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前立腺がん



男性の尿道後部を囲む前立腺に発生するがん

前立腺(ぜんりつせん)がんとは、男性の尿道後部を囲む分泌腺である前立腺に発生するがん。

前立腺はクルミ大の器官で膀胱(ぼうこう)のすぐ下にあり、この中を尿道が貫いています。男性ホルモンに支配されており、分泌される前立腺液は精液の一部を占め、精子の運動を活発にするものといわれています。

前立腺がんは、前立腺肥大症とともに高齢者に多い疾患の一つです。従来から欧米に多く、日本では少なかったのですが、近年はその発病率が徐々に増加しています。平均寿命が延びて高齢者が増えているのが関係しているばかりでなく、食生活が欧米化していることも関係しているといわれています。また、腫瘍(しゅよう)マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)検査の普及に伴って、その発見頻度も徐々に増加しています。

現在、1年間に前立腺がんにかかる日本人男性は、現在10万人当たり15人程度。年齢別では、45歳以下ではまれなものの、50歳以後その頻度が増え、70歳代では10万人当たり約200人、80歳以上では300人以上になります。

原因は遺伝子の異常とされており、加齢と男性ホルモンの存在が影響しますが、いまだ明確ではありません。欧米の報告によると、肉やミルクなど脂肪分が多く含まれている食事を多く摂取することにより、前立腺がんの発生が増えると考えられています。一方、穀類や豆類など繊維を多く含む食事は、がんの発生を抑える効果があると考えられています。肥満、過度の飲酒、喫煙が誘因になるとの指摘もあります。

前立腺がんは前立腺の外側の腺上皮から発生する率が高く、初期にはほとんど症状がありません。がんが大きくなって尿道が圧迫されると、尿が出にくい、尿の回数が多い、排尿後に尿が残った感じがする、夜間の尿の回数が多いなど、前立腺肥大症と同じ症状が現れます。

がんが尿道または膀胱に広がると、排尿の時の痛みや、尿漏れ、肉眼でわかる血尿が認められ、さらに大きくなると尿が出なくなります。精嚢(せいのう)腺に広がると、精液が赤くなることがあります。

さらにがんが進行すると、リンパ節や、脊椎(せきつい)、骨盤骨に転移します。リンパ節に転移すると下肢のむくみ、骨に転移すると腰痛や背痛、下半身まひを起こすことがあります。

なお、前立腺肥大症ではどんなに進んでも、下肢のむくみ、骨の痛みなどはみられません。2つの疾患が合併することもあります。

前立腺がんの検査と診断と治療

前立腺がんは、遺伝の要素が強いがんの一つと考えられているため、親族が前立腺がんの場合、早めにPSA(前立腺特異抗原)検査を受けます。一般開業医あるいは検診センターで検査を受けた結果がPSA値4ng/ml以上だったら、泌尿器科の専門医を受診します。

PSA値は血液検査だけで測定可能で、一般に正常値は4ng/mlとされ、10ng/mlまでの間をグレーゾーン(灰色の値)といいます。グレーゾーンの人では、おおむね20〜30パーセントに前立腺がんが発見され、しかも発見されたとしても早期がんです。PSA値が高いほどがんの可能性が高く、100ng/mlを超えるようなこともあります。

ただし、がんだけが異常値を示すわけではなく、前立腺肥大症でも高値を示すことがあり、年齢とともに上昇する傾向があります。PSA値があまり上昇しない前立腺がんも15〜20パーセントあるため、注意が必要です。

医師による診断では、PSA値の高さ、PSA検査に関連したさまざまな判断基準、年齢による基準を考えに入れて、次の検査を進めます。肛門(こうもん)から指を入れて前立腺を触る直腸診を行うと、がんは硬いしこりとして前立腺内に触れます。経直腸超音波診断を行うと、がんは前立腺の変形、低エコー領域として認められます。

確定診断のためには、生検(組織診)が行われます。超音波検査の道具をガイドにして、直腸方向から生検針を用いて組織を採取して調べるもので、現在は短期間入院して麻酔下で行います。

周囲への進み具合は、腹部リンパ節のCT、骨盤部のMRIによって調べます。全身の骨の転移については、骨シンチグラフィが有用です。

前立腺がんの治療法には、ホルモン療法、放射線療法、手術などがあり、がんの進行程度、年齢により、他の部位のがんより幅広い治療法の選択ができます。

早期がんに相当する前立腺内限局がん(病期A、B)の場合は、第1選択が開腹あるいは腹腔(ふくくう)鏡下による前立腺摘除手術、第2選択が放射線療法となり、どちらでも完治できます。高齢者などでは、ホルモン療法で疾患を抑えます。

放射線療法は、高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療です。1日1回、週5回照射し、5〜6週間の治療期間が必要です。外照射療法のほかに、小線源療法といって前立腺に放射線を出す小さな線源を埋め込む方法があります。

ホルモン療法は、男性ホルモンを血液中から排除する治療で、LH—RHアナログという薬を皮下注射をする方法と、精巣(睾丸)を切除する方法があります。ほかにも、がんの進行程度によって抗男性ホルモン剤や、女性ホルモン剤を用いて治療します。

前立腺から少しはみ出したがんに相当する局所進展がん(病期C)の場合は、ホルモン療法+放射線療法や前立腺摘除手術+ホルモン療法が行われます。ホルモン療法だけでもがんを抑えておくことはできますが、時期をみて放射線療法に移るのが疾患の再燃を防ぐよい方法となります。

進行がんに相当し、リンパ節などへの転移のあるがん(病期D)の場合は、ホルモン療法が行われ、がんの原発巣は縮小し、骨転移による腰痛や背痛も軽減または全く消失します。しかし、進行がんでは2〜3年以内の再発が多く認められ、再発に対する標準的な治療法はまだ定まっていません。

前立腺がんの予防策としては、過食、過飲、喫煙を避け、動物性脂肪を減らし、豆腐、納豆などの豆製品を多く食べ、緑黄野菜の摂取を忘れず、戸外での適度な運動を楽しむことです。 とりわけ、豆類に含まれるイソフラボノイドがエストロゲン(女性ホルモン)様の構造を持つことから、前立腺がんを抑制する可能性があると推定されていますし、野菜、果物も前立腺がんに限らず、一般的にがん予防効果があるとされています。

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