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吸収不良症候群



栄養分の消化吸収が障害され、栄養失調を起こす疾患

吸収不良症候群とは、経口摂取した栄養分の消化吸収が障害された状態の総称。障害の程度や持続時間によって、全身の栄養状態が悪くなり、いわゆる栄養失調を起こしてきます。

吸収不良症候群の中にはさまざまな疾患が含まれますが、原発性吸収不良症候群と、続発性吸収不良症候群に大きく分けられます。

原発性吸収不良症候群は、もともと小腸の粘膜自体に問題があり、栄養素の吸収が障害されているもので、スプルー(グルテン腸症)と牛乳不耐症(乳糖不耐症)とがあります。

スプルーは、小麦蛋白(たんぱく)のグルテンが腸粘膜に障害を起こすと考えられる優性遺伝による疾患で、欧米人に多く日本人ではほとんどみられません。1日3、4回、酸臭のある不消化便を排出し、すべての栄養素が吸収されないため、ビタミン欠乏を起こしたりします。

一方、牛乳不耐症は、日本人にも多く、二糖類分解酵素のラクトース(ラクターゼ)が欠損しているものです。牛乳など乳糖を含む食物を摂取すると、腹痛、腹鳴、腹部膨満感、水様性下痢を生じます。過敏性腸症候群と似ていますが、牛乳を温めて飲んでも、それを分解する酵素がないので、吸収されず、下痢などを生じます。

続発性吸収不良症候群は、原因となる疾患や腸管などの手術によって二次的に起こり、栄養分の吸収が悪くなっているものです。原因としては、クローン病など広範囲にわたる腸病変、異常蛋白のアミロイドが体の中に付着して臓器の機能障害を引き起こすアミロイドーシスなどの全身性の疾患、腸管などの手術による切除、放射線照射、膵(すい)がんや胆道がんなどでの消化酵素分泌障害などが挙げられます。ランブル鞭毛(べんもう)虫の小腸への寄生も、原因となります。

症状としては、下痢、泥状で酸臭がある脂肪便、体重減少、全身倦怠(けんたい)感、腹部膨満感、浮腫(ふしゅ)、貧血、出血傾向、病的骨折、四肢の硬直性けいれん、皮疹(ひしん)などがみられます

吸収不良症候群の検査と診断と治療

下痢、脂肪便、体重減少、貧血などの吸収不良症候群を疑わせる症状に気付いたら、消化器内科を受診します。牛乳不耐症(乳糖不耐症)では、乳糖を含む牛乳、チーズなどの食品をなるべく制限する必要があります。

医師による糞便(ふんべん)検査では脂肪便、血液検査では貧血、低蛋白血症、低アルブミン血症、低コレステロール血症、低カルシウム血症がみられます。消化吸収試験として、糞便脂肪量の測定、単糖のD-キシロース吸収試験、呼気水素試験、乳糖負荷試験、シリング試験、膵外分泌機能検査などが行われ、障害部位や程度の診断に有用です。

さらに、原因となる疾患の診断には、小腸X線検査、小腸や十二指腸の内視鏡検査、生検による組織検査、腹部超音波検査、CT検査などが行われます。牛乳不耐症の検査では、乳糖を20グラム飲み込んで、血液の中にどれだけ取り込まれているかを調べます。

治療としては、スプルー(グルテン腸症)の場合、グルテンを含まない食事をとり、各種の栄養剤、ビタミンを補給します。牛乳不耐症の場合、乳糖分解酵素剤を内服します。また、近年は乳糖分解酵素剤を加えた特殊な牛乳も市販されています。

続発性吸収不良症候群の場合で消化吸収障害が軽度であれば、低脂肪、高蛋白、低繊維食による食事療法と消化酵素の投与を行います。消化吸収障害が高度で低栄養状態を伴う場合には、まず半消化態栄養剤または成分栄養剤を経鼻チューブか経口で投与する経腸栄養法、あるいは完全静脈栄養法による栄養療法を行い、栄養状態の改善を目指します。

同時に、原因となる疾患の診断を確定し、それに対する治療が行われます。

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