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GAD(全般性不安障害)



不安障害の一種で、慢性的な不安が特徴

GAD(Generalized Anxiety Disorder)とは、不安障害の一種。全般性不安障害とも呼ばれます。

不安障害とは、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それが元で日常生活に支障を来してしまう病気の総称です。

不安障害に数えられる病気の一つであるGADは、以前はパニック障害と一括して「不安神経症」と呼ばれていました。現在では二つに分けて、慢性的な不安に悩まされているなら 「GAD(全般性不安障害)」、急な不安発作を繰り返すなら「PD(Panic Disorder、パニック障害)」という診断名で呼ばれるようになりました。「神経症」という用語も、国際疾病分類などでは正式な診断名として使われなくなりました。

GADの特徴は、慢性的な不安と、それに伴う心と体の症状が長く続くことです。誰もが感じる正常な不安は、はっきりした理由があって、一定の期間だけ続きます。しかし、GADの場合、理由が定まらず、特殊な状況に限定されない不安が長期間続きます。

不安や心配の対象は、家庭生活、仕事、学校、将来、近所付き合い、地震や大雨などの天災、不慮の事故、病気、外国での戦争など、あらゆるものが対象になります。そして、自分ではどうすることもできない事柄についても、必要以上に深刻に悩み、不安や心配をコントロールできなくなって、心や体の調子が悪くなり、日常生活に支障を来してしまいます。

 不安障害の中では一般的で、GADの患者数はPD(パニック障害)の患者数より3~4倍多いとされ、1000人に64人くらいが経験するという報告もあります。まれな病気ではないといえます。

 発症する年齢は10歳代半ばから20歳前後が多く、男女比は1:2で女性に多くみられます。また、精神科にはかなりの時を経て、受診するケースが多いといわれています。

アメリカで行われた調査によれば、一生の間にGADにかかる人の割合(生涯有病率)は3~5パーセント、不安を専門に診ているクリニックでは、全患者の30パーセント程度がGADと診断されており、発病者がかなり多くいる病気であることがわかります。 

一般に、不安障害の原因は心理的な出来事(心因)とされており、GADの場合も、何らかの精神的なショック、心配事、悩み、ストレスなど、精神的原因と思われる出来事を切っ掛けに、いつの間にか発症しているというのが普通です。しかし、切っ掛けが全くないこともあります。過労、睡眠不足、風邪など、身体的な状況が切っ掛けになることもあります。

 性格的には、もともと神経質で、不安を持ちやすい人に多い傾向があります。遺伝的要因や、自律神経の障害なども、発症に影響すると考えられています。

 発病者が訴える症状には、以下のようにさまざまなものがあり、不安と心配を過剰に持つことがいかに、心や体に悪い影響を与えるかがわかります。

身体症状としては、1)頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感、2)そわそわ感、3)もうろうとする感じ、4)めまい感、頭が揺れる感じ、船酔している感じ、5)自分の身体ではないような感じ、6)身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感、7)全身に脈拍を感じる、8)便秘や頻尿、など。

精神症状としては、1)注意散漫な感じ、2)記憶力が悪くなる感じ、3)根気がなく、疲れやすい、4)イライラして、怒りっぽい、5)ささいなことが気になり、取り越し苦労が多い、6)悲観的になり、人に会うのが煩わしい、7)寝付きが悪く、途中で目が覚めやすい、など。

不安に伴ういろいろな身体症状、精神症状に関しては、多くの発病者は身体症状のほうを強く自覚します。どこか体に重大な病気があるのではないかと考え、あちこちの病院で診察や検査を受けるのが常ですが、症状の原因になるような身体疾患はみられません。

 経過は慢性で、日常生活のストレスの影響を受け、よくなったり悪くなったりが続きます。途中から、気分が沈んで、うつ状態を伴ったり、うつ病に移行することもあります。

 GADという病気の名称やその症状については、これまであまり知られていなかったため、医療機関での治療を受けていない人も多いようです。

 また、病院に行っている人の場合でも、自律神経失調症や更年期障害と診断され、GADの発病者としての治療の機会を逃がしていることもあるようです。

発病すると、他の精神科領域の病気、例えば、うつ病、パニック障害、社会不安障害(SAD)などを併発する可能性が高くなるとされておりますので、コントロールできない不安や心配が続き、心や体に不調を来す症状が現れている場合には、早めに精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けてください。

GAD(全般性不安障害)の検査と診断と治療

 精神科や心療内科の医師によるGAD(全般性不安障害)の診断基準には、米国精神医学会編「DSM-(協) 精神疾患の分類と診断の手引」が主に使われます。その基準の核となる部分をまとめると、次のようになります。

(1)仕事や学業などの多数の出来事または活動について、過剰な不安と心配がある。しかし、その原因は特定されたものではない。

(2)不安や心配を感じている状態が6カ月以上続いており、不安や心配がない日よりある日のほうが多い。

(3)不安や心配をコントロールすることが難しいと感じている。

(4)不安や心配は、次の症状のうち3つ以上の症状を伴っている。1)そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう、2)疲れやすい・集中できない、心が空白になってしまう、3)刺激に対して過敏に反応してしまう、4)頭痛や肩凝りなど筋肉が緊張している、5)眠れない、または熟睡した感じがない。

以上の診断基準が使われて、症状と経過から診断が行われます。その人に出ている症状が他の身体疾患や、GAD以外の不安障害や、うつ病などの精神科領域の疾患によるものではないことを確認することも、重要となります。

 身体疾患を除外するために、尿、血液、心電図、X線、超音波など一般内科的検査が行われ、これらの検査で異常が見付からない場合に診断が確定します。

精神科や心療内科の医師による治療法には、大きく分けて薬物療法と精神療法の2つがあります。疾患の本態は不安にありますので、まずは薬を使って、不安をコントロール可能なくらいまで軽くし、さらに精神療法によって、発病者自身が不安をコントロールできるようにしていきます。 

薬物療法では、不安感の軽減を目的に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などが用いられています。ベンゾジアゼピン系は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用があります。うつ症状を合併する場合は、抗うつ薬が用いられます。最近は、パロキセチン(パキシル)に代表される新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が報告されていますが、副作用はあります。

精神療法は、発病の原因がその人の生育歴や性格によっているような場合に重要となり、カウンセリング、認知行動療法、セルフコントロール法などがあります。いずれも無意識に存在している「不安の根源」を探し、そのコントロールを目指すものです。

精神療法は、薬物療法と違って副作用が少ないのが利点ですが、本人の努力がかなり必要なことや主治医との相性などもあり、効果にバラツキが出る場合があります。症状の完全な消失を求めるのでなく、少しでもよくなったら、そのぶん前向きに生活していく態度が、本人にとって肝要です。

一方、周りに発病者がいる人にとっては、発病者が不安や心配を周りに訴えることが多く、その訴えの中には病気ではない人からみるとナンセンスに感じられることもあるので、じっくりと訴えを聞いてあげることが難しい時もあるかと思います。しかしながら、不安や心配に伴って心や体にも不調が長く続いていることを理解して、温かい気持ちで支えてあげてください。

また、発病者と思われる人が周りにいて、しかも治療を行っていないようでしたら、単なる心配性と見なさないで、なるべく早く精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けるよう勧めてください。

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