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高血圧性脳症とは、著しい血圧上昇に伴って、頭痛、視力障害、けいれん、意識障害など脳に起因する症状が起こる症候群。
脳の血管には、血圧の上昇・下降に対して血管を収縮・拡張させて血管抵抗を増大・減少させ、脳の血流を一定に保とうとする働きがあります。これを脳血管の自動調節能といいます。しかし、その調節能の範囲を超えて血圧が著しく持続的に上昇すると、脳の血流は異常に増え、脳の毛細血管内から血管外へ血漿(けっしょう)成分が染み出して脳浮腫(ふしゅ)を起こし、頭蓋(ずがい)内圧が高進します。このような現象が高血圧性脳症で、もともと高血圧のある人や、腎(じん)機能障害のある人に起こりやすく、降圧剤の中断や腎機能障害の悪化などが誘因となります。
もともと高血圧のある人といっても、ほとんどは腎機能障害を持つ重症高血圧、あるいは悪性高血圧の人に起こるほか、急性腎炎や妊娠高血圧症候群(旧妊娠中毒症)の人にも起こることがあります。従って、その発生には年齢や性別などによる特徴はありません。
頭痛、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)など、いわゆる頭蓋内圧高進症状が起こります。頭痛の多くは後頭部から後頸部(けいぶ)にかけての激しい痛みで、著しい高血圧と悪心、嘔吐を伴うためにくも膜下出血とよく似ています。血圧は、最高血圧(収縮期血圧)が200mmHgを大幅に超え、最低血圧(拡張期血圧)も130mmHgを超えることが多く、異常な高血圧を示します。
両側性の視力低下を訴えるケースも少なくありません。初めのうち不安感や興奮、失見当識などの精神症状がみられるケースもあり、中には昏睡(こんすい)状態に至るケースもあります。まれに、全身の強直性けいれんを起こすケースがあります。放置すると、脳出血や心不全、腎不全により死亡します。
高血圧性脳症に気付いたら、直ちに神経内科の専門医の診察を受け下さい。
神経内科の医師による診断では、著しい高血圧を伴って、頭痛、悪心、嘔吐、意識障害など脳の障害を示す症状から、高血圧性脳症を念頭に置きます。似たような症状を示すもので最も重要なのは、脳卒中、とりわけくも膜下出血で、その鑑別にはCTスキャンやMRIを用います。高血圧性脳症の画像では、大きな梗塞(こうそく)や出血の所見はなく、ほぼ正常ないし脳が全般的にはれている脳浮腫の所見が得られます。
血液検査も診断に有用です。高血圧性脳症では腎機能障害を基盤とすることが多く、クレアチニン値の上昇などの所見が得られます。また、高血圧性脳症と似た症状を示す肝性脳症、糖尿病性昏睡など代謝性の脳症との鑑別に、血中アンモニア値、血糖値などの検索が必要です。
神経内科の医師による治療では、速やかに血圧を下げます。降圧が速やかに得られ、用量を調節しやすく、また効果が確実な静脈内投与の降圧剤で治療します。血圧を測定し神経症状を監視しながら、降圧速度を調整します。
意識障害などを示す脳症状の強い場合では、脳の浮腫に対する静脈内投与の抗脳浮腫剤で治療します。強直性けいれんがある場合では、静脈内投与の抗けいれん剤で治療します。
速やかに降圧が得られれば、1~2日で症状は消失します。降圧治療が多少遅れた場合には、症状の改善に数日を要することもありますが、一般に予後は良好です。ただし、治療開始までにあまりにも時間を要した場合には、脳症の不可逆的な進行や脳卒中の合併で後遺症を残したり、肺水腫(すいしゅ)の併発で死亡に至る例もあり注意が必要です。
腎機能障害などの基盤となる疾患がある場合には、それらに対する治療の継続がその後も必要です。
高血圧性脳症の予防のためには、高血圧症を治療している人は、自己判断で降圧剤の中断をしないようにすることが必要です。特に、腎機能障害を伴っている慢性高血圧症の人の場合は、内服の継続による厳重な血圧の管理が必要です。
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