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∥食生活の工夫2∥
●眠れぬ人の各種の工夫
近頃は不眠症で悩んでいる人も多いから、眠るための工夫として、飲み物、食べ物についても紹介していく。
世上、寝つきをよくするために、最もよく用いられるのはいわゆる寝酒である。老人の就眠法の大部分はこれで、簡単で便利だが、全く問題がないとはいえない。幸いにして五体が比較的満足で、血圧も上が百四十内外で、下が九十よりさほど高くない程度なら、一応、許容範囲といえるが、百六十~百以上とあっては、結構だとはいえない。胃潰瘍(かいよう)、その他内臓疾患のある人はなおいけない。
それに、寝酒といっても酒の種類も考慮を要する。なぜかというと、アルコールによって得られる眠りは、生理的な自然睡眠とはいえないからである。
もちろん、私たちが必要とする眠りは、赤ん坊の眠りと同じく自然睡眠であるが、寄る年波とともに、程度の差こそあれ、中枢神経系統は十分な、ナイーブなというか、オーソドックスな眠りを与えることが困難になってくる。
そこで、何らかの方法で、睡眠を勝ち取る必要が生じてくるわけだが、自然睡眠をとることは、なかなか難しい。
アルコールのもたらしてくれるのは麻酔である。寝なければならないためとはいいながら、毎晩の麻酔は考えもの。万一やむを得ないとしても、最小限に食い止めるべきである。
また、自然睡眠を麻酔とともにもたらす道があれば、人工睡眠としては理想的に近いものといえるかもしれない。
ある東洋医学者によれば、ホップとアルコールの混合物が眠りを誘う目的に用いられるとすれば、単なるアルコールのみの使用に比して優れていることは、理の当然として考えられるという。
そこで、両者の共存するビールは、単なる睡眠誘発のためなら、比較的無害なものといえるかもしれない。ただし、ビールのホップ含有量は一パーセントにすぎない。酒を全く飲まない私には、当否は弁じがたいが、その方面に詳しい知人の説によると、寝心地と朝の目覚めはビールが最良だというが、そうかもしれない。
知人は小瓶一本をもって適量とするといっている。これは我が意を得ている。摂取する水の量が多きに失すれば、心臓に対しても、腎臓に対しても負担となる。
就寝前は大量の水をとることは避けるべきで、この意味で知人の就寝前ビールの処方は、結構なものだろう。
食事に関していえば、寝れないと嘆く人は、時間帯と量に問題はないだろうか。就寝前に食べたり、食べすぎたりするのは、眠りの妨げになる。眠くなる前に物をたくさん食べると、眠くなる作用はもう奪われてしまう。それだけ胃に負担がかかって、胃の働きが強くなればなるほど、他から出る機能は淡いものになるのである。
食事時間を早くするか、夕食を軽めにして、朝食の量を増やす配慮をするべきである。また、カルシウム不足は神経がいらつきやすくなるので、小魚類を食べるようにする。
●牛乳、ホウレンソウ、そば粉
あまり空腹でも眠れないので、その時は温かい牛乳を飲むといい。食べ物については、残念ながら即効薬的な物はないといわれるが、それでも、牛乳、チーズなどの乳製品は、睡眠を誘う数少ない食べ物の一つといえるだろう。
牛乳、チーズには、神経の興奮を静めるカルシウムもあり、消化、吸収が高いという長所がある。その上、牛乳、チーズ中に含まれるトリプトファンというアミノ酸の一種が、脳睡眠中枢を刺激して自然に眠りを誘うという働きもある。
ノンレム睡眠は、セロトニンという物質と深いかかわりがあるとされている。不眠や睡眠障害を起こす時は、決まって脳内にセロトニンが減少しているからである。このセロトニンは、トリプトファンから作られるので、牛乳やチーズを勧めるのである。
逆に、就寝前に濃いコーヒーや紅茶を飲むのは禁物。コーヒーや紅茶に含まれるカフェインが交感神経を刺激し、眠気を抑える働きがある。
もう一つ、寝つきと寝覚めをよくする食事法を紹介しよう。愛媛大学の生化学教授の研究成果によると、ホウレンソウやトマトは低血圧によく、グリーンアスパラやシバエビは高血圧にいいという。
百種類の食物成分をモルモットの血管に注入して、収縮率や拡張率を調べた結果、最も収縮したのがホウレンソウで三分の一程度になり、トマト、ショウガ、トウガラシなども収縮率が高かった。一方、拡張率は、グリーンアスパラが最も高く十パーセント広がり、シバエビ、ホタテ貝、ハマグリの順で、アジやカボチャなどにも、血管を広げる作用があった。
寝覚めの悪い若い女性に多い低血圧は、ホウレンソウやトマトなどを食べればよくなり、逆に寝つきの悪い高血圧は、グリーンアスパラや貝類、魚類を食べれば治りやすい。また、肩凝り、冷え性、腰痛などの症状も、毛細血管を拡張させることで抑えることができるという。
次は、肥満で悩む人への忠告。心臓に負担がかかるなど周知の弊害のほか、肥満のために、脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝によって、せっかく献血された貴重な血液が、輸血に使えないケースが増えている。美食や運動不足、酒の飲みすぎなどによる脂肪肝の人は、未知の肝炎に感染している可能性があり、体重が重いほど異常者が多く、輸血には使えないようだ。
そこで、自身がやせたいと思うならば、生きるための濃厚食品や大食をやめて、生かされるための植物性低カロリー食品を時間をかけて、よく噛んで食べること。運動は、仕事に興味を持って働き続けること。働きという自然運動は、心身を調節するにはよい薬になる。
胃弱や便秘で悩む人には、そば粉を勧めてみたい。そば粉を水に溶いて食べても、何の味もないが、食べていればけっこう合うものである。結局、唾液や胃液を分泌させやすい。
合うということは、人間から見れば、味がないから「こんなまずい物」というけれども、体の中の胃液には、何にもない物が合うわけだ。
そばという物は、元来、荒れ地を開墾してすぐまくくらいの物であるから、大地の力を吸収するとか、天地のエネルギーを吸収するという力が非常に強い植物だけに、できた実によって作られる粉は、肉体に対していうにいわれぬ力を持っているし、唾液、胃液の分泌に対しては特別な働きをするのであろう。
便秘も治るし、胃も丈夫にするということで、内臓器官のある部分においては、そばは非常にきく物である。
胸がつかえた時に、そば粉をかいて食べれば治る。それほど消化率というか、合うことにおいては、あれほど味のない物が、一番大きく役をするわけである。
行者がそばがきだけ食べて行をしながら、厳冬を過ごすといっているが、そういう一見不思議のような事実が、そばには潜んでいる。
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●噛む食事法が解決する食糧問題
人間の食生活について、さまざまな角度から私なりに論じてきたが、本章の最後に、日本の食糧の安全確保と世界の食糧問題も論じておきたい。
述べてきた腹八分を、よく噛むという食事法は、実は、人間一人ひとりが、ただよく噛むということを実行すれば、世界の食糧問題は一挙に解決するほどのものである。
それは、従来の二倍も三倍もよく噛む食生活は、感覚や感情的の好みの食事から、体そのものが要求する、正常食とその量となって、きわめて合理的な食生活法となるからこそである。
現在一般の単なる嗜好(しこう)的の食生活から、実質的な食生活へ、イライラの飲み込む食事から、落ち着いた咀嚼による食生活になることで、日常の食事の量は必要なカロリーを失うことなく、従来の三分の二、ないしは今までの半量で足りることになる。もちろん、食費も三分の二か五割で足りるだろう。
このことは、現下の世界的な食糧問題を考える上からも、見逃すことのできない大問題といってよいと思う。現在各地に飢餓状態の国もあり、多くの餓死者のある時、恵まれた先進国の人類がただ嗜好による飽食、過食、食荒らしの食生活をしていることは、国家的に、また国際的道義から考えても、大いに反省されなければならない問題であろう。
飲みすぎ、食いすぎ、遊びすぎ、これを人権か特権のように思う常識を是正せねばならぬ。宇宙間の万物中、ぜいたくをしているのは人間だけである。恵まれた金持ち国の幸せ者は、もっと質素に、まじめに生活して、世界の弱者や不幸な人にささぐべきである。
飽食、美食に浮かれている日本自体にしても、昭和五十八年頃で、食糧の自給率三十パーセントという数字は、あまりにも不安である。
食糧の安全確保が大事なことはいうまでもない。日本ではほとんどの食糧を外国から入れている。せっかく海というものがあるのだから、国民の蛋白源である水産資源の開発に力を入れるなど、食糧の自給率をもっと向上させる必要がある。
あまっているのは、米、牛乳、豚肉、鶏の卵ぐらいで、あまって生産制限をやってきた米も、今年は例の冷夏の影響で記録的不作であったから、緊急輸入する事態となったが、いずれにしろあまっているのである。
明らかに足りない物は何かというと、数年前の統計で小麦は約十パーセント程度しか需給率がない。大豆は九十五パーセント輸入に頼っている。とうもろこし、こうりゃんといた飼料も、九十パーセント以上は輸入に頼っているのである。つまり、卵は百パーセント近い自給率といっているが、その九十何パーセントの飼料は外国産。ざっと三千万トンの飼料が入ってこないと、日本の畜産は成立しないという。
日本人の食卓に上る物は、顔は国産、中身は外国産。昭和六十年で、カズノコ百、ハマグリ九十五、ゴマ百、マツタケ七十五、エビ七十二パーセントと聞くと、味覚ニッポンもほとんどが輸入材料なのである。
●世界的な食糧危機を考える
輸入に頼っていようと、繁栄した平和日本では飽食を享受している。しかし、今も地球上のどこかで、国と国、民族と民族とが武力抗争を展開し、人間同士が殺りくを繰り返している。また、五十数億の人類のうち、二十億人は必要栄養を満たしておらず、そのうち数百万人は餓死寸前にあったり、栄養失調で生死の間をさまよっている。これが一つの現実なのである。現在の地球は、一方に飽食ありて、一方に餓死ありなのである。
かつて米国政府が発表した報告書「二十一世紀の地球」は、恐るべき未来予測である。人口は六十三億、さらに二〇三〇年には百億人に達し、人口爆発の状態になる。食糧の大半は富める国に流れ、南アジア、中東、アフリカなどの弱貧国の食糧事情は極度に悪化する。国家間の貧富の差は、とみに拡大するという。
六十億、百億の人間が生きてゆくためには、他のあらゆる動物、植物が犠牲になる。
人口の増加の九割が貧しい発展途上国だという。食糧問題、自然破壊を思えば、何としても人口抑制策を徹底して考えねばならない時にきている。だが、国連がその場かどうかは知らぬが、抑制の具体的な対策をさっぱり耳にしない。
平成三年度で世界人口の二十三パーセントを占める中国は、「一人っ子政策」を掲げて、人口抑制に必死に取り組んで十数年になるが、莫大な罰金を払ってでも、労働力としての男の子が欲しい農村の実情から、努力しても実効が上がらぬ。野放しのインド、今後も毎年のように何千万人もの餓死者が出ると騒がれているアフリカ。百年後の人類が、本当に生きていれるだろうか。
アフリカの飢餓については、「自然による人口淘汰(とうた)だ」とさえいう学者がある。人口増加と飢餓とのぎりぎりの接点が、いつの日にか訪れるにちがいない。
人間が自ら、この地球の危機を救うための人口対策をしない限り、自然による淘汰は必至である。世界人口予測も、現在の環境を前提にしたものだけに、予想される世界的食糧危機、環境破壊が襲ってくれば、そうした数字は全くはずれるにちがいない。
アフリカに見る異常事態が、実は常態として長く続くとすれば、現在のような食糧援助が果たして続けられるだろうか。
昭和六十年、アメリカ環境問題諮問委員会の報告には、「二〇二〇年までには、発展途上国における物理的に接近可能な森林は、事実上すべて伐採されている」という恐るべき予想がある。
人類の人口の急激な増加が、一つには耕作地を求めて、一つには建材や燃料を求めて森林を無残に伐採してゆく。今や世界の森は、毎分二十から四十ヘクタールの猛スピードで消滅している。二十世紀末までに、地球上の耕作適地の三分の一が砂漠化すると、国連環境計画では警告しているが、それは地球が肥沃な表土を失い、死にかかっているということでもある。
世界の食糧のカギを握っているアメリカの農業でさえ、土地は疲れ、二、三十年もすれば全土の砂漠化が進み、土は死滅するとも警告されている。化学肥料が土中の微生物を殺し、水かけ農法が土中の塩分を地表に昇らせて、土地を砂漠化する。そのために、農業も次々と新しい土地を求めて移動するのである。食糧も飼料もアメリカに依存する日本農業は、それなりに長期的展望に立った自立化を、ぜひとも確立しておかなければならない。
焼き畑農業に依存する世界の人口は三億人。すでに、二億ヘクタールに近い熱帯林が消滅した。これは炭酸ガスの増加を意味し、その濃度が非常に増え続けることは、地球の気象にも大きく影響する。
気候の変化による砂漠化、人口増加に対応するために、森林をどんどん伐採していくことによる人為的砂漠化、両方相まって、土地の砂漠化は地球的規模で進行してゆく。
地表に植物があれば、そこに水分がたまって、蒸発して雲になって雨になる。植物がなければ、雨も降らなくなり砂漠化が進む。この悪循環を何としても、どこかで断たなければならないわけである。
さもなくば、人類は森林を倒し、緑を追い、野生動物を駆逐して、やがて人類自らを滅亡させてしまう危機を迎える日が間近に見えるではないか。
世界的に見れば、もはや将来の食糧不足は歴然。次の十年間に、人口抑制、環境問題、そして、私の説くよく噛む食事法による食べる量の減量化に、どう取り組むかが二十一世紀の人類の運命を決めることになろうというわけだ。
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