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双極性障害(躁うつ病)



●躁状態と、うつ状態を繰り返す気分障害

双極性障害とは、躁(そう)状態とうつ状態を繰り返す精神疾患であり、気分障害の1つ。従来、躁うつ病と呼ばれていた病気に相当し、双極性感情障害とも呼ばれます。

双極性障害(躁うつ病)の生涯有病率は、0.2~1.6パーセントであるとされます。同じ気分障害の1つで、うつ病だけを繰り返す単極性障害(単極性うつ病)の生涯有病率6~15パーセントと比べると、低めではありますが、決して珍しい疾患ではありません。

発病年齢は、単極性障害の場合は年齢層が幅広く分布しているのに対して、双極性障害は20歳代にピークがあります。また、単極性障害は男女比が1対2と女性に多いのに対して、双極性障害では男女比は1対1となっています。

双極性障害は一度回復しても、再発を繰り返すことが多く、生涯に渡る薬物投与による予防が必要となることが普通です。

発症の原因はいまだ解明されていませんが、単極性障害と同様、疾患脆弱(ぜいじゃくせい)性、すなわち病気になりやすい性質を持つ人に身体的、あるいは心理的負荷がかかり、脳の機能のバランスが取れなくなると発病するとされています。

疾患脆弱性を規定する因子は複雑ですが、その1つに遺伝があり、双極性障害の親を持つ人の2~3割は発病すると見なされています。双生児で一方が発病した場合、他方も発病する一致率は6~8割ともいわれています。しかし、他の2~4割は遺伝以外の要因であり、遺伝と環境要因の両方で規定されると考えられます。

シナプスと、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質を介した神経伝達機構に障害が生じることに、双極性障害の発症原因を求める仮説もあります。

双極性障害は、双極1型障害と双極2型障害に分けられています。双極1型障害の方が躁状態が激しいもので、双極2型障害は軽躁状態を伴うものです。

躁状態とは、気分の異常な高揚が続く状態です。軽躁状態とは、基本的に躁状態と同じ症状で、社会的、職業的機能に影響のない程度のものを指します。双極2型障害においては、軽躁状態そのものが発症者本人や家族に認識されていないことも多く、自覚的には反復性の単極性障害(単極性うつ病)であると考えている発症者も多くみられます。

自尊心の肥大、多弁、注意散漫、活動の増加といった躁状態が1回認められれば、双極1型障害と診断されます。1回の躁状態で終わるケースはまれで、一般的には、症状のない回復期を伴いつつ、うつ状態と躁状態のいずれかが繰り返していくケースが多くみられます。

躁状態から次の躁状態までの間隔は、数カ月から5年と幅があります。再発を繰り返すにつれて、病状の持続期間は長くなる一方、病状と病状の間隔は短くなります。うつ状態から急に躁状態になる躁転もまれではなく、一晩のうちに躁転することもあります。

中には、1年のうちに4回以上、躁状態とうつ状態を繰り返すケースもあり、これを急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼びます。時に、躁とうつの症状が混じり合って同時に現れることがあり、これを混合状態と呼びます。

双極性障害の症状は、躁状態とうつ状態で対照的です。基本的には、感情やエネルギーが高まった躁状態に対して、うつ状態は感情やエネルギーの低下状態と理解できます。

具体的な躁状態の診断基準は、以下の症状が3ないし4つ以上みられる状態が1週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることとなります。

1. 自尊心の肥大=自分は何でもできるなどと、気が大きくなる

2. 睡眠欲求の減少=眠らなくても、いつも元気なまま過ごせると思い込む

3. 多弁=一日中しゃべりまくったり、手当たり次第にいろいろな人に電話を掛けまくったり、メールを送りまくったりする

4. 観念奔逸=次から次へ新しい考えが浮かんでくる

5. 注意散漫=気が散って一つのことに集中できない

6. 活動の増加=仕事などの活動が増加し、よく動く

7. 快楽的活動に熱中=お金やクレジットカードを使いまくって買物をしたり、性的逸脱行動に出る

この躁状態の初期には、発症者は明るく開放的であることもありますが、症状が悪化するとイライラして、怒りっぽくなる場合も多くみられます。

本人の自覚的には、エネルギーに満ち、快いものである場合が多くて、苦痛を感じません。他人から見ると、感情のコントロールができなくなっていて危なっかしい状態で、社会的には、さまざまなトラブルを引き起こすことが多くみられます。本人は病気だという認識もないので、治療や入院も拒否しがちです。

逆に、うつ状態になると何週間も、憂うつな気分が続きます。朝が最も憂うつで、夜になってくると軽くなるのが普通です。食欲もなくなり、不眠になり、躁の時のことを思い出して自己嫌悪に陥ったり、悲観的なことばかり考えてしまいます。双極性障害のうつ状態では、不眠もありますが、過眠になることも多く見受けられます。

ひどい時は、ほとんど寝たきりになり、頭も働かず、生活ができなくなって入院することもあります。少し体力がついてきても、気分は悪いので、「破産してお金がない」といった貧困妄想や、「恐ろしいことをした」などの加害妄想が出るために将来を悲観し、自殺を図ったりする場合もあります。

●気分安定薬の継続的な服用が治療の柱

双極性障害(躁うつ病)は、発症者の結婚、職業、生活にしばしば深刻な影響を招く原因となります。離婚率も高く、健康な対照者の2~3倍とされています。また、自殺率も高くなっています。

躁状態が確認されれば、双極性障害の診断はさほど困難ではありません。しかし、うつ状態のみの場合は、単極性障害(単極性うつ病)と診断したケースのうち、2~3割が経過を追うと双極性に転じるので、注意が必要です。特に20歳以前、あるいは20歳代で発病する単極性障害の場合は、慎重に経過をみていく必要があります。

双極性障害の治療は単極性障害と同様、薬物療法、心理療法、社会的サポート(地域支援活動)の3本柱で行われますが、薬物療法は単極性障害と基本的に異なります。

双極性障害では、気分安定薬を中心に用いるのが原則で、躁状態だけでなく、うつ状態もある程度予防することが知られています。日本では、炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸の3種類の気分安定薬が使用できます。

炭酸リチウムは、気分安定薬のうち最も歴史が長く、その有効性について最も科学的研究が行われている薬物です。ただし、治療域と中毒域が近いために、血中濃度を定期的に測定する必要があります。全般的には副作用の少ない薬物ですが、一般的な副作用としては、手の指先の震えがあるほか、時に飲み始めの数週間に、極端な倦怠(けんたい)感が出て服用を止める患者もいます。有効血中濃度を超えた場合、複視、ふらつき、意識障害、腎障害などの中毒症状が現れます。

カルバマゼピンは元来、てんかん、三叉(さんさ)神経痛の治療薬であり、双極性障害に用いられ始めたのは比較的最近。一般的な副作用としては、眠気や倦怠感、めまいなどですが、極まれに、全身性の薬疹(やくしん)、肝機能障害、造血機能障害などが生じることがあり、重篤な状態となる場合もあります。リチウムと同様に、有効血中濃度を超えると中毒症状が現れるため、定期的な血中濃度測定が必要です。

バルプロ酸も元来、てんかんの治療薬ですが、最近、気分安定薬として用いられ始めました。副作用が比較的少ないため、使用しやすい薬物です。

これらの気分安定薬を用いた治療においては、ある種類が無効でも、他の気分安定薬が有効な場合もあります。また、2剤以上組み合わせることで有効な場合も。服薬が不規則であると効果がないため、薬を規則的に飲み、有効血中濃度に保つことが重要です。

激しい躁状態には鎮静効果のある抗精神病薬を、程度の重いうつ状態には抗うつ薬を、不眠に対して睡眠導入剤を用いますが、これらはあくまでも付加的なものです。

また、気分安定薬の長期使用により、双極性障害の6割は再発を予防することが可能なので、再発予防に重点を置いた治療計画が必要です。

しかし、発症者に服薬の必要性が十分、理解できていないこと、副作用を不快に感じること、一度に複数の種類の薬が処方されて混乱することなどにより、服薬が不規則になったり、中断することがあります。このような状態が続いた場合、再発する可能性が高まります。

医師の処方を守って服薬することを服薬順守、あるいはコンプライアンスといいますが、これを高めるために、医師や薬剤師から病状や治療法について十分な説明を受けて理解すること、家族など周囲の人も服薬に協力することが重要となります。

再発予防のためには、服薬順守を高めると同時に、ストレスを管理することが重要となります。一時的な好調、不調に振り回されずに、根本となっているストレスや性格を改善していくことで躁状態、うつ状態を繰り返さなくなります。

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