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ウェルシュ菌食中毒
ウェルシュ菌食中毒とは、高温でも死滅しないウェルシュ菌に汚染された食肉、魚介類、野菜や、これらを使用した煮物によって引き起こされる食中毒。
ウェルシュ菌は酸素を嫌う嫌気性菌で、土壌、水中などの自然界、人および動物の腸管などに広く分布し、牛、豚、鶏(にわとり)といった食肉、魚介類など食品原材料を比較的高率に汚染しています。健康な人の便からも検出され、その保菌率は食生活や生活環境によって異なります。年齢による差も認められ、青壮年よりも高齢者のほうが高い傾向があります。
この細菌は熱に強い芽胞を作るため、高温にも耐えて死滅せず、生き残ります。従って、食品を大釜(おおがま)などで大量に加熱調理すると、他の細菌が死滅しても、ウェルシュ菌の耐熱性の芽胞は生き残ります。数時間以上、加熱調理した食品を放置して温度が下がり、嫌気性菌のウェルシュ菌にとって好ましい酸素のない状態に食品の中心部がなると、芽胞が発芽して急速に増殖を始めます。
これを食べると、ウェルシュ菌が小腸内で増殖して、芽胞を形成する時にエンテロトキシンという毒素が産生され、その作用で下痢などの中毒症状を起こします。
発生の原因となる施設は他の食中毒と同様に、飲食店、仕出し屋、旅館などで、提供される複合食品によるものが多くみられます。学校などの集団給食施設によるケースも比較的多く、給食におけるカレー、シチュー、スープ、麺(めん)つゆなど、食べる日の前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放冷されていた食品に多くみられます。
発症者数の多い大規模食中毒を起こすこと、逆に、家庭での発生は他の食中毒に比べて少ないことが特徴的です。
潜伏時間は約6~18時間で、ほとんどが12時間以内に発症します。最初は腹部の膨満感で始まり、腹痛、下痢が主な症状で、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)はほとんどみられません。下痢は水様性で2〜6回程度みられるものの、粘血便がみられることはほとんどありません。きわめてまれには、粘血性の下痢を数10回起こす重症例もあります。
一般に、食中毒の症状としては軽いほうで、多くは24時間以内に回復します。
ウェルシュ菌食中毒は細菌性食中毒の中でも軽症であり、特別な治療を行わなくても一両日中に回復しますが、粘血性の下痢を繰り返す症状がみられた場合は、医療機関を受診します。
医師による診断では、普通、症状だけで診断がつきます。食後12時間以内の急性の中毒症状がみられたり、同じ食品を食べた他の人にも同様の症状がみられたり、中毒症状の原因が1つの汚染源に絞れるような場合に、ウェルシュ菌食中毒が強く疑われます。診断を確定するには、糞便(ふんべん)や原因食品、または食品原材料から、同一の性状、同一の血清型を示す多数のウェルシュ菌を検出することが必要です。
重症例に対しては、整腸剤を投与したり、輸液によってブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。
ウェルシュ菌食中毒を予防するためには、以下のことを心掛けます。前日調理は避け、加熱調理をした食品は速やかに摂食します。一度に大量の食品を加熱調理した時は、菌の発育しやすい15〜50度の温度を長く保たないように注意します。やむをえず保存する時は、10度以下か50度以上で行います。さらに、保存していた食品を食べる時は、75度で15分以上の再加熱による温め直しをします。
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