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強剛母趾
強剛母趾(きょうごうぼし)とは、外反(がいはん)母趾と同じように足の親指の付け根が痛くなる疾患。
足の変形はそれほどみられないものの、親指の付け根を足の甲のほうへ反らすと強い痛みが走り、さらに親指の付け根の中足指節(ちゅうそくしせつ)関節(MP関節)の骨に、骨棘(こつきょく)と呼ばれる小さなトゲのような突起ができて出っ張るという特徴を持っています。親指の付け根の中足指節関節を触ると、骨が出っ張っているのがわかります。
この状態でヒールの高い靴を履いて歩いたり、つま先立ちをしたり、つま先に力を入れたりすると、親指の付け根の出っ張りが中足指節関節とぶつかって、激しい痛みが出てきます。炎症を起こして関節がはれると、靴も履けなくなるほどになります。
そのまま放置する、親指を上に向けるのが制限されるようになり、重度になると、関節がほとんど動かなくなります。
ハイヒールなどの踵(かかと)の高い靴を履いたり、長時間の立ち仕事に従事するなどで、歩く際の踏み返しや、つま先立ちのような姿勢が繰り返されると、中足指節関節に強いストレスがかかり続け、さらに先天的な足の指の形や、足の甲の部分に位置する長い骨である中足骨の形状などによってストレスが増大されて、強剛母趾が起こると考えられます。
片足だけに症状が現れる人が多いので、足を硬いものにぶつけるなどの、軽いけがが切っ掛けで起きてくるのではないかとも考えられています。
繰り返し中足指節関節部分にストレスがかかり続けると、関節の軟骨が破壊されて変性を起こし、増殖して骨棘が生じます。さらに骨棘が増殖を続けると、関節の透き間が減ってきて、互いにぶつかり合って関節の動きが悪くなります。 最終的には、大きくなった骨棘によって関節の透き間がなくなり、関節がほとんど動かなくなると考えられています。
この強剛母趾は、柔道やテニスなど、足の親指の付け根の中足指節関節に繰り返し負荷が加わるスポーツをしてきた人や、ハイヒールを履いて運動する社交ダンスの愛好者にも多くみられます。
足の親指の付け根が痛むため、外反母趾や痛風を疑う人もおり、尿酸値が高い場合は医師に痛風と誤診されることもあります。欧米の足の整形外科医療に比べると、日本は遅れているため、強剛母趾の症状に長年悩まされながらも、効果的な治療を受けられず、病院や接骨院を転々とする発症者もいます。
現在、強剛母趾の診療を行える医療機関は限られており、「日本足の外科学会」ではホームページで、全国の整形外科を始めとした「足の外科」の病院や医師を紹介しています。
整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、親指の付け根の中足指節関節に軟骨が変性した骨棘ができていないか、また、中足指節関節の透き間が狭くなっていないかを調べます。
出っ張ってくる骨棘は軟骨のためX線写真にはっきりと映ることはありませんが、左右の足のX線写真を比較することで、骨棘を明らかに見付けたり、関節にはれが生じていることを見付けたりできます。
親指がくの字型に変形している外反母趾とは、X線写真の外見上からも区別が付きますが、外反母趾の初期では慎重な鑑別が必要になります。
整形外科の医師による治療では、強剛母趾が軽い場合は、靴に足底板(中敷き)を入れたり、靴を変えることで対処します。足底板は発症者の足に合わせて作るのが効果的で、義肢装具士が足の形を調べて製作し、健康保険が利用できます。
靴の場合は、つま先の幅が広く、歩行時の踏み返しの時の反り返しが小さくなるような靴底が硬めのものや、靴底に丸みがあり体重移動がしやすいものに変えることで、親指の屈伸による負担を軽くして、関節の動きを抑えることができて症状がかなり改善します。同時に、極力長歩きを控えたり、つま先立ちのような動作を控えます。
足の甲側への棘骨の出っ張りが大きい時や、親指の付け根の中足指節関節が完全に壊れてしまったような場合には、手術が必要になります。
手術では、関節軟骨が残っている場合には、骨の一部を取り除いて関節を作り直す関節唇切除術、関節軟骨が残っていないほどの重症な場合には、関節を動かないように固定する関節固定術が行われます。
関節唇切除術は、足の甲側から切開し、衝突がなくなるまで骨棘を切除し、関節面の切除は最小限にとどめます。
関節固定術は、2本のネジを使って関節を固定する方法で、しばらくギプス固定し、骨がしっかりとくっついたことを確認してネジを抜きます。関節を固定すること踏み返しの運動の範囲は狭くなりますが、動きがなくなることで痛みは消失します。
強剛母趾の初期の場合の運動処方としては、足の指を握ったり開いたりして、特に親指と小指をしっかりと開き、足の指全体に力をつけ、親指と小指が使えるようにトレーニングすることが大切です。
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