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出血性乳房

妊娠や授乳期以外に乳頭から血液や血性分泌物がみられる状態

出血性乳房とは、妊娠期間中や授乳期以外に、女性の乳頭(乳首)の一方または両方から、血液や血液が混じった血性分泌物がみられる状態。

女性の乳頭から乳汁様、漿液(しょうえき)性、膿(のう)様、血性などのいろいろな性状の分泌物が、何もしなくても気付くほど出てきたり、軽くまたは強く乳頭を圧迫すると出てきたり、下着に染みが付いて出ていることに気付いたりするような状態を乳頭異常分泌といいます。

乳頭異常分泌のうち、特に血液や血性分泌物が出てくる場合を出血性乳房といい、多くは乳管内乳頭腫(にゅうかんないにゅうとうしゅ)や乳がんなど、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺(せん)で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管内の増殖病変の症状として認められます。

乳管内乳頭腫は、乳頭近くの比較的太い乳管内の上皮に発生することが多いものの、末梢(まっしょう)乳管から発生することもあります。乳管内の血管結合組織を軸とした上皮細胞と筋上皮細胞が増殖してできます。

乳管内乳頭腫ができる明らかな原因は、不明です。しかし、ほとんどの例でホルモン受容体が陽性なので、卵巣ホルモンが何らかの影響を与えているものと思われます。また、乳頭腫は高率に乳腺症に合併するので、年齢的な要因も関係している可能性があります。通常、35歳から55歳の間に発症することが多く、出産経験のない女性に多いとされています。

乳管内乳頭腫そのものががん化するとは考えられていませんが、将来的に乳がんになるリスクが高まるといわれているので、その点は注意が必要になります。

多くの例で、乳頭から分泌物が出るのが自覚症状となります。分泌物の性状は、血性のことが5割、粘り気の少ない漿液性のことが5割で、水のように透明なこともあります。分泌物の色も、赤色、赤褐色、茶褐色、白色、透明などさまざまです。分泌物の量にも個人差があり、下着に付着する程度から、大量に乳汁のように分泌するものまでさまざまです。

しこりの大きさは、数ミリから1センチ程度で、乳房を触ってもしこりを感じることは少なく、痛みもありません。分泌物が乳腺内にたまると、腫瘤(しゅりゅう)として触れるものもあります。

乳管内乳頭腫は、乳がんとの関連が深い疾患ですから、乳頭からの血性、漿液性の異常分泌に気付いたら、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診します。特に閉経期あるいは閉経後では、症状のよく似た乳がんとの区別が重要です。また、最近では乳がん検診の際に、超音波(エコー)検査で腫瘤として発見されることも多くなってきました。

乳頭から血液や血液が混じった血性分泌物がみられる場合は、乳がんの発見の切っ掛けになることもあります。分泌物に血液が混じっても良性の病変である乳管内乳頭腫や乳腺症によることがほとんどですが、約5%に悪性の病変である乳がんが見付かります。まだしこりにならない早期の無腫瘤性乳がんは乳管内にとどまっており、乳頭からの血性分泌物が唯一の症状です。この場合は、片方の乳頭の1カ所の乳管から出ます。

しかも、明らかにわかる程度の血液が混じっていることもあり、目でみてもほとんどわからない程度の血液が混入していることもあります。従って、片方の乳頭の1カ所の乳管からの血液性の分泌物を認める場合は、乳腺科、乳腺外科、外科などを受診し潜血反応で血液成分が混じっているかどうかを調べることが大切です。潜血反応が陰性の場合は、がんである可能性が極めて低くなります。

悪性の病変である乳がんの場合でも、しこりが触知される前の状態なので、早期に対処すれば心配はいりません。しかし、放置しておくと乳管を破り、しこりとして触知されるようになるので、しっかりと診断しなければなりません。

出血性乳房の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、乳頭分泌物の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、血液検査、超音波(エコー)検査、乳管造影などを行います。

乳頭分泌物の検査では、まず血液成分が混じっているかどうか潜血反応を調べ、次に分泌物の中の異型細胞や悪性細胞の有無を、塗沫細胞診で調べます。また、分泌物内の腫瘍(しゅよう)マーカーをCEA簡易測定キットで測定すると、乳がんの時には極めて上昇しているのがわかります。

確実に診断するには乳管造影が有効で、血性などの分泌物が出ている乳管開口部から造影剤を注入し、X線(レントゲン)撮影を行います。乳管内乳頭腫があると境界明瞭な造影欠損像や走行異常、乳管の閉塞(へいそく)、拡張、狭窄(きょうさく)、断裂像などが映りますので、小さいものでも発見することができます。

この乳管造影で発見される乳がんの多くは、乳管内進展型の早期乳がんで、非浸潤性がん、触知不能がん、微小がんです。

また、乳首から針金くらいのカメラを入れる乳管内視鏡検査を行うこともあります。

さらに、血性分泌物があって、前記の各種検査で診断がつかない場合は、分泌物が出ている乳管開口部から色素液を注入し、色素を目印に乳管が所属する腺葉区域を部分的に切除して病理組織検査を行います。この検査で、乳管内進展型の早期乳がんで、非浸潤性がん、触知不能がん、微小がんが発見されることが多くあります。広がりが少ないがんの場合は、腺葉区域の切除で診断と治療を兼ねることもできます。

乳腺科、乳腺外科、外科の医師による治療では、原因に応じた処置を行います。

検査の結果、乳がんの可能性が否定された場合は、経過を観察します。原因が乳管内乳頭腫などの良性の疾患の場合は、大抵は外科手術の必要はありませんが、非浸潤性乳管がんなどとの区別がつきにくい場合や、乳頭腫が大きい場合、出血が多い場合は、乳管内視鏡下の手術で腫瘍のある乳管を切除するのが一般的です。

再発も多く、将来乳がんを発症するリスクも高いため、治療後も定期的な乳がん検診が欠かせません。予防的な乳房切断は、必要ありません。

乳がんの場合は、外科手術で腫瘍を切除し、抗がん剤による化学治療などを行います。

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