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炎症性腸疾患



主として消化管に原因不明の炎症を起こす慢性疾患の総称

炎症性腸疾患とは、主として消化管に原因不明の炎症を起こす慢性疾患の総称。通常の食中毒などと異なり数日でよくなりことはなく、長期に渡ってよくなったり悪くなったりしながら症状が続きます。

適切な治療を受ければ通常の生活を送れますが、完全に治ることはなく、生活が大きく犠牲になるのが炎症性腸疾患の特徴です。具体的には、クローン病と潰瘍(かいよう)性大腸炎の2疾患からなります。

クローン病は腹痛と下痢が続く原因不明の慢性疾患

クローン病は、小腸の最後の部分に当たる回腸末端を中心に、小腸のほかの場所、大腸から口腔(こうくう)に至る消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍を生じる慢性の疾患。大腸だけが侵される潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。

遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、はっきりとした原因は解明されていません。食生活の欧米化によって、日本でも20歳代を中心に発症者数が増えており、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因の1つと考えられています。

1932年に、アメリカの内科医ブリル・バーナード・クローンらによって限局性回腸炎として報告され、後に病名は改められましたが、回腸末端から盲腸にかけての回盲部に好発する点は確かです。病変が小腸のみにある小腸型、大腸のみにある大腸型、両方にある小腸大腸型に分類されます。日本では、いわゆる難病として厚生労働省特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。

主な症状は、腹痛、下痢。進行すると、体重減少、発熱、貧血、全身倦怠(けんたい)感がみられます。また、腸管が部分的に非常に狭くなることが多く、そのため腹痛はなかなか軽快しません。

血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断が付かないことがあります。口腔粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔(じ)、特に痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)といわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。

また、消化管以外の症状として、関節炎、結節性紅斑や壊疽(えそ)性膿皮症などの皮膚症状、ぶどう膜炎などの眼症状を合併することがあります。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に多数の潰瘍ができ、再発しやすい難病

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に多数の浅い潰瘍ができ、出血する疾患。クローン病と同じく、厚生労働省から特定疾患の一つに指定されています。

最近、日本でもだんだん増えてきた大腸の慢性の炎症で、20歳代、30歳代で発症する人が多く、子供や50歳以上の人でも起こり、男女差はありません。日本では、人口10万人当たり2〜3人くらいで、毎年おおよそ5000人増加していますが、欧米では日本の2〜3倍多いとされています。

原因については、まだよくわかっていません。 細菌やウイルスの感染、ある種の酵素の不足、ストレス、体質が関係しているといわれ、近年では自己免疫異常説がかなり有力です。

私たちの体には、細菌などの有害なものを排除する免疫の仕組みがあります。この免疫の仕組みは腸の中でも働いていて、食べ物が腸を通過する際には、栄養分のように体に必要なものだけを腸の粘膜から吸収し、不要なものや有害なものは吸収せずに、そのまま腸から通過させて便として排出します。 ところが、免疫機構の異常が大腸に生じると、不要なものまで腸の粘膜から吸収されるようになる結果、大腸の粘膜に炎症が起こって潰瘍ができると考えられています。

また、潰瘍性大腸炎が増加している背景には、大腸がんと同じように、食生活の欧米化、特に脂肪の多い食事の取りすぎがあると推測されます。

最初、病変が直腸にできる直腸炎型として起こり、直腸からS状結腸に渡って病変が広がって直腸S状結腸炎型となります。さらに、下行結腸へと広がる左側大腸炎型となり、横行結腸から上行結腸へと進んでいき、全大腸炎型になります。直腸炎型は最も軽く、全大腸炎型が最も重症です。

潰瘍性大腸炎の主な症状は、腹痛と血便。最初は腹痛と下痢で始まり、次第に下痢便に血液が混じって血性下痢になります。直腸の一部のみに病変が限られている時は、排便の際に少量の出血がみられる程度のため、内痔核からの出血とはっきり区別が付けにくいこともあります。

直腸やS状結腸に強い病変が起こると、渋り腹という状態になり、排便した後もすっきりせず、何回でもトイレに行きます。

腹痛は、左下腹部に起こることが多く、特に排便の前に強くて、排便後は軽くなって消失します。そのほか、腹部のはれぼったい感じ、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)などが起こってくることもあります。体温の変化は、最初は特にないものの、炎症が進んでくると、発熱するようになります。

さらに重症になってくると、1日のうち、何回も血性下痢が起こり、食欲不振と体重減少が生じます。

この潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症のほかにも、いろいろな合併症を引き起こしやすい疾患で、腸の局所的な合併症と、全身的な合併症とがあります。

局所的な合併症として、痔核、痔瘻、肛門周囲膿瘍などの直腸と肛門の疾患や、炎症の結果として、大腸の内腔が狭くなる大腸狭窄(きょうさく)、潰瘍が深くえぐれる大腸穿孔(せんこう)を起こしたりします。

大出血や、大腸が急にまひして拡張する中毒性大腸拡張症などを合併することもあります。そのほか、血液中の蛋白(たんぱく)質が胃腸から漏れ出る蛋白漏出性胃腸症などを起こして、栄養障害の引き金になることもあります。

全身的な合併症としては、出血に伴う貧血、結膜炎や虹彩(こうさい)炎などの目の疾患、口内炎や重い皮膚炎、関節炎などがあります。重症の潰瘍性大腸炎では、肝炎や肝硬変、膵炎(すいえん)といった内臓の疾患を合併することもあります。

症状の経過によって、潰瘍性大腸炎は再発寛解(かんかい)型、慢性持続型、急性電撃型、初回発作型に分けられます。

再発寛解型は、一時的によくなったり、再発したりを繰り返すタイプ。慢性持続型は、病状がずっと慢性的に続くタイプ。急性電撃型は、最も重症で突然に病状が悪化するタイプ。初回発作型は、1回しか起こらず、直腸だけに限局して軽く、進行しないタイプ。

一般に、病変に侵された大腸の範囲が広いほど予後が悪く、合併症も多くなります。

炎症性腸疾患の検査と診断と治療

クローン病の検査と診断と治療

クローン病をいったん発症すれば、急性期は家庭で自分でコントロールできる疾患ではありません。まれな難病ですので、胃腸科専門医の適切な治療を受けることが大切です。

クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜の中に潰瘍やびらんが飛び飛びにみられます。また、縦走潰瘍といわれる消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍が特徴的で、組織を顕微鏡で見ると非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(にくげしゅ)といわれる特殊な構造がみられます。大腸内視鏡検査、小腸造影検査、上部消化管内視鏡検査などを行い、このような病変が認められれば診断がつきます。血液検査では炎症反応上昇や貧血、低栄養状態がみられます。

根本的治療法はありませんが、薬物療法として、5—アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。食べ物が原因の1つとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白質を含まない流動食を開始します。成分栄養剤は、栄養状態改善のためにも有効です。

炎症が改善し普通食に近い物が食べられるようになっても、脂肪の取りすぎや食物繊維の多い食品は避けます。

腸に狭窄を生じたり、腸管と腸管、腸管と皮膚などがつながって内容物が漏れ出てしまう瘻孔を生じたり、腸閉塞、穿孔、膿瘍などを合併したりした場合、内科的治療の効果が期待できないため手術が必要となることがあります。

最近、抗体療法である抗TNFα(アルファ)抗体製剤(レミケード)が日本でも使用可能となり、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合に明らかな効果が認められています。対症療法として、止痢薬、鎮痙(ちんけい)薬などを使用します。免疫抑制薬(アザチオプリンなど)を使用することもあります。

長期に渡って慢性に経過する疾患であり、治療を中断しないことが大切です。治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。

潰瘍性大腸炎の検査と診断と治療

血便や下痢を起こす疾患は、潰瘍性大腸炎のほかにも、急性腸炎やがんなどいろいろあります。自分の判断で安易に下痢止めや止血剤を使うと、かえって症状をひどくする危険があります。消化器科の専門医を受診して、内視鏡検査などをした上で適切な治療を受けるようにします。潰瘍性大腸炎の合併症も早期に発見できれば、長引かせずに治療することが可能になります。

医師による診断のための検査では、大腸のX線検査が重要です。腸管を下剤で完全に空にした状態で、肛門から造影剤と空気を入れてX線撮影するもので、大腸の粘膜の凹凸、びらん、潰瘍などが描写され、病変の範囲や、程度を知ることができます。次いで、大腸内視鏡検査によって、より詳細な所見を捕らえ、診断を確実にします。

潰瘍性大腸炎は原因がはっきりしないため、決定的な治療や予防はまだできないのが現状です。対症療法としては、まず精神的、肉体的な安静を保ち、消化吸収がよく、栄養価の高い食事をとります。豆腐や白身の魚、鶏のささ身などは最適です。

炎症がひどい時には、脂質の多い食品や、繊維質の多い食品は避ける必要があります。脂質の多い食品は胃腸の負担を増大させますし、繊維質が多い食品は便の量が増えて、大腸の粘膜の傷が刺激されやすくなるからです。また、出血を伴う場合は、わさび、からし、こしょうなどの刺激物や、アルコール類のように血管を拡張させるものも控えるようにします。

薬物療法としては、軽症ではサラゾスルファピリジンというサルファ剤を内服薬、または座薬として用います。サルファ剤は、特効的に効果を発揮することがあります。中等症では副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の内服薬、座薬が用いられます。重症では抗生物質、輸液、輸血が必要なこともあります。中等症、重症では、入院治療を要します。

急性電撃型の場合、内科的な治療だけでは無理なため、手術が必要です。全大腸炎型で生命に危険があると判断された場合も、手術が行われます。全身に及ぶ合併症の場合には、消化器科の専門医に加えて、眼科、皮膚科、整形外科などの多くの専門医が協力して、治療に当たることになります。

この潰瘍性大腸炎は、一時的に快方へ向かっても、しばしば悪化します。精神的なストレスや不安感が引き金になることが多く、しばしば試験勉強などで悪化したり、暴飲暴食で悪化することも少なくありません。

従って、十分に睡眠をとることと、食事を規則正しくして、過労を避け、精神の安定に努めます。いずれにしても長い経過をとる疾患なので、療養にもそれだけの時間がかかります。

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