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∥体に適した食べ物2∥

 

●肉体には精妙な選択力が働く

 現代人の食事に比べ、自然の中に生きていた大昔の祖先たちは、自然のままの食品を特に味つけなどせずに、そのまま食べていた。少なくとも、現代よりは塩味も甘味も少なかったと思われる。

 それが現代では、濃厚な味つけの料理が好まれるし、不必要に人手をかけ、人工の添加物を加えたりして、豪勢に見える食品を作り出すのに懸命になっている。

 多くの人が口では公害を非難し、きれいな空気や日光、水の必要性を痛感しているはずであるのに、ことひとたび食品のことに関しては、自ら不自然化を見逃しているのはどうしたことであろうか。

 もちろん、食べ物はうまいにこしたことはない。しかし、そのうまみは自然の持ち味を生かしたものでなくてはならない。人工的に濃厚な味をつけた料理は、ちょっとの口舌の楽しみはあっても、それを食べ続けていれば、やがて体に障害をおよぼしてくることを忘れてはならない。

 人間の体には精妙な選択力があるから、そうした現代流の濃厚な味を一週間も食べ続けていれば、必ず飽きがくるはずである。この本能的な選択力に忠実に従うならば、淡泊な自然の味の中にこそ、生命の糧があることを、体で知ることができるだろう。

 現代では、食べ物や食べ方に注意しても、素人にはわかりにくい有害添加物を含んだ食品も少なくないからこそ、食べ方について心であれこれ思い煩わず、食べた後の体の調子、頭脳の働きなどで、つまり体そのもので判断して、正食を正しく食べる習慣をつけることが大切である。

 栄養となるかならぬかは、体そのものによるのであって、食べ物だけにあるのではない。いかに栄養学的に認められた食品でも、食べる本人の体が完全でなければ、それはまずく感じるし、生命の糧として身につくこともないだろう。

 人は食べ物の種類によって、それぞれの栄養分が違うと思っているが、肉体が自然に返っていなければ、いくらいろいろの物を食べても、偏った栄養しか得られないもの。

 肉体の持つ物理的作用というものはコンピューターより正確に、健康のために不可欠な栄養のバランスをはじき出し、かつ、計算通りの栄養を吸収してしまうものである。

 誰もが健康になりたければ、肉体というものの素晴らしい働きを、無条件で信じるがよい。肉体機能の持つ自然作用に任せておけば、食べた物を肉体が分解、仕分けして、必要な栄養に転換してしまうものである。体に悪い物を食べると、すぐに吐いたり、下痢したりするのも、肉体を守ろうとする機能が自然に働くからである。

●もっと水を摂取しよう

 食事について論じているからには、水を中心にした飲み物についても触れておきたい。

 かくいう私は、一日に水を一升は飲む。肉体生命は水を注がれ、水をたたえて、楽しく、元気はつらつと躍動している。

 水は宇宙万物にしみわたっている。しかも、熱しては蒸気となり、冷えては氷に変ずるというように、色即是空、空即是色の大真理を具現している。中国の老子の言葉にも、「上善は水の如し」とある。最上の善は水のようなものだ。水は万物に利益を与え、水なくしては何物も存在できぬ。

 これほどの水なのに、近頃の人間は一般に偏食したり、あるいは過食したりしているわりに、水を飲まなすぎる。併せて、もっと上手に空気を呼吸することを心掛けなさすぎる。だから、今日ほどの便利な時代に、偏食のために病気をしたり、ビタミン不足、ホルモン欠乏症などというのが出てくるのである。食糧の少ない昔でも、そういうことは少なかった。

 自分の健康を守るためには、朝起きたら十分に水を飲み、窓を開けて新鮮な空気を胸いっぱいに吸うがよい。

 人間の体は水分が三分の二を占めていて、絶えず循環しており、特に細胞には水が必要であるのに、その補給が足らぬのである。

 一説によると、人間の肉体の成分比は、蛋白質が全体の十七パーセント、脂肪約十四、炭水化物一・五、ミネラル約六、そして残りの約六十一パーセントが水だという。私たち人間の肉体のほぼ六十~七十パーセントは血液、体液といった水分であることに間違いはなく、その肉体を構成している細胞は、ちょうど水中の生物のように、水に浸され、水に溶けた栄養や酸素を得て、老廃物を捨てている。

 水や空気の中には、知恵も力も栄養もある。それに直結して効をなす空の力が人体にある。人間は肉体の持つ神秘の能力を、みな放棄して、平凡なものになってしまった。

 水の素晴らしさは、実際、千万言を費やしても語り尽くせないほどである。

 私自身が毎朝起きると、枕元に昨夜のうちに汲(く)んでおいたヤカンの水を二回、三回と飲むのは、体が要求するのである。慣れもあるが、寝起きの際の水の効用は大きい。

 水道水ではない。裏庭の井戸水で、水質検査を何回もしてもらっている自然水である。これが、冷たくてうまい。新鮮で、栄養たっぷりの自然の水を飲むと、体中の細胞にしみわたるようにいくらでも水がおいしく飲める。

 起き掛けに飲む水はうまい上、胃を刺激して活発にするので、食欲も出るし、同時にあくびやおならなどガスの放出にも役立ち、快便をも促す。さらに、脳の活動をも活発にするのは、水による酸素の補給があるからである。

 頭もすっきりとし、体中が快い。「さあ、今日一日も頑張るぞ」という気分がみなぎる。

 とりわけ、すきっ腹に飲む自然の冷水は、胃に入るやいなや、ほんの数秒あるいは数分間で体中にいきわたるものである。細胞から細胞へ、血液を通して、どんな微細な部分へでも、たちどころに浸透していく。これは、水の毛管現象といわれる宇宙性の特徴である。天然水が巨岩を砕き、ついには押し流すに至る力も、この毛管現象による。この浸透力と溶解する力に生命を託し、依存しているのが、動植物を問わず、生物全体の水との関係である。

 だからこそ、よく眠って肉体をゼロにして起き出す朝の、水分不足の体に、コップ一杯の水は牛乳以上の効をなす。人間は金高で価値をはかるが、水というインフレ退治の妙薬のあるのを忘れている。

 ぐっすり眠れた朝ほど、寝ている間に自然作用で水分が吸収されてしまうため、ことにのどが渇くもの。従って、その分だけたっぷりと水を補給しなければならない。七、八時間の睡眠なら最低コップ五杯ぐらいの水が必要で、一度では無理としても、何回かに分けて飲む習慣をつけるべきである。

●水は噛むようにして飲むこと

 誰もが人間の生命維持にとって大切な水、自然なよい水を、ぜひとも一日に一・八リットルは飲むようにしたいものである。

 この水を飲むにも飲み方がある。急いでガブガブ流し込んではいけない。噛むようにして飲むことが大切なのである。

 空気が乾燥しているからといっても、ガブガブ飲むということはいけない。一応口の中に入れて、静かに飲まないと二杯飲んでも、三杯飲んでも効果は薄れる。一含みしたほうがどんなに効果があることか。間をおくわけで、三杯一度に飲むよりも、三回に分けて飲むことのほうが、体全体に効くというわけなのである。子供であろうが老人であろうが、すべての者に必要なことだ。

 つまり、急に無理に飲まず、肉体が水分を要求し、よく吸収するよう、肉体を動かし、働かせて、運動を怠らぬようにすることである。

 このようにして水を多く飲み、それが体になじむほどであれば、体の中の不用な物、悪い物をみな溶かし、流してしまう。水が体全体に吸収され、変化して力となる。肉体にとって、水の価値は計り知れない偉大なものである。

 水を飲むと唾液が薄くなるというが、そんなことはない。人体は水分を多量に必要としているのに、現代人は水の飲み方が少なすぎる。努めて水を飲むべきである。そうすれば、のどが渇くということもなく、結果的に、健康上問題のあるジュース類を飲む必要もなくなって、一挙両得となる。

 といっても、昼間は、どうしても水以外のジュースなどに目が移り、水以外の物を飲んだり、食べたりする人が多いのが常だろう。

 この時、水を飲めば疲労やのどの渇きが回復するということが、往々にしてあるにもかかわらず、それに気がつかないということは、水のありがたさとか、水がどのような働きをするかということを知らなすぎるせいである。

 体が水を要求する時は、細胞が活発に働いているか、体自体が吸収できる状態にあるから、水を飲むという吸収力があるということになる。そして、飲んだ水は直ちにエネルギーにすることができるもの。水の触媒作用を利用して、肉体内部に自然の「気」を起こさせると、比喩でいえばちょっと変わった発電所ができて、水力電気、体電気エネルギーが発生するということだ。

 腹が立った時にも、まずコップ一杯の水を飲むがよい。体が疲れた時にも、水を飲む。疲れた時にはのどが渇く。それは働くということで汗が出るのであるから当然である。

 人間の体を分析してみると、約三分の二を占める水分の、たった十分の一を失っただけで病的状態に陥るといわれている。体が疲れると、この肉体の水分が減って、いっそう疲労の「気」がたまるから、この「気」を元気に戻すためには、水を飲むことが何よりである。水を補給すれば、たちまち気分もよくなる。

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●大自然が与えた最大の活力源

 水の飲み方次第で、人間は健康になれるのである。

 水の中には生命の素があるから、新しい血液ができて元気になる。すなわち、血液の細胞を作る鉄、葉緑素を作る重要な元素であるマグネシウム、細胞中のミトコンドリアのカギを握る元素のリン、毛を作る硫黄、骨や殻を作るためになくてはならないカルシウムや珪素(けいそ)など、水はその溶解性によって、生物に必要な物質をすべて溶かし込んでいるのである。

 また、水には物を純粋にする浄化力もあるから、肉体の新陳代謝がよくなる。たくさん水を飲んで体を洗えば、細胞は非常に立派な新鮮なものとなる。

 水を飲んで、そこからエネルギーを取ることができる。細胞を新鮮にすることもできる。それは、水の中にも宇宙生命、宇宙感覚、宇宙エネルギーが潜んでいるからこそである。

 私たち人間も、食物のカロリーなどという栄養価を口にする前に、知らず知らずのうちに恩恵に欲している、自然の水と自然の空気の大切さを知らなくてはならない。

 これは宇宙大自然の尽きることのない恵みである。いうなれば、大自然が惜しみなく無尽蔵に、平等に与えてくれている最大の栄養こそ、水と空気、そして日光である。まさに、この三要素こそは、生命の元の元なる栄養源、肉体の原動力となるエネルギーなのだ。

 水の生理的効用としては、血液の循環をよくし、体液をアルカロージス(アルカリ性)に調整し、細胞の新陳代謝を促進するなど、すべて生化学的に認められているところである。

 体の中の水分が減ってくれば、血液は当然濃くなり、粘っこくなる。そのままの状態では、末梢血管の血液の流れが悪くなり、赤血球一つがやっと通れるような毛細血管などが、真っ先に詰まりやすくなる。当然、体のあちこちの機能が低下し始める。

 まず、脳の働きが悪くなる。思考力がガタ落ちになり、勘なども働いてくれない。「血の巡りが悪くなる」からである。

 まだそれほどの年でもないのに、〃恍惚の人〃になったりするのも、若いうちから水の飲み方が足りなかったせいでもある。冷たい、生きた水を飲まずに、コーラやジュースばかり飲んでいると、こんな結果になりやすい。

●おいしい水の秘密について

 では、おいしい水とはどんな水であるか、について述べてみよう。

 水のおいしさに関係のある水質成分を科学的に分析すると、第一に、炭酸ガスが挙げられる。炭酸ガスは自然の湧き水や地下水(浅井戸)などに含まれているが、これが適量溶けていると、水に新鮮でさわやかな味が加わる。水中の炭酸が舌や胃の神経を刺激し、消化液の分泌を促進するからである。

 次が、何といっても酸素の量である。水に溶けている酸素の量が多いほど清涼感があり、新鮮な味がするものだ。第三は、ミネラルの含有量である。マグネシウム、カルシウムをはじめ、ナトリウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛、シリカなどさまざまな鉱物質が水に溶けているのが、自然水の特徴である。適度のミネラル含有量は、五十~二十ミリグラムリットルとされ、こくがあり、まろみを保っている。

 そして何より、私たちにとって一般においしいと感じられるのは、生温かい水より冷たい水である。湧き水や井戸水が水道水よりおいしいのは、成分差もあるが、第一に水温が適当に低いからである。

 その上、湧き水や、湧き水の集まりの谷川の水、地下水がおいしく感じられるのは、良質で低温な自然な水であって、土壌を通過して、ろ過される間に不純物は除かれ、適量の炭酸ガス、酸素、ミネラル、カルシウム、マグネシウムを溶かし込んで現れる水だからである。

 だが、人工的に作り出す蒸留水とは違って、自然水にはバクテリアや塩素化有機物など多少の汚染がないとはいえない。が、そういう自然水になじんだ動物の肉体には、そのほうがむしろ生命の水なのである。

 特に、できるだけ冷たい自然の水の価値は大きい。そのために、中国では、雪解け水が不老長寿の薬と古くからいわれてきた。いつまでも若い気でいる老人をたしなめることわざに、「年寄りの冷や水」などというのがあって、冷たい水は敬遠されがちだが、本物の冷水を愛用するのは大いに結構。細胞にとっては冷たいほうがよいのである。

 水は低温になるほど、その分子構造が緻密になっている。つまり、普通の水道水は十三個ほどの水分子が集まって分子集団(クラスター)を作っているといわれているが、冷たい水は分子集団がより小さく形成されているために、細胞組織に浸透しやすく、取り込まれやすい。

 さて、自然の生水の価値が大きいといっても、一般の多くの家庭ではどうしても水道水に頼らなくてはならないだろう。そこで、一般家庭での飲料として一番ふさわしい水となると、沸かした湯ではなく、水、それも、できるだけ氷を溶かした水を飲んだほうがいい。

 いったん沸騰させてしまった水は、高温の作用でその生命ともいうべき分子構造が破壊され、別の結合状態となってしまう。そのため、細胞には吸収されにくくなり、体内を素通りしてしまうようなことになる。同時に、煮沸によって水の中の酸素、炭酸ガスの含有量が非常に減少しているため、決してよい飲み物とはいえない。

 一方、水が凍った時にできる美しい結晶格子のような分子構造は、生体の細胞の分子構造ときわめてよく似ているので、細胞が実にその水を吸収しやすくなる。言葉を換えていえば、氷の分子構造は、生命体の分子構造の中に、そのまま入っていけるのである。

 いったん凍った水は、再び解けて普通の水に戻っても、氷であった時の特殊な分子構造が残っているものである。つまり、その水の中に、氷の分子構造を持つ無数の小さな島を浮かべているのだ。しかも、その小島に摂氏三十度の熱を加えても壊れない。

 水が凍ると、赤ん坊が喜ぶガラガラの玩具のような形に美しい結晶格子を作るが、その美しい結晶格子を持つ小島こそ、人間の細胞にエネルギーを与える、生命の水の秘密なのである。

 人間の蛋白質、脂肪、炭水化物の分子構造は、氷の分子構造と酷似しているから、普通の水より氷を解かした水のほうがよく吸収されるし、分子構造を傷つける恐れもない。また生物の老化の原因の一つとして、細胞の分子が傷つき、それが生体内に蓄積されるからだという説もあるが、平常から冷たい水をたっぷり飲んでいれば、氷の結晶構造を持つ分子が細胞の傷を補修するから、若返りにも役立つわけである。

●飲料水との上手なかかわり方

 昔は暑い季節になっても、氷を手に入れることは一仕事だったが、冷凍庫のついた電気冷蔵庫が普及したお陰で、どこの家庭でも簡単に氷が作れるようになった。せっかくのフリーザーを大いに活用し、毎日の飲み水はぜひ、生き生きした冷たい水にしたいものである。

 酒屋で売っているぶっかき氷、富士山の氷穴の天然氷などを買ってくるのも一案で、溶解して飲むのもよいだろう。

 水道水について述べると、二PPM程度の塩素含有量の水道の水、つまり日本の大都市の飲料水だと、まず金魚は死んでしまう。魚も人間も、酸素を呼吸して生きているのであり、金魚は水中の酸素を摂取しようとして、水道水中の殺菌、消毒用に使用された発ガン性の塩素ガスを一緒に摂取して死ぬのである。

 こんな水が、人間にもよいわけはないが、水を大量に消費する大都会に暮らしている以上は仕方がない。

 日本の水道は最近、夏場を中心に、臭い水の苦情が相次いでいる。これは、水源の湖などに発生するプランクトンに含まれている物質が原因。かつては山奥にあった水源地近くに、人間が住むようになったために、生活排水などで富栄養化したのが影響したとされている。

 また、テレビ番組で、東京と大阪の水道水を点検した結果、二十四種の化学物質を検出したと報道されたりしている。私が対談した医学博士によると、水道水でも、厳密にいったら二百五十種類ぐらいの生体異物、まあ毒物が入っているという。

 こういう水道水に不安を抱く人は、日本や世界のミネラルウオーター類が売り出されているし、おいしい水を作るという触れ込みの家庭用浄水器が市販されているので、利用してみたらいいだろう。

 家庭用の浄水器には、活性炭などを使用して不純物や異臭を取り除く水道蛇口直結型の浄水器から、水を分離してアルカリイオン水と酸性イオン水を別々にホースから取り出す電気分解式イオン水製造器、超微量の二価三価鉄塩に誘導された水であるパイウオーター製造器まで各種ある。値段も高価な物から、数千円程度の製品までいろいろある。

 ほかにも、最近はティーバッグ式の浄水剤や、沸かしたお湯から水道水のカルキを抜くという保温機能つきの電気ポットなどが、相次いで売り出されている。

 それぞれの効用も盛んに宣伝されているので、比較検討して使用されることを勧めたい。

 

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