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遺伝性大腸がん



遺伝的要因が強く影響して発症する大腸がん

遺伝性大腸がんとは、血縁者の中にがんにかかる人が何人もおり、遺伝的な要因が強く影響して発症したと考えられる大腸がん。

がんなどの腫瘍(しゅよう)は、遺伝的な要因である親から受け継いだ遺伝子の情報と、環境的な要因である食生活、生活習慣、生活環境などが関係し合って発症すると考えられています。大腸がん全体の約5〜10パーセントが、遺伝性大腸がんであると見なされています。

この遺伝性大腸がんには、家族性大腸腺腫(せんしゅ)症、リンチ症候群など、いくつかの種類があります。

家族性大腸腺腫症は、遺伝子の変異が原因で、10歳代の半ばごろから、大量のポリープが大腸にできる疾患。家族性大腸ポリポーシスとも呼ばれます。

ポリープと呼ばれるいぼのようなものの中でも、良性のものは腺腫と呼ばれますが、大腸に数百個から数千個という多数のポリープができるのが特徴です。

2分の1の確率で親から子に常染色体優性遺伝し、5番目の染色体にあるAPC遺伝子の異常が原因で起こります。しかし、一部はAPC遺伝子以外のMUTYH遺伝子の異常によって起こり、常染色体劣性遺伝を示します。

ポリープの発生は多くの場合学童期に始まりますが、ポリープの数が数十個と少ない人や、成人以後にポリープが多発する人もいます。

ポリープが大きくなり、1センチ以上になると、3、4個に1個はがん化します。

この家族性大腸腺腫症では、20歳代ごろから大腸がんになる人が出始め、40歳までに半数、60歳までには90パーセントが大腸がんになるとされます。

症状としては、ポリープが多発するために、血便が出たり、貧血になったりすることがあります。また、下痢や便秘などの便通異常になることもあります。大腸以外にも、胃、十二指腸、小腸、骨、軟部組織、目など全身の臓器に、ポリープあるいは腫瘍状病変ができることがあり、それぞれの症状を現すことがあります。腹腔(ふくくう)内にデスモイド腫瘍が発生すると、腸閉塞(へいそく)や腸管穿孔(せんこう)の原因となることがあります。

大腸にポリープが一般に100個以上ある人は、家族性大腸腺腫症が疑われます。ポリープの数が100個以下でも、近親者に大腸ポリープが多発している人がいる場合、家族性大腸腺腫症が疑われます。

大腸切除を行わなければ、将来ほぼ100パーセント大腸がんができます。血便などが現れた場合は、消化器科、消化器外科、外科、あるいは肛門(こうもん)科の医師を受診します。

一方、リンチ症候群は、家族性大腸腺腫症とは異なってポリープは多くないものの、大腸がんや子宮体がん、胃がん、腎盂(じんう)がん、尿管がんなど多種類のがんが発生する疾患。遺伝性非ポリポーシス大腸がんとも呼ばれます。

常染色体優性遺伝し、性別に関係なく、子供に50パーセントの確率で遺伝します。遺伝子の変異を持つ子供では、約80パーセントが生涯の間に大腸がんを発症します。

大腸がん全体の約2〜5パーセントが、リンチ症候群であると見なされ、最も頻度が高い遺伝性腫瘍の一つとされています。

原因としては、遺伝子を含むDNA(デオキシリボ核酸)が細胞分裂の際に複製される時に起きた間違いを見付けて、直すミスマッチ修復遺伝子(MSH2・MLH1・MSH6・PMS1・PMS2)の生殖細胞系列が変異し、その働きがうまく行われないことによります。

リンチ症候群は、比較的若年の50歳未満で発症します。平均発症年齢は43歳〜45歳と考えられ、20歳未満での発症は比較的少数です。

遺伝性大腸がんの検査と診断と治療

消化器科などの医師による家族性大腸腺腫症の診断では、食事制限と下剤により大腸を空っぽにして、肛門から造影剤を入れてX線写真を撮る注腸検査と、下剤で大腸を洗浄し肛門から内視鏡を挿入して直接大腸の内腔を観察する大腸検査を行います。大腸内視鏡検査は、挿入技術の進歩と器械技術の進歩により、苦痛も少なくかつ安全にできるようになっています。

内視鏡検査で直接大腸の内側を観察し、ポリープを採取して組織検査を行い、多数の腺腫が確認されれば、家族性大腸腺腫症と確定できます。できれば遺伝子検査まで行って、APC遺伝子の異常を確認しておくと、治療法の選択や近親者の早期診断に役立ちます。

また、胃・十二指腸のX線および内視鏡検査、骨X線検査、眼底検査などを行い、大腸以外の病変をチェックしておく必要があります。

消化器科などの医師による治療では、大腸がん合併の有無を問わず、大腸を切除し、小腸を肛門につなげる手術を基本とします。

近親者の調査によって無症状で発見された場合、大腸の予防的手術は遅くても20歳代前半までに行うべきとされています。

一方、大腸以外の腫瘍状病変に対しては、がん化の危険性は極めて低いので、予防的手術の必要はありません。

消化器科などの医師によるリンチ症候群の診断では、ミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列の変異が決め手となりますが、家族歴から強くリンチ症候群が疑われる場合でも必ず変異が見付かるわけではありません。

大腸がんや子宮体がんを若い年齢で発症する可能性が高いため、早い時期から大腸内視鏡検査や、婦人科の受診による定期的な検診を開始することが大切となります。また、胃がんや腎盂がん、尿管がんの検診も行います。

発症前の大腸全摘出術は一般に行われていませんが、大腸がんを発症した際には多発がんの発症を視野に入れ、大腸亜全摘出術を検討することもあります。

また、一度がんを発症して治療した後も定期検診を行い、新たに発症するかもしれないがんの早期発見に努める必要があります。

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