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胃切除後障害
胃切除後障害とは、胃の手術を受けた後に起こってくる各種の障害の総称。胃切除後症候群とも呼ばれます。
胃がんなどで胃の切除手術を受けた場合、胃が小さくなったり、消失したことによって、比較的長期に渡って障害が残ります。胃の大きさについては、わずかには大きくなりますが、肝臓などのように再生して元の大きさに戻ることはありません。
胃切除後障害の種類としては、術後胃炎、早期ダンピング症候群、後期ダンピング症候群、術後貧血、逆流性食道炎、残胃がんなどが挙げられます。
術後胃炎は、手術後、胃と腸をつなぎ合わせた吻合(ふんごう)部を中心として、むくみや、血液成分などが集まる細胞浸潤といった炎症が起こるものです。これは経過とともに、次第に治まってきます。まれに、数年間続く場合がありますが、あまり神経質になることはありません。
早期ダンピング症候群は、食事中や食後30分以内に、胃の不快な感じ、むかつき、発汗、動悸(どうき)、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。手術によって、胃と十二指腸の境界部にある幽門がなくなり、括約筋による調節が失われた上に、胃が小さくなっているために食べ物が胃の内部にとどまっている時間が短いか、胃がないために直接小腸に落下(ダンピング)することによって生じます。
後期ダンピング症候群は、食後2〜3時間たって、めまい、発汗、動悸、体のだるさなど一連の症状が起こるものです。原因は、食後に食べ物が急速に小腸へ流入したために起こる高血糖と、それを是正する膵臓(すいぞう)からのインシュリン過分泌により、ある程度時間をへて低血糖症状が生じるためです。
術後貧血には、鉄欠乏性貧血と悪性貧血の2つのタイプがあります。鉄欠乏性貧血は、胃酸分泌の低下とともに、赤血球を合成するために必須の鉄分の吸収が低下するために起きます。悪性貧血は、胃液の中にあって内因子と呼ばれ、赤血球を作り出す上で必要なビタミンB12の吸収に不可欠な物質が、胃液分泌の低下とともに作れなくなるために起きます。
いずれの貧血とも、めまい、脱力感、倦怠(けんたい)感などの症状があります。胃の部分切除をした人の約35パーセント、全摘した人の約70パーセントに貧血が現れるとされています。
逆流性食道炎は、胃切除による胃噴門部の逆流防止機構の障害で、胃液や胆汁、小腸液などの消化液が食道に頻回に逆流することにより起こります。症状としては、胸焼け、胸痛などが挙げられます。
残胃がんは、胃の一部が残る胃切除を受けた後、残った胃に再度がんが発生するものです。多くは、切除断端や吻合部付近に発生します。
手術を受けた病院でその症状を診てもらい、原因を診断してもらいます。診断を基に治療を受けるのですが、その治療で効果がない時は、他の病院の専門医に指導を受けるのもよい方法でしょう。
胃切除後障害は、再手術を要することは少なく、保存的治療で軽快することがほとんどです。逆流性食道炎と残胃がんでは、手術を含めた専門医による治療が必要になることもあります。いずれにしても、胃切除術後に定期的な検査や診察を受けることで、さまざまな胃切除後障害を早期に発見、治療することが重要です。
早期ダンピング症候群では、食事療法が有効です。高蛋白(たんぱく)、高脂肪の食事にし、糖分摂取による血糖値の大きな変化を防ぎます。また、1回の食事の量を減らし、1日6回くらいに分けて、ゆっくり食べるように心掛けるのも効果的。食後1時間くらいは横になっていると、症状は軽くなります。一連の症状は、胃切除後、経過がたつとともに、軽快して治ります。
後期ダンピング症候群でも、蛋白質が多めの食事をゆっくり食べるように努めます。低血糖による発作の症状が起こったら、血液中の糖分を増やすために、あめや氷砂糖などを摂取すると、症状が軽くなります。
貧血では、鉄欠乏性貧血には鉄剤、悪性貧血にはビタミンB12製剤が有効です。逆流性食道炎では、薬物療法が主となり、制酸剤、アルロイドG、蛋白分解阻害薬の内服などが有効とされます。薬物療法に抵抗する高度の逆流性食道炎に対しては、体を傷付けることの少ない腹腔(ふくくう)鏡下、または内視鏡下手術が選択されることもあります。
残胃がんでは、早期発見によって再度の胃切除を行わずに、内視鏡的粘膜切除術や他の内視鏡治療の選択が可能です。進行がんに対しては、根治手術が第一選択となります。
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