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顔面けいれん
顔面けいれんとは、まぶたや口角などの顔面の筋肉がピクピクとけいれんする疾患。
ほとんどの場合は片側の顔面だけにみられ、まれに両側の顔面にみられることがあります。どの年齢層でも発症しますが、比較的女性に多く、40歳代から50歳代に多く発症します。
人前での緊張、ストレス、疲れ、強い閉眼などの顔面筋(表情筋)の運動などで誘発されやすくなります。
典型的な顔面けいれんは、自分の意思とは関係なく、目の周囲がピクピクとけいれんする症状から始まります。徐々に、けいれんは口元にまで広がり、さらに進行すると、ほお、額、耳、あご、首筋にまで広がることがあります。まれに、口元がけいれんする症状から始まり、徐々に、顔全体にけいれんが広がることもあります。
初めは人前で緊張した時など時々だけけいれんが起こり、あまり気にならない程度でも、けいれんしている時間が長くなっていき、持続的にけいれんが起こることもあります。
重症になると、目の周囲や口元のけいれんが同時に起こり、一日中、時には寝ていても起こるようになることもあります。長期間、けいれんが続いていると、けいれんのない時には顔面まひがみられ、顔がゆがむこともあります。
例えば、営業職や会社の受付をしている人などにとっては、顔面がピクピクとけいれんしていると、まともに相手と目を合わせて話すことができず、仕事に支障を来すことになります。
顔面けいれんが起こる主な原因は、顔面にある筋肉を動かす運動神経である顔面神経が、脳幹という脳の中心の部分から出てきている部分で、頭蓋(ずがい)内の動脈または静脈が接触して顔面神経を圧迫していることです。血管の拍動とともに顔面神経が刺激されることで、顔面の筋肉が不随意に収縮して、顔面のけいれんを起こしているのです。
そのため、高血圧や糖尿病、喫煙などで動脈硬化になりやすい人は、顔面けいれんが起こりやすくなります。
そのほかにも、顔面神経の周囲に腫瘍(しゅよう)があり、腫瘍が顔面神経を圧迫することにより刺激が伝わり、顔面のけいれんを起こしていることもあります。また、明らかな原因が見付からない場合に、顔面けいれんが起こることもあり得ます。
顔面けいれんは明らかな症状でわかりやすいので、顔が無意識に収縮するような症状がある場合は、神経内科、脳神経外科を受診することが勧められます。治療可能だと知らないで、誰にも相談できずに一人で悩み、様子をみてしまっているケースも見受けられます。
神経内科、脳神経外科の医師による診断では、顔面けいれん症状と特徴的なけいれんを視診することによって、ほとんどの場合は容易に確定できます。
けいれんの原因を突き止めるためにMRI(磁気共鳴画像)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査などの画像診断や、神経伝導検査、筋電図などの検査を行うこともあります。
脳の血管が脳幹の部分で顔面神経を圧迫していることを最もはっきり確認できるのは、血管造影と呼ばれる検査で、血管にカテーテルを入れて造影剤を流し、血管の走行を調べます。 しかし、血管造影は脳梗塞(こうそく)などの危険を伴うことがあるので、MRI検査と同時に、体に負担をかけずに血管の走行がわかるMRA(磁気共鳴血管撮影)検査という画像診断で診断することもあります。
神経内科、脳神経外科の医師による治療では、抗コリン剤、抗てんかん剤(抗けいれん剤)などを内服で使用します。効果は比較的弱く、短期間で再発することがあります。
ボツリヌス毒素(ボトックス)をけいれんする筋肉に局所注射し、筋肉を弱めるボツリヌス療法を行うこともあります。ボツリヌス毒素は細菌兵器として使われることが危ぶまれているボツリヌス菌からの毒素と同じものですが、治療に使われる量は致死量よりはるかに少量なので、命にかかわることはありません。ボツリヌス療法は外来でできますが、効果は約3カ月なので繰り返し注射する必要があります。
脳の血管が脳幹の部分で顔面神経を圧迫している場合には、手術が根本的な治療法になります。圧迫している血管と、圧迫を受けている顔面神経の間に、ウレタン樹脂などのクッションを設けて、再び血管が顔面神経を圧迫しないように固定します。
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