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顕微鏡的多発血管炎とは、全身の毛細血管や細動動脈、細動静脈といった細い血管の血管壁に炎症が起こる疾患。細い血管にのみ血管炎が起こる本症は、中小動脈にのみ血管炎が起こる結節性多発動脈炎から近年、分離されて独立したものです。
男性にやや多く、50歳以上の高齢者に好発します。欧米に比べて比較的頻度が高いようで、日本全国の年間発生数は約1400人と推定され、国の特定疾患(難病)に指定されています。
原因は、結節性多発動脈炎と同じようにいまだ不明です。しかし、ウイルス感染や大気汚染などが誘因として考えられており、好中球細胞質の酵素に対する抗好中球細胞質抗体(自己抗体)が血液検査で認められることから、他の膠原(こうげん)病と同様に、免疫異常が背景に存在すると考えられています。
症状としては、全身の細い血管の血管壁に炎症を起こして、出血したり血栓を形成したりするため、障害が起こった血管の還流臓器や組織が壊死したり、虚血を来したりします。初発症状としては、高熱が出て、関節痛、筋肉痛が起こり、体重減少、全身の消耗などがみられます。
特徴的なのは、腎(じん)臓の機能が急速に悪化する急速進行性の腎炎と、肺に間質性肺炎や肺出血がみられることです。その他、網目状の発疹(はっしん)が出る、紫斑(しはん)が出る、末梢(まっしょう)の神経障害が出るなど血管炎の症状がみられます。高血圧、心不全、脳出血、脳梗塞(こうそく)、腹痛、下血なども認められます。
顕微鏡的多発血管炎は結節性多発動脈炎と同様、生命や臓器不全の危険性があるので、専門医の意見を聞いて入院治療を受けることが重要です。早期診断、早期治療が望まれますので、膠原病内科、腎臓内科などを受診します。
診断に重要な検査は、抗好中球細胞質抗体の検索、皮膚・筋肉などの生検、血管造影。区別すべき病気は、他の血管炎および膠原病です。
治療は、結節性多発動脈炎とほぼ同じ治療が行われます。腎臓や肺などの重要臓器に血管炎による障害がみられる場合、入院して、大量の副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)で治療を開始し、以後、血管炎の再燃に配慮しながら薬の量を減らしていきます。同時に免疫抑制剤薬が用いられます。
腎障害が高度に進行してしまった場合は腎不全になり、血液透析が必要となることがあります。治療に反応せず、臓器障害が進行したり、感染症を併発してさらに病状が悪化する危険性もありますので、感染症予防が大切となります。
診断6カ月未満の死亡率が高くなっていて、予後は決してよいとはいえません。感染症、肺出血、腎不全が主な死亡原因です。
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