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グルカゴン産生腫瘍


膵臓のランゲルハンス島の腫瘍で、グルカゴンを過剰に分泌

グルカゴン産生腫瘍(しゅよう)とは、グルカゴンを過剰に分泌する膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の腫瘍。グルカゴノーマとも呼ばれ、血糖値が上昇し特有の発疹(はっしん)が現れます。

グルカゴンは、エネルギー代謝に必要なグリコーゲンを分解して、血糖値を上昇させる作用を持つホルモンの一つ。29個のアミノ酸よりなるペプチドホルモンであり、炭化水素の代謝に重要な機能を持ちます。膵臓の組織内に島状に散在すランゲルハルス島にあるA細胞(α細胞)で生合成、分泌されて血液中に放出されます。

同じランゲルハンス島にあるB細胞(β細胞)から分泌され、糖尿病の特効薬として知られるインシュリンとともに、血糖値を一定に保つ作用をするホルモンですが、インシュリンとは逆に、血糖値が下がって糖を必要とするようになった際、肝臓の細胞に作用してグリコーゲンの分解を促進します。つまり、グルカゴンの分泌は低血糖により促進され、高血糖により抑制されます。

このグルカゴンを分泌するグルカゴン産生腫瘍が発生すると、グルカゴンを過剰を分泌して血糖値が高くなるために、糖尿病症状が出て、体重も減ります。ほとんどの発症者に、慢性的な赤茶色の発疹(はっしん)の症状も出て、発疹は水疱(すいほう)を作って破れ、かさぶたとなり、鼠径(そけい)部から始まって臀(でん)部、脚、上腕へと広がります。

また、口内炎、口角炎もでき、貧血、低アミノ酸血症を示すようになります。

グルカゴン産生腫瘍は70パーセントから80パーセントが悪性で、単発性が多く認められます。直径は1センチから35センチで、通常3センチ以上になります。腫瘍の大きさと症状の強さは相関せず、小さいものでも肝臓やリンパ節に転移することがあります。

腫瘍の成長が遅いので、ほとんどの人が発症後15年以上生存しています。症状が出始める平均年齢は50歳で、患者の約80パーセントは女性。閉経期あるいは閉経後の女性に多くみられます。

グルカゴン産生腫瘍の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断は、血中グルカゴン値が高いことから判断します。続いて、グルカゴン産生腫瘍の位置を確認するために、CT検査、超音波検査、動脈に造影剤を注入してX線撮影を行う動脈造影検査を実施します。試験開腹手術が必要となる場合もあります。

医師による治療は、腫瘍を手術で切除して症状をなくすことが理想的ですが、根治的な切除が行えるのは30パーセント前後とされています。切除可能な腫瘍に対しては、膵頭十二指腸切除術または膵体尾部切除術が行われます。

根治的な切除が行えない場合にも、グルカゴンの分泌量の減少を目的に可能な限りの切除が行われます。肝臓への転移に対しては、可能な限り評価可能な転移巣の切除が行われます。

癒着が著しく切除が行えない場合や転移している場合は、化学療法で抗がん剤のストレプトゾシンとドキソルビシンの組み合わせを投与し、グルカゴン値を下げて症状の軽減を図ります。しかし、化学療法では延命は期待できません。

ホルモン産生を抑制する薬剤のオクトレオチドを投与してグルカゴン値を下げると、発疹が消えて食欲が増し体重も増えてきます。ただし、オクトレオチドの投与によるインシュリン分泌の影響で、体内のブドウ糖代謝能力である耐糖能が低下して、逆に血糖値が上がってしまうこともあります。

発疹に対しては、亜鉛軟こうを塗ったり、アミノ酸や脂肪酸の静脈投与で治ることもあります。

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