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高カイロミクロン血症


血液中にカイロミクロンが異常に蓄積し、時に急性膵炎を発症する疾患

高カイロミクロン血症とは、中性脂肪に富む軽くて大きなリポ蛋白(たんぱく)であるカイロミクロンが血液中に異常に増加し、黄色腫(しゅ)や、時に急性膵(すい)炎を発症する疾患。脂質異常症(高脂血症)の一つです。

脂質異常症(高脂血症)は大きく5つに分類され、その中ではⅠ型脂質異常症(高脂血症)でカイロミクロンの増加を呈し、V型脂質異常症(高脂血症)でもカイロミクロンとVLDL(超低比重リポ蛋白)の増加を呈し、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を示します。

カイロミクロンは中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であり、トリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dl以上の高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)では、カイロミクロンが増加して高カイロミクロン血症を伴うことが多くなります。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)は、原発性高カイロミクロン血症、家族性高トリグリセライド血症とも呼ばれ、常染色体劣性遺伝を示すまれな疾患で、100万人に1人が発症するといわれています。

その原因は、中性脂肪を分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下であり、それにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損に加え、この分解反応に必要なアポリポ蛋白C-Ⅱ、アポリポ蛋白A-Ⅴ、GPIHBP1、LMF1の先天的欠損、さらにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の阻害物質(インヒビター)の存在が挙げられます。

V型脂質異常症(高脂血症)は、成人期に発症し、原因不明です。リポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損、アポリポ蛋白C-Ⅱなどの先天的欠損を認めません。

発症の要因とされるのは、過食、チーズや卵などの酪農製品の取りすぎ、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などのほかの疾患、利尿剤やβ遮断薬などの治療薬に含まれる物質、エストロゲンやステロイド補充によるものなどが挙げられます。

高カイロミクロン血症では、血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dlを超えると、急性膵炎の発症リスクが高まり、発症例ではほとんどが2000mg/dlを超えているとされます。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)では、小児期から脂肪摂取後の膵炎による上腹部痛を繰り返します。また、肝臓や脾(ひ)臓のはれが起きます。皮膚には、黄色腫という小さなピンクがかった黄色い皮疹(ひしん)ができます。

トリグリセライド(中性脂肪)が4000mg/dlを超えると、網膜血管が白色ピンク状に見える網膜脂血症を示します。

高カイロミクロン血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中の総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。食後12時間以上の空腹時に採血します。

血液検査では、中性脂肪(トリグリセライド)の値が基準の値を大きく上回る場合や、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準の値を下回る場合に、治療の対象とすることを確定します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)の場合、薬物療法の効果は限定的であるため、食餌(しょくじ)療法を中心に、運動療法も行ないます。

食餌療法では、1 日の脂肪摂取を15~20g 以下、または総カロリーの15%以下、食後でも血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1500mg/dlを超えない程度にまで、食事での脂肪摂取を制限します。極端な制限が行われるため、ご飯やパンの量を1・2~1・5倍程度食べることにより、1日のエネルギー量を確保することになります。カイロミクロンの生成を抑える中鎖脂肪酸(MCT)製品を使うことも、治療および予防に有効です。

運動療法では、積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、治療のスピードを早め、症状の悪化を予防するのに効果的です。

V型脂質異常症(高脂血症)の場合、成人の発症の要因とされる過食、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などの是正を行い、薬物療法としてフィブラート系薬物のベザフィブラートやフェノフィブラート、およびオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)製剤やドコサヘキサンエン酸(DHA)製剤を用います。

急性膵炎の発症、重症度により、生命予後は左右されます。

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