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∥脳の働きを高める手指の訓練∥

 

●運動には無理をしない心掛けが必要

 注意してもらいたいことは、この運動というものは、自分の体に適する程度に加減すること。

 例えば、中年すぎの女性で、連日三十分以上歩くと下半身に疲れが残って、気分がすっきりせず、体調が悪くなるという人が少なくないようだが、こういう人は三十分歩行では運動が過度だと考えてほしい。

 よく歩いた日に限って眠れない人は、歩きが体を興奮させるとも考えられる。逆に、歩けばよく眠れるというのであれば、適度の疲れが眠りを誘っているといえよう。

 このような眠りに対する影響なども、運動の程よさのわかりやすい目安になるのである。

 すなわち、運動は過度ではいけない。快い疲労の程度ならよいが、過労ということは、運動の目的をはずれることで、かえって体力を減じ、いろいろな器官を損なうことにもなる。

 特に高齢者では、ちょっとした運動でも、体に影響することがある。高齢者が朝起き抜けに散歩するなら、甘い物でも口に入れてから出掛けるか、食後にしたほうがより安全である。体操をするなら、体をできるだけゆっくり動かすこと。関節の痛みを我慢してまで動かすことは感心できない。寒い冬に急激な運動をすると、思わぬ事故が起きることがあるので、慎重に行うことも必要である。

 中年以後の、いわゆる健康維持、それが寿命を延ばすという日常姿勢であって、適度の運動は若返りになるトレーニングでもあり、いたずらに寿命を延ばすだけでなく、老境には老境にある人々のやるという新しい意欲も起こり、やる仕事も当然に起こる。

 要は、人間の正しい生き方は、肉体的に鍛えること。それが精神につながり、精神の安定を得る道。

 誰もが、無理をしない程度に運動をすることを心掛けたいものである。体を動かすということは健康と長寿のためには不可欠であるから、百歳人などはみなそろって仕事好きである。仕事好きは運動好きでもある。

 高齢者で全身の運動ができなければ、足を動かすだけでもよい。

 簡単にできる足の健康法を紹介すると、まず仰向けに体を投げ出し、両足を三十センチぐらいの台に乗せ、足首を内側、外側と交互に二十回ほどひねると効果がある。慣れるにつれて、四、五十回続けると、疲労回復はもとより、全身機能も若返ってくる。これは、足の薔薇(ばら)静脈を鍛錬する運動である。

 体力の衰えを防ぐには、足裏の土踏まず中央の上側にあるツボを、指先で押したり、もんだりするのもよい。ツボは足の親指の根元にある、ふくらみのすぐ後ろ側だが、ここは昔から神気の湧くところ、生命の躍動する場所として、「湧泉」と呼ばれてきた。「押せば命の泉湧く」というわけである。指圧に際しては、痛いが気持ちいいという程度の力で、呼吸のリズムに合わせて行うようにすればいい。

 最後に高齢者に注意しておきたいのは、年を取ると平衡感覚が鈍るということである。一番危ないのが階段で転ぶこと。これも上る時は転んでも前に手を着くからいいのだが、下りる時が危ない。もしお宅が二階家で階段に手すりがなかったら、ぜひつけてほしい。要するに、転ばぬ先のつえを考えねばならないということだ。

●脳の働きを高める手や指の訓練

 人間の足に続いては、手を鍛錬して頭の働きを維持する方法を述べよう。

 体の中で、生かされているという自然の中に深々と根差しているものは腹から腰、それから生殖器官、そして両脚、両足であるのに対して、人間の手は生きるという面に、生きるための働きをしている。

 手は自由自在に独立しているかのごとく、さまざまなことをなすことができる。生きるという自力を発揮する上で、手というものがどのくらい進歩してきたかを考えれば、人間はまだまだ、現在くらいの働きで満足していることはできないだろう。

 かの哲学者カントは人間の手を称して「脳の可視部分」といったが、大脳の半分以上が手を動かすための役割をつかさどっているともいう。足の運動をつかさどる脳の分野があるように、手の運動をつかさどる働きも、位置と占める割合こそ違うが大脳にはあるわけだ。この大脳にある手の指の運動を担当する領域は、足の運動野の十倍以上の広さを占めており、互いに連動し合って、複雑な動作をも可能にしているのである。

 そこで、頭のボケを防ぐために、誰もが簡単に自分でできることとして、互いに連動し合っている手のひらを鍛錬するのも、一つの効果的な方法となる。

 お寺の和尚が念仏を唱える時に、数珠を手のひらでもむ。それはお経をありがたくするということだが、手のひらを鍛錬してボケを防ぐということが、その中にちゃんと入っているのだ。

 中国の気功術の手始めも、両手の手のひらをこすり合わす。そろりそろりと手のひらを離すと、両手のくぼみの間に「気」が通う。これが気功の第一課だといわれている。

 両指先を動かす末端運動もボケの予防になる。なぜなら、血液の循環は心臓の鼓動による力ばかりでなく、血管、ことに毛細管の末端にある動脈系と静脈系を結びつけるグローミーというものの働きが、同時にその原動力となっているが、末端の運動はその血液循環をよくするからである。

 よく、中国では長寿法の一つとして、クルミを両手に始終持って常に動かすという。これなども結局、手、指先を動かすのがいいということである。使えば使うほどよいのが手と頭と足である。

 では、脳の働きを活発にする指の効果的な動かし方を、いくつか紹介することにしよう。

 まずは、考えながら指や手を使うこと。手足の筋肉を長期間動かさないと筋力が衰えてくると同様に、脳も使わないでいると老化が進み、ボケにつながる恐れがあるが、脳の場合は頭の中で考えを巡らせるだけでは、ほとんど効果がない。大切なのは、考えながら手を使うことなのだ。

 つまり、ある方向に手を動かしたり、細かく働かしたりすれば、大脳の運動野の領域が働いて、脳力の向上につながる。また、手順のある作業を行ったり、順番をつけて手を動かしたりすると、大脳の運動連合野と呼ばれる領域が働いて、脳力の向上につながるというわけだ。

 この点で、代表的な手作業は料理である。目的とする料理を頭の中に描いて、包丁で素材を刻んだり、ハシでかき混ぜたり、米を研いだりして、手を創造的に動かすからだ。

 碁や将棋、マージャン、テレビゲームなどでも、同様のことがいえる。こちらは一手ごと、場面ごとに、次にはどういう局面になるかを絶えず考えながら、手を使って対処するからだ。そのほか、日記や手紙、メモなども、考えながら字を書く創造的な手作業ということができる。

 次は、ふだん使わない指を使うこと。人間が日常、字を書いたり、ハシを使う時、小指や薬指はほとんど使わないため、大脳の運動野や運動連合野などへの刺激も、不完全なものとなっている。そこで、小指で電話のダイヤルを回したり、薬指で電卓のボタンを押したりする習慣をつけると、大脳を十分働かせることにつながる。

 さらに、なるべく利き腕でない手を使うこと。一方の手ばかり多用していると、その手を支配する側の脳しか刺激されない。左右の脳を生き生きと働かせるためには、両手使いを実践することである。例えば、右利きの人ならばボタンを左手でかけたり、食事のハシやナイフを左手で持って食べたりするのもよいだろう。

 最後は、指運動。まず、両腕を真っすぐ伸ばして、床と水平になるまで持ち上げ、その位置で指と指ができるだけ離れるように思い切り開いたり、しっかり握ったりする。回数は一日五十~百回。続いて、手を頭の上に上げて、手首を外向き、内向きに回す。手首を外向きにねじる回外運動と、内向きにねじる回内運動を、続けて二十~三十回行うこと。

 足と同様に、自らの手で脳を養うこともできることを忘れないでもらいたい。

 

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