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愛情遮断性低身長
愛情遮断性低身長とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、成長ホルモンの分泌が低下して身長が伸びない状態。精神社会性低身長症、精神社会的小人症とも呼ばれます。
低身長は、さまざまな原因で身長が伸びない状態のことで、年齢別平均身長より20%、あるいは標準偏差(SD)より2SD以上低い場合を目安としており、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまります。
愛情遮断性低身長は、乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが生じ、年齢別平均身長を著しく下回ると考えられています。
子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあり、栄養不足も年齢に見合った身長の伸びを止めてしまう原因の1つになります。身体的な成長の遅れだけでなく、情緒の発達、言語や知的能力の発達の遅れを生じたり、行動異常を示すこともあります。
入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。
母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。夫婦仲が悪く、家庭環境の雰囲気が悪いことが原因になることもあります。
栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。
愛情不足の養育や、より重大な問題がある虐待やネグレクト(育児放棄)が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。
養育者が子供の愛情遮断性低身長に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。
小児科の医師による診断では、過去から現在までの身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。
小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。
また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。養育者は子供に対してストレスを与えていないつもりでも、気付いていない家庭の習慣が子供のストレスになっている場合もあります。
子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。
しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。
母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。
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