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アリセプト
アリセプトとは、2010年時点で日本で唯一、アルツハイマー型認知症の治療薬として承認されている薬。主成分はドネペジル塩酸塩で、エーザイ(東京都文京区)が開発し1999年に発売。
認知症患者は全国に約220万人。25年後には330万人を超えると推計されます。認知症のうち、アルツハイマー型認知症は、主に初老期から老年期に発症し、記憶力低下、行動の変化、さらには言語障害や運動機能障害へと進行する脳の変性疾患。発症のメカニズムはいまだ解明されていませんが、発症者の脳内では記憶と学習に関与している神経伝達物質アセチルコリンが減少していることがわかっています。
このアセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)に選択的に働いて、その作用を妨げる薬がアリセプトで、脳内アセチルコリン濃度を高め、記憶力低下などのアルツハイマー型認知症の症状を改善し、進行を抑制します。病態そのものを治す薬ではありません。
副作用として、血中のアセチルコリンの量が増えるために不整脈、消化性潰瘍(かいよう)、気管支喘息(ぜんそく)を増悪させますので、そのような病気を持つ患者には用いません。また、吐き気、嘔吐(おうと)、よだれ、発汗、急性膵炎(すいえん)、心不全、急性腎(じん)不全、肝炎や肝障害、低血圧、手の震えや運動障害などの錐体外路障害、時には悪性症候群が現れることがあります。
アスピリンやそのほかの非ステロイド性消炎鎮痛薬といわれるものは、アセチルコリン系の作用を増強して胃酸の分泌を高め、潰瘍を増悪させる副作用を起こしやすいので、一緒に使わないようにしなければなりません。そのほか、胃腸の病気でよく使われる抗コリン系の薬も、この薬の効果を相殺しますので、併用に注意しなければなりません。逆に、コリン系の薬との併用で、この薬の作用が増強され、副作用を来す恐れもあります。
時に横紋筋融解症から腎不全に至ることもあります。腎機能が悪い人は注意が必要です。
アリセプトには、錠剤と口腔(こうくう)内崩壊錠(唾液だけで服用できる錠剤)、ゼリー剤、細粒剤があります。症状により用量が変わりますので、飲み方など詳しいことは主治医の指示に従います。薬の管理は本人にさせないで下さい。
なお、アリセプトは1999年の日本国内での販売に先立ち、1997年から米国で販売が承認され、その後、世界各国で販売が承認されています。すでに、米国や日本では軽度、中等度に加えて高度のアルツハイマー型認知症まで、すべてのステージのアルツハイマー型認知症治療薬として承認されています。
海外では、アリセプトのほかに3つの薬が広く使われています。アリセプトと同様に脳内の神経に情報を伝える物質の分解を抑える「ガランタミン」と「リバスチグミン」、脳の神経細胞が壊れるのを防ぐ働きのある「メマンチン」です。
日本でもようやく2010年、この3薬について薬事法に基づく製造販売の承認申請がされました。審査には1年ほどかかります。
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