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QT延長症候群



突然、脈が乱れて不整脈発作や失神発作を起こし、突然死に至ることもある疾患

QT延長症候群とは、突然、脈が乱れる不整脈発作や失神発作を起こしたり、時には突然死に至ることもある疾患。

医療機関において、心臓の動きをコントロールしている電気刺激の変化を記録する心電計で検査をすると、心電図に現れるQTと呼ばれる波形の部分の間隔(QT時間)が、正常な状態の心臓に比べて長くなることから、この疾患名が付けられています。

QT延長症候群には先天性(遺伝性)と後天性(二次性)とがありますが、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群は、心臓の筋肉である心筋細胞の収縮と弛緩(しかん)に関係する遺伝子に異常があるために起こります。一方、比較的年齢が高くなってから指摘される後天性QT延長症候群は、薬剤使用や、脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈などに伴って起こり、遺伝子の異常もかかわっています。

先天性QT延長症候群は、常染色体優性遺伝を示す遺伝性の疾患で、性別に関係なく50%の確率で親から子供に遺伝しますが、症状には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても必ずしも不整脈発作の症状が現れるとは限りません。まれですが、先天性聾(ろう)と呼ばれる生まれ付きで両耳の聴力障害を伴うものは、常染色体劣性遺伝を示します。

心臓は収縮と弛緩を絶えず繰り返していますが、この先天性QT延長症候群では、心筋細胞が収縮して全身に血液を送り出した後、収縮前の状態に戻る時間が延長するために、心筋細胞が過敏になって不整脈発作が起こりやすくなります。

先天性QT延長症候群の原因は現在、2つが考えられています。1つは、心筋細胞にあるイオンチャネルと呼ばれる経路の異常です。心臓が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すには、心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分が1分間に60~80回発生させている電気刺激が正しく伝えられることが、重要になります。電気刺激を正しく伝えるため、心筋細胞はイオンチャネルという経路を使ってナトリウムやカリウムなどのイオンを出し入れしていますが、このイオンチャネルが正常に働かなくなり、電気刺激が正しく伝えられなくなると、脈が乱れる不整脈発作が起きやすくなります。

イオンチャネルの異常は、イオンチャネルを作る際に使った設計図の誤り、すなわち遺伝子の異常で起こります。現在では4種類のイオンチャネルに遺伝子の異常が見付かっていますが、この4種類のイオンチャネルの遺伝子に異常が見付からない場合も多く、ほかの種類のイオンチャネルにも異常があるのではないかと考えられます。

もう1つの原因は、心臓に指令を出す交感神経の異常です。交感神経は、背骨の横に左右1本ずつあり、正常では左右の交感神経から収縮と弛緩を繰り返すよう心臓に送られる指令は、バランスが保たれています。先天性QT延長症候群では、左側の交感神経の働きが右側より勝っており、バランスが崩れています。交感神経のアンバランスがなぜ起こるかは、わかっていません。

その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2500〜5000人に1人程度の発症者が存在すると推定されています。

先天性QT延長症候群は原因遺伝子により、不整脈発作の切っ掛けや治療薬の効き方が変わってきます。重症度には個人差が大きく、遺伝子に異常があっても症状が現れない場合があることも知られています。

症状としては、不整脈発作による動悸(どうき)、立ちくらみ、気分不快や、失神発作、けいれん発作などがあります。発作の多くは、短時間で自然に回復しますが、心室期外収縮や、トルサード・ド・ポアンツと呼ばれる多形性心室頻拍から、心室細動といわれる不整脈にまで進行して回復しない場合は、突然死に至ります。

また、失神発作、けいれん発作は、てんかんと間違えられることもよくあります。先天性聾、四肢の脱力、身体奇形などを伴うものもあります。

一方、後天性(二次性)QT延長症候群は、元々のQT時間は正常よりも長め、または正常ですが、薬剤の使用や、低カリウム血症や低マグネシウム血症によって生じる電解質異常、脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈などに伴って、QT時間が延長して発症します。

QT時間を延長させる可能性がある薬剤は、抗不整脈薬、抗生剤(マクロライド系)、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、向精神薬、抗うつ薬、抗潰瘍(かいよう)薬、脂質異常症治療薬など多岐にわたっています。同じ薬剤でも著しくQT時間が延長する人と、延長しない人がいることから、後天性QT延長症候群でも先天性の遺伝子の異常もかかわっていると考えられます。

後天性QT延長症候群の症状も、不整脈発作、失神発作、突然死で、その原因は多形性心室頻拍、心室細動などの悪性不整脈の出現です。

抗不整脈薬と、日常生活における発作誘因の回避で、突然死に至るような悪性不整脈はかなり予防できます。正しい診断がとても大切ですので、小児循環器科、循環器科などの不整脈の専門医を受診することが勧められます。

QT延長症候群の検査と診断と治療

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、QT延長症候群であるかどうか、もしQT延長症候群であれば先天性、後天性のいずれであるか、先天性ならどのような型の遺伝子異常があるか、また現在危険な状態にあるかどうかなどについて、各種の検査を行います。

発作の既往歴、家族歴などから先天性QT延長症候群が疑われた場合は、心電図でQT時間の延長とT波と呼ばれる波の形の変化を確認します。検査の際に、運動や薬剤による負荷をかけることで、QT時間の延長がよりはっきりすることがあります。

遺伝子診断は、治療薬の選択や適切な生活指導のために有効です。近年では、原因遺伝子の型のみではなく、各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることがわかってきており、QT時間や遺伝子型、あるいは変異部位に基づいて、リスク評価を行い、治療法を決定します。

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、先天性先天性QT延長症候群の場合、不整脈発作の予防のためにβ(ベータ)遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬などの抗不整脈薬を内服します。

内服薬の効果がない場合は、植え込み型除細動器(ICD)、交感神経切除術などによる治療を考慮します。

植え込み型除細動器(ICD)は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置で、通常、左の胸部に植え込みます。鎖骨下の静脈に沿ってリード線を入れ、心臓の内壁に固定します。

交感神経切除術は、心臓に指令を送る左側の交感神経を首から胸にかけて切断します。

後天性QT延長症候群の場合は、薬剤の内服や電解質異常などの原因があるので、それらを取り除くとQT延長が短縮して正常化し、症状はよくなります。

脈が正常よりも極端に遅くなる徐脈性不整脈を起こしている場合は、脈を正常まで速めて発作が起こりにくいようにするため、恒久型ペースメーカーの植込みによる治療を考慮します。

ペースメーカーは、徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整する装置で、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。

日常生活においては、不整脈発作の誘因となる激しい運動や精神的興奮、驚愕を避ける、発作を誘発しやすい薬剤は服用しないなどの注意が必要です。

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