

人間が生活するためには、エネルギーが必要です。エネルギー源となるものは糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、蛋白(たんぱく)質(アミノ酸)ですが、日本人は米を主食としており、エネルギー源としての糖質は重要です。

米の精米技術が進むとともに、ビタミンB1を含む胚芽(はいが)や米ぬかが除かれ、ビタミンB1の不足が問題視されるようになりました。ビタミンB1には抹消神経や中枢神経を正常に保つ働きがあるため、不足すると疲労しやすくなり、手足のしびれやむくみが出てきます。食欲不振、消化不良、下痢なども起こしやすくなります。

極端に不足すると、腱(けん)反射に異常が起こり、脚気(かっけ)という症状が現れます。今時、脚気になるはずがないと思われがちですが、現実には脚気によって循環器に障害が起こり、心肥大を起こす例もあります。

また、脳は糖質以外のものをエネルギー源にすることができないので、頭を使う時は糖質が必要になり、糖質をエネルギーに変える働きをするビタミンB1も必要になります。ビタミンB1が脳の働きの維持に、重要な役割を果たすというわけです。

ビタミンB1を多く含む食品としてまず挙げられるのは、穀類です。精製度が進んだ精白米などにはあまり多くありませんが、玄米や胚芽(はいが)米には豊富です。一番栄養価が高いのは、もみからもみがらのみを取り除いた玄米ですが、精白米に比べる消化が悪いのが難点。胚芽米は玄米からぬかを取り除き胚芽を残したもので、玄米に比べれば多少栄養価は落ちますが、精白米に比べればビタミンやミネラル、食物繊維は豊富です。

そのほか、ビタミンB1は植物性食品では豆類、種実類、ニンニクに、動物性食品では豚肉、鶏レバー、ウナギ、カツオに多く含まれています。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、1〜69歳におけるビタミンB1の平均必要量は1日当たり0・45mg、推奨量は1日当たり0・54mgとしています。保健機能食品制度では、ビタミンB1を1日摂取量当たり0・3~25mg含む食品には、ビタミンB1の機能を表示することができます。

■ビタミンB2■

ビタミンB2とは、動物の成長因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はリボフラビンです。

体内で糖質、蛋白(たんぱく)質、脂質をエネルギー源として燃やすのに、不可欠な栄養素です。細胞の再生などに関与するフラビン酵素の働きを助け、特に脂質の代謝を促し、子供の発育や、皮膚や粘膜の保護に役立ちます。

体内で動脈硬化や老化の原因となる過酸化脂質の生成を、抑える作用もあります。中でも、動脈硬化は生活習慣病の一つともされており、高血圧、脳卒中などの原因ともなりますので、ビタミンB2の積極的な摂取が予防に役立ちます。

ビタミンB2には粘膜を保護する働きがあるので、欠乏すると皮膚や粘膜にいろいろな症状が現れてきます。例えば、唇の周囲や縁がただれたり、舌が紫紅色にはれたり、肛門(こうもん)や外陰部などの皮膚と粘膜の移行部のただれなどもみられます。目の充血や眼精疲労などの症状のほか、進行すると白内障を起こすこともあります。 脂漏性皮膚炎も認められ、鼻の周囲や顔の中央部に脂ぎった、ぬか状の吹き出物ができます。

ビタミンB2にはまた、子供の発育に役立つ働きがあるので、欠乏した子供では脂質をエネルギーに利用しにくくなり、成長不良につながります。成長期には、必要量を十分取らなければなりません。

ビタミンB2欠乏症は、アルコールの多飲、糖質過剰摂取、激しい運動、労働、疲労などでも、現れることがあります。多量の抗生物質や経口避妊薬、ある種の精神安定薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬などを長期に服用した時にも、現れることがあります。

加えて、心臓病、がん、糖尿病、肝炎、肝硬変などの慢性疾患や吸収不良によって、ビタミンB2欠乏症のリスクが高くなります。血液をろ過する血液透析や腹膜透析でも、同様です。血液透析や腹膜透析を受けている場合は、ビタミンB2のサプリメントを日常から摂取する必要があります。

逆に、ビタミンB2を過剰に摂取した場合は、水溶性のビタミンのため尿などと一緒に体外に排出されますので、毒性は知られていません。ただし、相当な量のビタミンB2を一度に摂取すると、かゆみやしびれといった症状がみられるケースもありますので、サプリメントなどで摂取する場合は適量に抑える必要があります。

ビタミンB2が豊富な食材は、レバーやウナギ、サバ、サンマ、牛乳、乳製品、卵、ヨーグルト、納豆、アーモンド、干し椎茸(しいたけ)など。動物性の食品には多く含まれますが、植物にはあまり含まれていません。

そのため、菜食中心の生活を送る人は、納豆を食べて補給するようにしましょう。大豆にはビタミンB2の含有量は多くありませんが、納豆菌が作り出す納豆になると格段に含有量がアップするからです。ビタミンB2は水溶性のため、体に備蓄することができませんので、毎日摂取することも大切。

厚生労働省策定の「食事摂取基準10年版」では、1〜69歳におけるビタミンB2の1日当たり推定平均必要量は、エネルギー摂取量当たりで算定して0・50mg/1000kcal、推奨量は0・60mg/1000kcalとしています。上限量は策定されていません。

保健機能食品制度では、ビタミンB2を1日摂取量当たり0・33~12mg含む食品には、その機能を表示することができます。

■ビタミンB6■

ビタミンB6とは、皮膚炎を予防することから発見された水溶性ビタミンで、ピリドキシン、ピリドキソール、ピリドキサミンなど同様の作用を持つ化合物の総称。

蛋白(たんぱく)質、脂質、炭水化物の代謝、正常な神経機能、赤血球の形成に欠かせません。近年では、抗アレルギー作用など免疫機能の正常化に役立つことが、指摘されています。

腸内細菌によって人間の体内でもビタミンB6の一部が作られるため、通常の食生活では欠乏するケースは少ないといわれています。もし不足した場合は、湿疹(しっしん)を始めとするさまざまな皮膚のトラブル、多発性神経炎、動脈硬化性血管障害、貧血、口内炎、舌炎、食欲不振、脂肪肝、うつなどの原因になります。

アルコールを大量に飲む人は、不足する可能性があります。抗生物質を長期間服用している人も、腸内細菌の育成が妨げられるので不足に注意が必要です。蛋白質を多く取る運動選手や妊娠女性も、不足しないように気を付けなければなりません。

女性にはかかわりの深いビタミンで、つわりや月経前症候群(PMS)の症状を和らげる効果がありますが、不足すると神経過敏、眠れない、胃がただれる、つわりがひどくなるなどの症状が現れます。

一方、ビタミンB6の取り過ぎになるケースも、通常の食生活ではほとんどないといわれています。ただし、月経前症候群や、ぜんそくなどの改善のために非常に大量に摂取した場合、深刻な神経障害が起こることがあるので注意が必要です。ビタミンB6の作用をする数種の物質のうち、ピリドキシンのみをビタミン剤やサプリメントによって長期に大量摂取した場合も、感覚神経に障害がみられるケースがあるようです。

ビタミンB6はどの食品にも比較的多く含まれていますが、特にマグロやサンマ、サケなどの魚類、豚肉などの肉類、レバー、鶏卵、バナナ、プルーン、アボガド、 ナッツ、大豆、小麦、野菜などはよい供給源です。

ビタミンB6の推奨量は1日当たり、男性で1・4mg(15~70歳以上)、女性で1・1mg(18~70歳以上)。平成18年の国民健康・栄養調査によると、男性は平均1・22mg、女性は平均1・06mgを食事から摂取しています。強化食品と補助食品からは、男性は平均0・59mg、女性は平均0・58mgを摂取しています。

食事、強化食品、補助食品を合計すると、国民の摂取量は推奨量を満たしていることになります。

■ビタミンB12■

ビタミンB12とは、鉄分を補っても治らない貧血の治療法を研究した結果、発見された水溶性ビタミン。物質名はシアノコバラミンです。

ビタミンB12は、胃で消化された後で腸で吸収される他のビタミンとは違って、胃で溶かされたり腸内の細菌によって食べられるのを防ぐために特殊な蛋白(たんぱく)質と結び付くという過程を通って、腸に吸収されます。そのために、最後に発見されたビタミンに相当し、12という二桁(けた)の番号が付いています。

蛋白質や核酸の体内合成に欠かせないビタミンであり、細胞のエネルギー獲得を助ける作用、神経細胞を正常に保つ作用があります。

その核酸とは、DNA=遺伝子の主な成分になっている物質で、細胞を再生する時に重要な働きをしています。ビタミンB12には、神経細胞の中にある核酸の体内合成を助ける働きがあります。つまり、正常な神経細胞を維持して、脳からの指令を手足などの末梢神経まで正確に伝えるには、ビタミンB12はなくてはならない栄養素なのです。神経系が原因の腰痛の治療、不眠症や時差ボケの解消には、ビタミンB12の大量摂取が有効とされています。

また、ビタミンB12には、正常な赤血球を作り出す働きがあり、貧血になるのを予防しています。赤血球は鉄分を材料にして体内で作られますが、たとえ十分な鉄分を食品から取っても、ビタミンB12や葉酸が不足していると正常な赤血球に成長しません。造血に関係するため赤いビタミンとも呼ばれ、肝機能強化にも有効です。

ビタミンB12が欠乏すると貧血になるほか、息切れ、めまい、動悸(どうき)、神経系に作用して各種神経炎、神経痛、筋肉痛、精神障害、記憶力の減退、睡眠障害、食欲不振などが引き起こされます。

欠乏症は、厳格な菜食主義者(ベジタリアン)や、手術で胃の切除をした人、高齢で胃腸の粘膜が収縮している人などに多くみられます。菜食主義者はサプリメントによって、胃の切除をした人などは静脈注射や投薬によって、ビタミンB12を補給する必要があります。

ビタミンB12の含有量が多いのは、魚肉を始め、カキ、アサリ、ホタテガイなどの貝類、牛や豚のレバー、牛肉、卵、牛乳などの動物性食品で、植物性食品にはほとんど含まれていません。ただし、しょうゆ、みそ、納豆などには、微生物によって作られるビタミンB12が含まれています。よほど偏食しない限り、日常の食生活で不足することはありません。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンB12の平均必要量は1日当たり成人男女とも2・0μg(マイクログラム)、ビタミンB12の推奨量は1日当たり成人男女とも2・4μgとしています。また、保健機能食品制度では、ビタミンB12を0・6~60μg含む食品にはビタミンB12の機能を表示することができます。

なお、1μgは、1グラムの百万分の一で、 1000000μg=1g。

■ビタミンC■

ビタミンCとは、抗壊血病の因子として発見された水溶性ビタミン。物質名はアスコルビン酸(Ascorbic Acid)。

数あるビタミンの中で一番働きが多い栄養素であり、まず第一に、コラーゲンを合成する働きがあります。コラーゲンは蛋白(たんぱく)質の一つで、体の細胞をつなぎ合わせたり、丈夫な骨を作る働きがあります。このコラーゲンが体内で作られる時に、ビタミンCはなくてはならない栄養素。もしビタミンCが不足すると、コラーゲンが十分作られず、毛細血管から出血する壊血病や、骨粗鬆(こつそしょう)症になったりします。

壊血病とは、体の細胞の結合が弱くなることにより毛細血管が非常にもろくなって、切り傷があるわけでもないのに、体のあちこちから出血する病気です。初期の段階では、歯茎からの出血や皮膚の内出血などがあり、症状が進行すると全身からの出血が多くなり、ひどくなると生命の危険もあります。

骨粗鬆症は、骨量が減少して骨の中の構造が壊れ、骨が非常にもろく、折れやすくなる病気です。骨のほとんどはカルシウムとコラーゲンからできており、丈夫な骨になるにはコラーゲンを作り出すビタミンCが必要です。カルシウムとコラーゲンを結合させる働きがあるビタミンK、骨へのカルシウムの沈着を調整する働きがあるビタミンDとともに、ビタミンCが上手に働くことで、骨粗鬆症を防いでいるのです。

第二に、ビタミンCにはストレスに対抗する働きがあります。仕事や人間関係でストレスがあると、それに対抗するために体内では抗ストレスホルモンが分泌される仕組みになっていて、血圧や血糖値を上げたり、脈拍を早めたりしてストレスに負けないようになります。この抗ストレスホルモンを作る時にも、ビタミンCは必要な栄養素。

第三に、抗酸化作用があります。激しく運動したり、ストレスがあったり、タバコを吸ったりすると、人間の体内では大量の活性酸素ができます。活性酸素は細胞を酸化させて、体に悪い影響を与える物質ですが、ビタミンCには活性酸素を分解する働きがあり、これによって免疫力を高め、いろいろな病気を予防します。

例えば、ビタミンCを多めに取ると、風邪にかかりにくくなり、かかったとしても早く治ることが知られています。また、胃がんや肝臓がんの原因の一つであるニトロソアミンが作られるのを抑える働きも知られています。

もしビタミンCが不足すると、体内に活性酸素が多くなり、細胞が傷付けられたり、体内に侵入してきた病原菌などを退治する白血球の働きが鈍くなり、免疫力が低下する結果、がんを始めさまざまな生活習慣病(成人病)にかかりやすくなります。

第四に、ビタミンCには血圧を正常に保ち、血液中のコレステロールを減らす働きがあります。高血圧だったり、血管にコレステロールがたまると、血液を送り出す心臓に負担がかかりますが、ビタミンCによって心臓病を予防することができます。

第五に、しみ、そばかすを防ぐ働きがあります。屋外で日光に当たると日焼けするのは、紫外線の刺激で皮膚にメラニン色素ができてしまうからですが、ビタミンCはメラニン色素を作り出すチロシンという物質を抑えます。しみ、そばかすはメラニン色素が長期間沈着することで起こるので、その原因を取り除くことにもなり、美肌効果が期待できます。

ビタミンCは、トマト、赤ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、いちご、アセロラ、柿、キウイ、グレープフルーツ、レモン、みかんなどの野菜や果物を始め、緑茶、いも類などの食品に多く含まれています。肉類などの動物性食品や、米などの穀類には、ほとんど含まれていません。

ビタミンCは成人の男女の場合で、1日当たり100mg取るのがよいとされています。ふだんから心掛けて、野菜や果物をバランスよく食べていれば、そんなに不足する栄養素ではありません。

ただ、ビタミンCを含む食品を食べる際に気を付けたいのは、熱や空気に弱く、とてもデリケートだということです。野菜を調理したり、果物の皮をむいた際は、なるべく早く食べるのがよいのです。

また、ヘビースモーカーの人や仕事が忙しくストレスを抱えている人は、それに比例してビタミンCも消費されますので、通常よりも多めに摂取するようにしたいもの。たばこを1本吸うごとにビタミンCが約25mg消費されるといわれており、食事だけで摂取できない時は、サプリメントなどを利用するとよいでしょう。

ビタミンCは、1日の推奨量である100mgの10倍以上摂取しても、余分なぶんはほとんど尿から排出される仕組みになっています。これは、水溶性で水に溶けやすいビタミンCの特徴です。大量に摂取しても、それによる副作用はほとんどありません。

■ビタミンB3(ナイアシン)■

ビタミンB3とは、ニコチン酸やニコチン酸アミドなどの総称で、ビタミンB群の一種である水溶性ビタミン。ナイアシンとも呼ばれます。

三大栄養素の糖質、脂質、蛋白(たんぱく)質の代謝を促す働きがあり、体内で必要なエネルギーのうち70パーセント近くを作っているといわれています。

血行を改善する働きや、脳神経の作用を強める働き、さまざまな炎症を引き起こすとされるヒスタミンを抑制する働き、酒に含まれるアルコールが体に悪影響がないようにする働きもあります。

体内でアルコールを分解する際には、アセトアルデヒドという有害物質ができますが、このアセトアルデヒドをビタミンB3(ナイアシン)が分解し、二日酔いを防ぎます。しかし、酒を大量に飲んで食事をほとんど取らないと、ペラグラというビタミンB3の欠乏症にかかり、皮膚炎や胃腸障害、精神障害などが起こるので、注意が必要です。

極端なダイエットを長く続けたり、インスタント食品ばかり食べていると、ペラグラになることも十分考えられます。

ペラグラとは「荒れた皮膚」という意味で、トウモロコシを主食とする中南米に多い欠乏症として知られています。トウモロコシには、ビタミンB3の材料となるトリプトファンというアミノ酸の一種が少ない上、中南米の人は動物性蛋白質の摂取も少ないため、ペラグラになるリスクが高いといわれています。

ビタミンB3(ナイアシン)は、動物性食品、植物性食品のどちらにも多く含まれています。特に、まぐろやかつおなどの魚肉、豚レバー、牛レバーなどに多く、そのほか、肉、卵、豆、ピーナッツ、牛乳、そば、小麦胚芽(はいが)、米ぬかなどにも多く含まれていて、熱、酸、アルカリ、光に強いため、加熱調理や保存がしやすいという特長があります。

普通の食事をしていれば、ビタミンB3(ナイアシン)が不足することは、ほとんどないといってよいでしょう。大量のお酒を飲む人は、それに比例して消費されるので、食品やサプリメントから摂取を心掛ける必要があります。

逆に、糖尿病の人はあまり多く取りすぎると、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きを弱めてしまうので、担当の医師とよく相談の上、摂取量を決めたほうがよいでしょう。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンB3(ナイアシン)の推奨量は1日当たり成人男性で15. 3 mgNE(ナイアシン当量)、成人女性で11. 3 mgNEとしています。保健機能食品制度では、ビタミンB3(ナイアシン)を1日摂取量当たり3・3~60mg含む食品には、その機能を表示することができます。

■ビタミンB5(パントテン酸)■

ビタミンB5とは、ビタミンB群の一種である水溶性ビタミン。パントテン酸とも呼ばれます。

糖質、脂質、蛋白(たんぱく)質の代謝とエネルギー産生にかかわる補酵素A(CoA、コエンザイムA)の主要成分であり、重要な役割を果たしています。

また、細菌や病原菌などから人間の体を守る免疫抗体の合成をサポートしています。もしビタミンB5(パントテン酸)が不足すると、抗体が減少して体の抵抗力が低下する結果、風邪を始めとするいろいろな病気にかかりやすくなります。

ストレスに対抗したり、ストレスを解消するサポートもしています。仕事や人間関係などでストレスを感じると、副腎(ふくじん)から副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が分泌されストレスに対抗するようになりますが、この時、ビタミンB5(パントテン酸)は副腎の働きを助けて、ホルモンがスムーズに合成されるように作用するのです。

具体的には、ビタミンB5(パントテン酸)の働きによって合成された副腎皮質ホルモンが、血液中の血糖値を上げて、アクシデントやトラブルがあった時でも、すぐに対応できるように備えます。同時に、ビタミンCがホルモンを体内にスムーズに分泌させる働きをして、パントテン酸と一緒に、ストレスを解消するようになります。

血液中の善玉コレステロールを増やす働きもあり、その結果、血液中の老廃物や悪玉コレステロールを減らして健康な血管を保ち、動脈硬化を予防します。

さらに、紫外線による皮膚の炎症を抑える働きがあり、日焼け防止のためにサンスクリーン用品にも利用されています。やけどによる皮膚のただれや炎症を抑え、皮膚の回復を早める働きもあるので、塗り薬として製品化されています。

ビタミンB5(パントテン酸)が不足した場合には、体内の蛋白質が不足気味になり、皮膚炎を生じたり、毛髪のツヤがなくなったり、白髪や赤茶けた髪が増えることがあります。そのほか、神経系の異常を引き起こし、手足のしびれや、灼熱(しゃくねつ)脚症候群、全身にアリがはっているような、むずむずした感覚を覚える蟻走感(ぎそう)感といった知覚異常などが生じることがあります。

食品では、酵母、レバー、牛乳、魚肉、大豆、納豆などに、ビタミンB5(パントテン酸)が多く含まれています。

多くの食品に広く含まれている上、腸内の細菌によって作り出されるため、極端なダイエットや偏食をしたり、アルコールを多量に飲まない限り、摂取不足になることはほとんどありません。抗生物質を長期間服用している人は、腸内でほとんど作り出されなくなります。

厚生労働省策定の「食事摂取基準10年版」では、ビタミンB5(パントテン酸)の目安量は1日当たり成人男性では5〜6mg、女性では5mg(妊婦と授乳婦は+1mg)としています。

また、保健機能食品制度では、ビタミンB5(パントテン酸)を1日当たり1・65〜30mg含む食品には、その機能を表示することができます。

■ビタミンM(葉酸)■

ビタミンMとは、ビタミンB群の一つで、ほうれん草の葉から発見された水溶性ビタミン。葉酸とも呼ばれています。

ビタミンM(葉酸)はまず、アミノ酸代謝、核酸成分の合成に、補酵素として関与しています。赤血球を作って悪性貧血(巨赤芽球性貧血)を予防したり、口内粘膜を強化して口内炎、舌炎などを予防する作用もあり、血液中に蓄積する有害なアミノ酸物質であるホモシステインの濃度を下げ、心臓病や動脈硬化のリスクを軽減させるとされています。

一般的な貧血はほとんどが鉄分の不足によるのに対して、赤血球が巨大になってしまう悪性貧血の場合は、ビタミンM(葉酸)とビタミンB12が不足した時に起こります。鉄分は赤血球の材料となる栄養素ですが、鉄分だけでは正常な働きをする赤血球はできません。鉄分にビタミンM(葉酸)とビタミンB12が加わって始めて、1人前の赤血球ができ、酸素を体中に供給できるようになります。

血液中にホモシステインが増えると、心臓病や動脈硬化になることが知られています。ビタミンM(葉酸)はビタミンB12と力を合わせて、このホモシステインを別のアミノ酸に変えて、心臓病になるリスクを減らしています。また、ビタミンM(葉酸)はビタミンB6、ビタミンB12と協力して、同じようにホモシステインを他のアミノ酸に変え、動脈硬化になるのを抑えています

さらに、ビタミンM(葉酸)は神経管閉鎖障害など先天性異常の子を出産する危険性を減らす効果があるとされ、遺伝子の合成や細胞分裂に不可欠です。特に妊娠中の女性は積極的な摂取が必要で、厚生労働省は2000年、妊娠を希望している女性に対して、妊娠1カ月前から妊娠3カ月までの間、ビタミンM(葉酸)を多く含むバランスの取れた食事に加えてサプリメントによる1日当たり0・4mg(400μg)以上の摂取を勧める報告書を出しています。

人間の体の細胞は、遺伝子の情報を持つDNAを元に、常に再生されています。よく遺伝子の異常によって、がんになったり奇形児が生まれるといわれていますが、これはDNAの配列がおかしくなり、正しい遺伝情報から細胞が再生されなくなることが原因です。ビタミンM(葉酸)は、このDNAの成分である核酸が合成される時に働き、細胞の再生を助けています。このため、細胞の再生が活発な粘膜や、妊婦のおなかにいる胎児には、欠かすことのできない栄養素になっています。

例えば、口、胃、腸などの器官では、食べ物の消化によって粘膜がかなり消耗するので、短期間で新しい粘膜を再生する必要があります。また、胎児の場合も、これと同じように細胞分裂が活発に行われるため、ビタミンM(葉酸)の働きは非常に重要になっています。

ビタミンM(葉酸)を多く含む食品には、レバー、牛乳、卵黄、胚芽(はいが)、酵母、豆類、ほうれん草などの緑黄色野菜、サツマイモ、クルミ、果物などが挙げられます。ただし、調理や長期間の保存による酸化によって壊れてしまうため、新鮮な生野菜や果物がよい供給源となります。大量の飲酒も、吸収および代謝を妨げます。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンM(葉酸)の推奨量は1日当たり成人男女とも0・24mg(240μg)、妊娠を計画している女性は0・44mg(440μg)、授乳期の女性は0・34mg(340μg)とし、成人男女の上限量は1・00mg(1000μg)としています。また、保健機能食品制度では、1日摂取量当たりビタミンM(葉酸)を0・60〜2・00mg(60〜200μg)含む食品には、その機能を表示することができます。

ビタミンM(葉酸)のサプリメントを摂取する時には、単体では意味がありません。ビタミンM(葉酸)が効果を発揮するにはビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCが必要で、サプリメントでは最低限ビタミンB群とビタミンCとともに摂取ようにします。理想的なのは、そのほかのビタミンや微量ミネラルが配合されたマルチビタミン・マルチミネラルの総合サプリで、ビタミンM(葉酸)も摂取することです。

■ビタミンH(ビオチン)■

ビタミンHとは、ビタミンB群の一種で、水に溶けやすい水溶性ビタミン。ビオチンとも、補酵素Rとも呼ばれています。

ブドウ糖や脂肪酸、アミノ酸などの代謝や合成にかかわっています。血糖値の維持、皮膚や髪の健康維持、貧血予防に効果があるとされています。

最近では、アトピー性皮膚炎の治療にビタミンHが使われています。ビタミンHと併用して、皮膚の炎症を抑える働きがあるビタミンA(βカロテン)、ビタミンC、ビタミンEなどと組み合わせて、治療に使われてもいます。

アトピー性皮膚炎は体内にできたヒスタミンという物質が原因になっていますが、このヒスタミンの元になるヒスチジンを体外に排出する働きが、ビタミンHにあるからです。

また、肌の潤い不足や、かさつき、脱毛が気になり始めた人には、お勧めの栄養素になります。

もしビタミンHが不足してしまうと、体内のエネルギーが不足して、疲労感、脱力感、倦怠(けんたい)感、うつ症状などが起こってきます。抜け毛が多くなったり、色素が脱色して髪が白くなったり、皮膚が不健康な状態になり湿疹(しっしん)が多くなったり、皮膚炎や結膜炎になる場合もあります。

ビタミンHは、牛や豚のレバー、いわしやさば、さけ、にしん、かきなどの魚介類、卵、大豆、ピーナツ、クルミ、牛乳やヨーグルトといった乳製品、トマト、ほうれん草、にんじん、たまねぎ、玄米、白米などに多く含まれています。

いろいろな食品に幅広く含まれているだけでなく、腸内の細菌によって作り出されるので、ごく一般的な食事をしていれば摂取量が不足することはあまりありません。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2010年版」では、ビタミンHの必要量は1日、成人男女で50μg(マイクログラム)、妊婦は+2μg、授乳婦は+5μgとしています。取りすぎても害になることはないため、上限は定められていません。

また、保健機能食品制度では、ビタミンHを1日摂取量当たり14~500μg含む食品には、その機能を表示することができます。

ビタミンHとともに、腸内環境を整える食物繊維やビタミンCを一緒に取ることで、吸収率が高くなるとされています。逆に、生卵を1日に5~6個以上食べると、脱毛や皮膚炎、倦怠感が起こってきます。

生卵の卵白(白身)に含まれるアビジンという蛋白(たんぱく)質が、体内でビタミンHと結び付いて、腸からビタミンHが上手く吸収できなくなるためです。ただし、卵を加熱調理して、半熟や目玉焼きにすれば、アビジンがビタミンHに結び付かなくなり、腸での吸収がスムーズになります。1日に大量の卵を食べる時は、一度火を通して食べるのがよいでしょう。

また、病気治療のために長期間、抗生物質を使用している場合や、フェノバルビタールという睡眠薬を使用している場合に、ビタミンHを吸収するための腸内細菌が十分でないことがあり、欠乏症が現れてくるケースがあります。

健康食品などサプリメントでは、純粋にビタミンH(ビオチン)を摂取することができます。

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