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泉熱



湧き水や井戸水を飲用した後に発熱、発疹、腹痛、下痢などが現れる感染症

泉熱(いずみねつ)とは、発熱、全身性の発疹(ほっしん)、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢を主症状とする感染症。疾患名は、1929年に独立疾患として初めて報告した泉仙助の姓に由来します。

猩紅(しょうこう)熱(A群溶血性連鎖球菌感染症)に似た症状を示すところから異型猩紅熱といわれたこともありますが、猩紅熱とは全く別の疾患です。原因となる病原体は、偽結核性エルシニア菌(エルシニア・シュードツベルクローシス)で、ネズミ、リスなどの、げっ歯類に結核様病変を起こすことで知られていた菌であり、近年になって人への感染ケースが明らかにされました。

泉熱は5~9歳の学童期に最も多くみられ、90パーセントは19歳以下にみられます。春と秋に多発する傾向があり、集団発生することが多いのですが、散発することもあります。ただし、1950年代まで日本の各地でその流行がみられましたが、近年はまれになっています。

病原体を保有するネズミ、リスなどの糞尿(ふんにょう)に汚染された湧(わ)き水、井戸水などの生水や食物の摂取で感染し、潜伏期は4~10日。急に38〜40度の発熱があり、頭痛、食欲不振が起こります。翌日ごろから、部位によって濃淡のある赤い発疹が全身に現れますが、肘(ひじ)、手首、膝(ひざ)、足首などに密集して出る傾向があります。発疹はかゆく、舌がイチゴ舌になることもあります。

発熱、発疹とも5日間ぐらい続きます。発疹が消えると、熱も37度くらいまで下がります。これで治ることもありますが、発熱は二峰性の熱型のことが多く、いったん下がって一両日後に再び38~39度に上がり、1~2週間続いてから解熱してきます。

この高熱期には、じんま疹のような発疹や結節性紅斑(こうはん)という発疹が、腕や下肢に現れることがあります。また、右下腹痛や1日数回の軽い下痢が多いのも、この泉熱の特徴です。

2度目の解熱の後、さらに3度目の発熱が数日続くこともあります。経過が長くても合併症を起こすことは少なく、予後は良好で、生命にかかわったりすることはありません。

湧き水や井戸水を飲用した後に発熱、発疹、腹痛、下痢などが現れた場合、特に秋と春に現れた場合は、泉熱を疑う必要があります。小児科、あるいは循環器科、泌尿器科を受診します。

泉熱の検査と診断と治療

小児科、循環器科、泌尿器科の医師による診断は、便の低温増菌培養、血液の抗体検査によって行います。通常の細菌感染症と同じで、白血球の増加、炎症反応上昇がみられます。

医師による治療では、整腸剤を投与したり、輸液によってブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。抗菌剤を投与しても効果は不十分で、テトラサイクリンやクロラムフェニコールなどの抗生物質が効きます。発熱に対しては、必要に応じて解熱剤を内服します。皮膚のかゆみに対しては、必要に応じて抗ヒスタミン薬の内服、または軟こうを使用します。

家庭看護のポイントは、高熱時に安静にさせておくことです。高熱が続いても発症した学童はそれほど苦しい思いはしませんので、床に寝かせ、気持ちのいい程度に頭を冷やします。腹痛が強ければ、右下腹部を冷湿布します。寝起きは本人の気分に任せていいのですが、熱が長引きますので、医師の指示を守って下さい。

予防法としては、この病原菌である偽結核性エルシニア菌を持っているネズミの糞(ふん)や尿で汚染された湧き水や井戸水、簡易水道水など消毒不十分な水の飲用、同様に汚染された食物の摂取で感染しますから、家庭ではネズミの駆除と飲食物の保管に注意します。

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