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安静時狭心症



就寝中など比較的安静にしている際に起こる狭心症

安静時狭心症とは、就寝中や早朝など比較的安静にしている際に発生する狭心症。
 狭心症は、心臓の表面を取り巻く血管である冠(状)動脈の狭窄(きょうさく)などによって、心臓の筋肉である心筋に十分な血液が送られなくなり、心筋が一時的な酸素欠乏になった状態のことです。
 狭心症にはいろいろなタイプがありますが、よく知られているタイプは、一般的にみられる労作(ろうさ)性狭心症と、安静時に発生する安静時狭心症の2つです。
 安静時狭心症は、心不全などを合併することも多く、一般的にみられる労作性狭心症よりも重症です。
 労作狭心症は、動脈硬化などで冠動脈が狭くなっている際に、過度のストレス、精神的興奮、坂道や階段の昇降運動といった一定の強さの運動や動作が誘因となり、心臓の負担が増すことで心筋が一時的な酸素欠乏になって起こるものです。
 安静時狭心症の中には、労作性狭心症のように冠動脈の狭窄を伴うものと伴わないものがあります。
 冠動脈の狭窄がないにもかかわらず狭心症が起こる機序としては、冠攣縮(かんれんしゅく)という現象が関与すると考えられています。冠攣縮では、ストレスや迷走神経の刺激などによって冠動脈がけいれんを起こし、内腔(ないくう)が狭くなるために血流が低下して狭心症が起こります。冠攣縮は運動や動作とは無関係に起こるために、安静時狭心症の大部分は冠攣縮による狭心症といわれています。
 冠攣縮による狭心症のうち、深夜から早朝にかけて就寝中に発生し、心電図波形のうちで、ST部分が通常より著名に上昇した状態を来たすものを異型狭心症と呼んでいます。
 異型狭心症は日本人によくみられ、血管攣縮性狭心症とも呼ばれ、冠動脈に明らかな動脈硬化はないのに、血管がけいれんして内腔が極端に狭くなるために胸痛発作が起こります。
 深夜から早朝の就寝中や安静時に胸痛発作が起こりやすいのが特徴ですが、早朝の運動時にも起こり、喫煙、過呼吸、ストレス、不眠やアルコール過飲が胸痛発作の引き金になります。胸痛に冷汗や嘔吐(おうと)、失神を伴う時があり、重症の不整脈や心筋梗塞(こうそく)を起こして突然死することもあります。

安静時狭心症の検査と診断と治療

 循環器科、循環器内科の医師による診断では、検査によって症状を特定します。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、心臓超音波検査(心エコー)、心臓カテーテル検査、薬剤負荷カテーテル検査などを行います。いずれの検査も、痛みは伴いません。
 ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、自覚症状のない血管攣縮が出ていないかなどがわかります。
 心臓超音波検査は、心臓の大きさ、心筋の動き、弁の機能などを評価できます。
 心臓カテーテル検査は、カテーテルという細長い管を腕や大腿(だいたい)の動脈より挿入して血管を通して心臓まで到達させ、さらに大動脈起始部より出ている冠動脈にカテーテルを挿入して造影剤を注入することで、冠動脈の状態の詳細を把握することができます。
 薬剤負荷カテーテル検査は、冠動脈造影剤に加え、冠動脈のけいれんを誘発するアセチルコリン、エルゴノビンといった薬剤を直接冠動脈に注入し、症状、心電図変化、血管造影所見から診断を行います。診断制度は80~90%と高い一方、攣縮の活動性の低い人では誘発されないこともあります。また、攣縮の活動性には日内変動があり、一般的に深夜から早朝に生じることが多いため、朝一番に施行することが多くなります。
循環器科、循環器内科の医師による治療では、薬剤負荷カテーテル検査や発作時心電図により異型狭心症と診断された場合、原則として薬物治療となります。カルシウム拮抗(きっこう)薬、ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、ニコランジルなどの冠血管拡張剤が主体です。
 安静時狭心症の中で冠動脈の狭窄を伴う場合は、経皮的冠動脈形成術、冠動脈バイパス手術などの外科的治療も行われます。
 また、日常生活でも血管攣縮の誘発因子を避けることが必要です。誘発因子として、心身の疲労、ストレス、喫煙、精神的興奮、寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏、アルコールなどがあります。
 安静時狭心症のリスクを低めるには、食事が役立ちます。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分は、血栓を溶かす作用があり、動脈硬化を予防します。タマネギに含まれる硫化アリルも、血液をサラサラにする作用があります。
 血管の弾力性を保つ蛋白(たんぱく)質、抗酸化作用のある緑黄色野菜と大豆製品も、必要不可欠です。 

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