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虚血性大腸炎とは、大腸に届く動脈の血液が十分でなくなって、必要な酸素や栄養分が供給されないために大腸粘膜が虚血となり、炎症や潰瘍(かいよう)を生じる疾患。
発症には、血管と腸管の両方が関係します。動脈硬化や血栓などのために血管の血流が滞ってしまうほか、便秘が続いて大腸の壁が内側から圧迫され、血管も狭くなって血液が流れにくくなって起こると考えられています。発症者には高齢者が多いのですが、便秘がちな若い女性にも時にみられます。
胃腸の動脈は外側から内側に向かって流れますので、大腸の内側が最も動脈血の末端になり、粘膜が炎症を起こして真っ赤になり、腸に沿って縦に走る潰瘍(かいよう)ができます。幸い、大腸は心臓や脳と違い、周囲との血管の交通が豊富なので、ある領域の動脈がいっとき詰まっても、時間がたつと周囲から血が回ってきて、多く場合は後遺症も残さずに治ります。
この虚血性大腸炎は大腸のどの部位にも起き得ますが、特に多いのが下行結腸です。次に多いのがS状結腸と直腸の境目です。これらの場所は、下腹部の左側で縦に通る大腸に相当し、大腸に酸素や栄養分を供給する主な動脈のつなぎ目に当たり、血流が乏しいためとされています。
突然の激しい腹痛、下血、下痢で発症します。典型的には左下腹部の腹痛が起こり、赤黒い便が出ます。悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、発熱が認められることもあります。直前に便秘をしていることが多いようです。
多くは一過性型であり、数日で下血が治まり、腹痛も消えます。非常にまれに、治る過程で腸が狭くなったり、潰瘍部で腸に穴が開いたりします。前者を狭窄(きょうさく)型といい、腹痛や下痢が続くことがあります。後者を壊疽(えそ)型といい、激しい腹痛から症状が急速に悪化します。敗血症やショック状態を合併して、死に至る場合もあります。
突然の腹痛、下血がみられたら、できるだけ早く内科、ないし消化器科の専門医を受診し、適切な治療を受けるようにします。再発は少ないといわれています。
内科、ないし消化器科の医師による診断は、症状だけで容易に推定できますが、確定するために大腸内視鏡検査を行います。多くの場合、下行結腸やS状結腸に発赤、出血、浮腫(ふしゅ)、縦に走る細長い潰瘍などがみられ、潰瘍の最も変化が強いところで全周性に真っ赤になっていれば、虚血性大腸と確定します。
なお、痛み止めや抗生物質の副作用で起きる薬剤性大腸炎も、虚血性大腸炎と内視鏡像が似ており、区別するために内服薬の有無を問診で聞きます。
注腸造影検査でも、粘膜の浮腫による変化や縦に走る潰瘍が認められますが、大腸の穿孔(せんこう)の危険性があることから、今ではあまり行われていません。
軽症の虚血性大腸炎では、入院の必要はありません。出血が多かったり潰瘍が広く深い時には、入院して大腸の安静を目的に3~4日間絶食し、その間は点滴で水分や栄養を補い、二次感染防止のための抗生物質の投与などを行います。腹痛に対しては対症療法として、鎮痙(ちんけい)薬や鎮痛薬を投与します。症状が改善したら、食事を開始します。
ただし、ほとんどは一過性型の虚血性大腸炎であり、積極的治療を必要とせず、腸の安静を保てば1〜2週間で自然に治ります。
まれですが、狭窄型、壊疽型では手術を要します。狭窄型では、出血した付近の腸管が狭くなって腹痛の原因となっている場合に、内視鏡を使って狭くなった場所を広げたり、手術で切除したりします。壊疽型では、症状が急速に進み、もともと高齢で他の疾患を持っている発症者が多いので、緊急で手術して壊死した大腸を切除します。
虚血性大腸炎の再発を防ぐためには、便秘を起こさないようにすることが大切です。規則的な生活や野菜類の多い食事、適度の運動を心掛けてください。医師の側でも、症状などに応じて便秘薬を処方します。コンテンツのトップへ戻ります ページのトップへ戻ります ホームへ戻ります
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