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拘束型心筋症
拘束型心筋症とは、心臓の筋肉組織である心筋が拘束されたように硬くなって広がりにくくなるため、左心室に血液を満たす上で抵抗が生じ、体が必要とする量の血液を十分に送り出せなくなる疾患。
心筋症は、心筋の伸び縮みがうまく働かなくなり、体が必要とする量の血液を送り出しにくくなる疾患のことをいいます。いくつかの種類がある心筋症の1つである拘束型心筋症は、拡張型心筋症のように左心室が拡張することはなく、肥大型心筋症のように心筋が肥大することもありません。また、心臓の動きも見たところ正常ですが、左心室の壁が硬くなって広がりにくくなり、進行すると心不全や不整脈などの症状が起こります。
拘束型心筋症は、心筋症の中でも発症例が少ないタイプです。拡張型心筋症、肥大型心筋症とともに、厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されています。
一般に拘束型心筋症という場合は、特発性つまり原因がわからず発症した特発性拘束型心筋症のことを指します。この特発性拘束型心筋症には、2種類の基本的なタイプがあります。
1つのタイプでは、心筋が徐々に瘢痕(はんこん)化した組織に置き換わります。瘢痕とは手術などによってついた傷跡のことで、がんへの放射線療法による皮膚の損傷が原因で起こる場合もあります。
もう1つのタイプでは、異常な物質が心筋内に蓄積したり、心筋内に浸潤したりします。例えば、体内の鉄分が過剰になると、心筋内に鉄分が蓄積します。血球の一種である好酸球が、好酸球増加症候群の人の心筋に浸潤することもあります。
また、拘束型心筋症には、ほかのさまざまな疾患に伴って発症する二次性拘束型心筋症もあります。例えば、通常、体内には存在しないアミロイドと呼ばれる異常な蛋白(たんぱく)質が心筋に蓄積すると、アミロイドーシスという疾患を起こし、発症します。二次性拘束型心筋症でも、発症するメカニズムは多くの場合不明です。
軽症の場合は症状がないこともありますが、病状が進行して心不全を引き起こすと、息切れや動悸(どうき)、むくみ、体がだるいなどの症状が現れます。さらに進行すると、不整脈が起こりやすくなります。
症状は、安静時よりも運動時に起こりやすくなります。安静時に比べて、運動中はより多くの血液が必要になるからで、安静時には十分な血液量を全身に供給できていても、心筋が硬くなり血液を満たす上で抵抗が生じると運動中に体が求める血液の量を送り出すことが困難になり、症状が起こります。
息切れや動悸が頻繁にみられるようであれば一度、病院で診断を受けるようにしたほうがいいかもしれません。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、診察、心電図検査、心臓超音波検査(心エコー)を行います。また、心筋内に蓄積したり浸潤している異常な物質を特定するために心臓MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、心臓カテーテル検査を実施することもあります。
鑑別が重要な疾患には、病態が似ている収縮性心膜炎があります。
循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、特発性拘束型心筋症は原因がはっきりわからないため、拘束型心筋症そのものを治す方法はありません。
二次性拘束型心筋症では基礎疾患を治療することになりますが、この基礎疾患に対しても有効な治療法がないことも多く、中心となる治療は拘束型心筋症によって引き起こされる心不全、不整脈、血栓塞栓(そくせん)症の予防になります。
心不全の治療では、症状がうっ血中心になるため、主に利尿薬を使って、たまった血液の排出を図ります。また、心筋の傷害を軽減するためにアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシン受容体遮断薬を使うこともあります。
不整脈の治療では、心臓が拍動しなくなってけいれんするだけの状態になる心房細動が最も多い不整脈であり、心房細動が出現すると心臓の働きも急速に低下するため、脈拍が上がりすぎないようにある種のカルシウムチャンネル遮断薬、β(ベータ)受容体遮断薬を使います。ジギタリスなどの強心薬も心不全治療と合わせて使用される場合がありますが、副作用に注意が必要です。脈が早くなる心室頻拍などそのほかの重症心不全も発症する可能性があり、必要に応じて抗不整脈薬などを使います。
血栓塞栓症の予防では、心房細動がみられる場合は心臓の中に血の固まりである血栓ができやすくなるため、長期間にわたって血液を固まりにくくする抗凝固療法を行い、塞栓症の防止を図ります。
拘束型心筋症の予後は、基礎疾患によってさまざまです。成人の特発性拘束型心筋症について、海外から5年生存率64%、10年生存率37%という報告もありますが、そのまま日本人に当てはめていいかどうかは不明です。ただ、決して予後は良好といえないため、特に小児の特発性拘束型心筋症の場合は積極的に心臓移植の適応を考慮することになります。
二次性拘束型心筋症の中では、特にアミロイドーシスによるものは不良で、心臓の機能低下が認められてから数年以内、さらに心不全症状が出現してからは半年程度の予後と考えられています。
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