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奇形精子症
奇形精子症とは、射精された精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。精子奇形症とも呼ばれます。
運動能力を持つ男性の精子は、精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体(副睾丸)において成熟し、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。
男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、奇形精子症に相当します。
精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。
2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛(べんもう)を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。
奇形精子症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤(りゅう)、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。
泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。
クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。
泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。
パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である奇形精子症では自然妊娠が見込めないためです。
通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。
射精された精液中に奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。
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