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安定ヨウ素剤(ヨウ素剤)



体内被曝による甲状腺がんや、甲状腺機能低下症を防ぐ効果がある薬

安定ヨウ素剤とは、放射性物質の一種であるヨウ素が体内の甲状腺(こうじょうせん)に取り込まれるのを防ぐ薬。体内被曝(ひばく)による甲状腺がん、甲状腺機能低下症を防ぐ効果があります。

ここでいう安定ヨウ素剤とは、放射性ではないヨウ素を製剤した医薬品ヨウ化カリウムの丸薬、および内服液を指します。

そもそも、ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分として、必須の微量元素です。甲状腺にはヨウ素を取り込んで蓄積し、それを用いてホルモンを合成するという機能があるため、原子力発電所などの事故で環境中に放出された放射性ヨウ素が呼吸や飲食により体内に吸収されると、甲状腺に選択的に集積し、甲状腺組織内で一定期間放射線を放出し続けます。

その結果、甲状腺障害が起こり、比較的低い線量域では甲状腺がんを、高い線量域では甲状腺機能低下症を引き起こします。これらの障害を防ぐために、放射性ヨウ素を取り込む前に甲状腺をヨウ素で飽和しておき、放射性ヨウ素が入り込むのをブロックするのが、安定ヨウ素剤を服用する目的です。

安定ヨウ素剤の効果は服用時期に大きく依存し、一定線量以上の放射性物質にさらされて、放射性ヨウ素を吸入することが予想される直前の服用が最も効果的。放射線にさらされた後も、6時間以内の服用なら効果は大きいとされます。24時間以上経過すると、すでに甲状腺に放射性ヨウ素が集積しているので効果は薄まります。

なお、安定ヨウ素剤の効果は、放射性ヨウ素の摂取による内部被曝の低減に関してのみ。安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺以外の臓器への内部被曝や希ガスなどによる外部被曝に対して、放射線の影響を防護する効果は全くありません。

40歳以上では甲状腺がん発症のリスクが低いため、服用は40歳未満が対象。安定ヨウ素剤の効果が1日は持続することが認められていることから、1日1回の服用で十分です。2日目に安定ヨウ素剤の服用を考慮しなければならない状況では、避難を優先させるべきです。

幼ければ幼いほど発がんの危険性が高まるため、新生児、乳幼児に対しては優先的な服用が求められます。乳幼児は甲状腺濾胞(ろほう)細胞の分裂が成人に比べて活発であり、放射線によるDNA損傷の影響が心配されるため、安定ヨウ素剤の予防服用の効果もより大きくなります。

また、胎児の被曝を低減、阻止する目的で、妊婦に対しても優先的な服用が求められ、40歳以上の妊婦も服用の対象となります。

新生児は、安定ヨウ素剤内服液1ミリリットル(ヨウ化カリウム量16・3ミリグラム)を服用します。生後1カ月以上3歳未満は、内服液2ミリリットル(ヨウ化カリウム量32・6ミリグラム)を服用します。3歳以上7歳未満は、内服液3ミリリットル(ヨウ化カリウム量50ミリグラム)を、7歳以上13歳未満は丸薬1錠(ヨウ化カリウム量50ミリグラム)、ないし内服液3ミリリットルを服用します。13歳以上40歳未満は、丸薬2錠(ヨウ化カリウム量100ミリグラム)を服用します。

なお、安定ヨウ素剤を服用した妊婦の胎児や授乳中の女性の子供は、甲状腺機能異常が懸念されるため、服用後の検査が必要とされています。

安定ヨウ素剤の服用は、甲状腺機能異常症を患う人や、ヨウ素あるいはヨウ素を含有する造影剤にアレルギーのある人、低補体性血管炎とジューリング疱疹(ほうしん)状皮膚炎の既往歴があったり治療中の人には、重い副作用が発生する恐れがあるため適用されません。

原子力発電所などの事故に際しては、周辺住民などが退避し集合した場所などにおいて、自治体が備蓄する安定ヨウ素剤を専門家の指示に従って服用します。医療機関でも必要と判断した場合に限り、医師により処方され、通常(平常)時にも医師により処方されます。

安定ヨウ素剤や、同じく放射性物質のセシウムを体外に排出させる薬剤は、薬局、薬店では売っていません。

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