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アキレス腱付着部炎
アキレス腱(けん)付着部炎とは、アキレス腱と踵(かかと)の骨が付着している部位の周辺に痛みが現れる疾患。アキレス腱付着部症とも呼ばれます。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とヒラメ筋の腱部分で、踵の骨である踵骨(しょうこつ)の後上面に付着しており、足首を足底側に曲げる働きを担っています。
アキレス腱付着部炎を発症すると、足首を上向きに曲げた際に特に強い痛みが生じます。進行すると、安静時にも痛みが続くようになります。また、踵の部分が深い靴を履くと、症状が悪化する場合があります。痛みを生じている部位がはれることもあります。
アキレス腱と踵骨が付着している部位には強い牽引(けんいん)力が慢性的に加わり、その少し上ではアキレス腱と骨が接しているため、互いに圧迫力を受けています。これらの力が繰り返し加わることで、アキレス腱付着部に炎症が起きて変性が生じ、痛みを起こします。病状の進行に伴って、肉芽形成、石灰化、骨化などの組織の変化が現れ、アキレス腱付着部に突き出た棘(とげ)状の骨が認められるようになったりします。
発症の切っ掛けは、踵骨や足の形の異常、仕事やスポーツなどによるアキレス腱の使いすぎ、ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下、足に合っていない不適切な靴の利用などです。
階段を上り下りした時や走った時に踵に痛みが出る、あるいはアキレス腱付着部付近を押さえたり、つまんだ時に痛みが感じられる、歩行時に靴の踵の後ろを支える部分(ヒールカウンター)の上端より低い位置の踵後方に痛みが出るという人は、アキレス腱付着部炎を疑い、早目に整形外科、形成外科、ないし足の外科を受診することが勧められます。
整形外科、形成外科、足の外科の医師による診断では、アキレス腱付着部を押さえた時の圧痛またはつまんだ時の把持痛が認められ、階段の上り下りや歩行、走行などでアキレス腱付着部に痛みが出ることが認められた場合で、踵骨の骨折やアキレス腱断裂が除外された場合に、アキレス腱付着部炎と判断します。
触診中に足関節を手で背屈させると、通常痛みは増悪します。X線(レントゲン)検査を行うと、アキレス腱付着部に突き出た棘状の骨がX線像に認められることもあります。
再発するアキレス腱付着部炎がある場合は、脊椎(せきつい)関節症によって引き起こされることがあるので、病歴を問診し、検査を行います。
整形外科、形成外科、足の外科の医師による治療では、症状の段階に応じて保存的治療、薬物療法、手術療法を行います。
保存的治療では、足の形に合った靴を履くようにしたり、足底挿板(中敷き)を靴の中に装着したりします。アキレス腱のストレッチも行います。
薬物療法では、痛みを柔らげるために、非ステロイド系消炎鎮痛薬の外用剤や経口剤を用います。痛みが非常に強い場合には、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の局所注射を行うこともありますが、アキレス腱の強度の低下や、アキレス腱断裂を招く恐れがあり注意が必要です。
手術療法では、重症でアキレス腱付着部が石灰化、骨化した場合に、アキレス腱が変形した部分や、踵骨の出っ張りの一部を除去します。最近では、内視鏡による手術が行われます。
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