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眼内リンパ腫


眼球内に悪性リンパ腫が生じる疾患

 眼内リンパ腫とは、結膜や眼窩(がんか)などの眼球周囲組織のほか、眼球内に悪性リンパ腫が生じる疾患。

リンパ節を始めとして、全身のリンパ系組織に発生するがんを総称して悪性リンパ腫と呼びますが、しばしば中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜にも悪性リンパ腫を生じ、重篤な経過をたどる可能性があります。

眼球は、脳が突出して形成されます。そのため、眼球内に生じる眼内リンパ腫は、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫の一亜型と考えられます。全身性の悪性リンパ腫の組織学的な分類に従えば、眼内リンパ腫のほとんどは、びまん性大型B細胞リンパ腫というタイプに相当します。

眼内リンパ腫の原因は、現在の段階では解明されていません。そもそも、リンパ節のような組織の存在しない眼球内や中枢神経系に、悪性リンパ腫が発生する原因が、わかっていません。

近年、眼内リンパ腫の発生率は、増加傾向を示しています。60歳以上の高齢者に多くみられ、やや女性に多い傾向にあります。

全身性の悪性リンパ腫が眼内に転移してくる場合と、目から生じてくる原発性の場合の2通りがあります。目から生じてくる場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。

なお、結膜や眼窩、涙腺(るいせん)などの眼球周囲組織に発生する悪性リンパ腫の多くは、組織学的にMALTリンパ腫であり、眼球内に発生するリンパ腫と比べると悪性度は低く、予後は一般に良好です。

眼内リンパ腫が生じた際の自覚症状は、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血などです。これらは、ぶどう膜炎という炎症性の眼疾患にみられる自覚症状とほとんど同じです。

自覚症状は、片目だけの場合や、両目の場合もあり、両目交互に発生する場合もあります。徐々に悪化するものもあれば、一時的によくなり再び悪化するものなどもありますが、長期にわたり持続することが多いのが特徴です。

片目の視力が急速に低下した時などは、眼内リンパ腫である可能性があり、中枢神経系の脳への転移も非常に早いので、眼科を受診することが勧められます。基本は眼科での受診になりますが、神経内科や血液内科、脳神経外科、脳腫瘍外科などの診療科と連携して経過観察をしたり、治療に当たる必要が出てくることもありますので、できれば総合病院で治療を受けることが勧められます。

眼内リンパ腫の検査と診断と治療

眼科などの医師による診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。

硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。

一方、硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。

また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。

眼科などの医師による治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。

局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートという抗がん剤を眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。

いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。

一方、中枢神経系原発悪性リンパ腫に対しては、メトトレキセートを全身投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

眼内リンパ腫とともに高率に現れる中枢神経系原発悪性リンパ腫の予後については、以前と比べれば向上しつつあるものの、再発率や死亡率は高いものです。

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