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解離性障害


心的外傷やストレスへの自己防衛として、自己同一性を失う不安障害の一種

解離性障害とは、心的外傷やストレスへの自己防衛として、自己同一性(アイデンティティ)を失う不安障害の一種。不安障害とは、神経症やノイローゼといわれている症状の比較的新しい呼び方です。

人間の記憶や意識、知覚や自己同一性(アイデンティティ)は、本来1つにまとまっています。解離とは、これらの感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。例えば、過去の記憶の一部が抜け落ちたり、知覚の一部を感じなくなったり、感情がまひするといったことが起こります。

ただ、解離状態においては、通常は体験されない行動や知覚が新たに出現することもあります。遁走(とんそう)などの異常行動や、新たな人格の形成は、代表的な例です。これらの解離現象は、軽くて一時的なものであれば健康な人に現れることもあります。こうした症状が深刻で、日常の生活に支障を来すような状態を解離性障害といいます。

原因としては、心的外傷やストレスが関係しているといわれます。心的外傷にはさまざまな種類があり、災害、事故、暴行を受けるなど一過性のものもあれば、性的虐待、長期にわたる監禁状態や戦闘体験など慢性的に何度も繰り返されるものもあります。

そのようなつらい体験によるダメージを避けるため、精神が緊急避難的に機能の一部を停止させることが、解離性障害につながると考えられています。

解離性障害には、解離性健忘、解離性遁走、解離性同一性障害、離人症性障害など、さまざまな症状があり、また身体症状に転換されて表現されることもあります。

解離性健忘は、ある心的ストレスを切っ掛けに出来事の記憶をなくすもので、通常の物忘れよりもその範囲は広範です。多くは数日のうちに記憶がよみがえりますが、時には長期に及ぶ場合もあります。

解離性遁走は、家庭や職場、学校において極度のストレスにさらされ、しかもそれを誰(だれ)にも打ち明けることができない状態で突然始まり、日常的な場所を離れて放浪し、本人にその間の記憶がないものをいいます。飲酒や身体疾患による意識障害、認知症などでは説明できないものを指します。放浪は時に数百キロを越えることもあり、遁走の間は自分が誰であるかわからず、遁走の以前はもとより、その最中に起こった出来事の記憶も失われていることもあります。放浪先で、新たな生活を始めることもあります。

解離性同一性障害は、いわゆる多重人格と呼ばれる状態です。2つ以上のはっきりと区別される人格が一人の中に存在し、それらの人格が交代で現れて独立した行動をします。人格同士はしばしば、別の人格が出現している間はその記憶がない場合が多く、生活上の支障を来すことが多くなります。

離人症性障害は、自分の意識が自分自身から離れ、遠ざかっていると感じる状態が慢性的に続くものです。自分がまるで夢の中にいるように思い、現実の出来事に現実感がなく、映画の画面を見ているように感じられます。自分が今、ここにいるという意識がなくなり、自分の体も自分のものではないかのように感じられ、あたかも自分を外から眺めているように感じられます。

ほかにも、体が硬く動かなくなるカタレプシー、体を動かしたり言葉を交わしたりできなくなる解離性混迷、昏睡(こんすい)状態になり体が思うように動かせなくなる解離性てんかん、ヒステリー性運動失調症、ヒステリー性失声症、解離性運動障害、失立、心因性失声、心因性振戦、解離性けいれん、憤怒(ふんぬ)けいれん、解離性感覚障害、心因性難聴、神経性眼精疲労、ガンサー症候群、亜急性錯乱状態、急性精神錯乱、心因性もうろう状態、心因性錯乱、反応性錯乱、非アルコール性亜急性錯乱状態なども、解離性障害の一種です。

解離性障害の検査と診断と治療

精神科、神経科、心療内科の医師による診断は、主に症状に基づいて行われます。

精神科、神経科、心療内科の医師による治療では、発症者が安心できる環境にすること、家族や周囲の人が疾患について理解すること、医師との信頼関係を築くことが大切です。

大半の解離性障害の発症者は、まずその病態を信用してもらえない、演技と思われてしまうという問題を抱え、そのことが解離性障害の症状をさらに悪化させることもあります。本人が自分に起きていることを理解していない場合も少なくありません。まず、本人や家族が障害を理解し症状を受け入れることが、治療環境の調整の第一歩ともいえます。

また、解離性障害の主な原因は心的なストレスによりほかの人に自分を表現することができないことですので、医師との安心できる関係性の中でしか、解離されている心の部分は表現できません。

解離性障害の症状の多くは、ある程度の時間を経れば自然に解消されるか、別の症状へ移行するのが一般的です。早い段階で、催眠や暗示によって解離性の健忘や、ストレスが原因で一時的に立つことができなくなる失立、声を発することができなくなる失声、まひなどを解消することは効果が期待できないだけでなく、症状を悪化させることもあります。安心できる環境や自己表現の機会を提供しながら、それらの症状の自然経過を見守るという態度も重要です。

また、発症者の精神的な健康を回復させるために、抗うつ剤や精神安定剤が有効なこともあります。

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