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健康エッセー

‖北京オリンピックを機に実践する速足歩き‖

 2008年6月15日

アジア三回目の夏季オリンピックが迫る

 夏季オリンピックでは第二十九回に当たる北京オリンピックが、八月八日から二十四日までの十七日間、中華人民共和国の首都・北京を主な会場として開催される。アジアで夏季オリンピックが開催されるのは、一九六四年の日本・東京大会、一九八八年の韓国・ソウル大会に続いて、三回目。二十八競技、三百二種目に渡るスポーツの祭典が、世界の人々の耳目をひくことだろう。

 開会式は、中国時間で二〇〇八年八月八日二〇時八分(午後八時八分、日本時間では午後九時八分)に行われる予定。八という数は縁起が良い、とされている国なのである。

 ここ数回の夏季オリンピックではメダル獲得数で上位常連の中国にとって、金メダル獲得数で第一位になる可能性のある大会でもある。第二次世界大戦後に開催された夏季オリンピックで、アメリカ合衆国とロシア(旧・ソビエト連邦)以外の国が、一位になった前例はない。チベットの暴動と弾圧、外国で荒れた聖火リレー、衝撃の四川大地震に続いて、八月も世界のメディアの注目が中国に集まる。

 四年前のアテネオリンピックで、金メダル十六個を含む三十七個のメダルを獲得した我が日本は、金メダルの二けた獲得を目指している。しかし、日本オリンピック委員会(JOC)の強化担当者のコメントでは、陸上、水泳など主要競技の世界選手権の結果を踏まえ、「北京五輪でのメダル獲得は現状で金五、銀六、銅十六の計二十七個」と、厳しい予測が出ている。

■速足歩きで、汗をかく効用の見直しを

 さて、テレビやインターネットの動画、あるいは隣国の会場に直接出向いて、世界のスポーツ・エリートたちの熱い闘いを観戦する予定の読者の方々には、ご本人自身が自然の中や街の中を大きく手を振りながら、速足で歩き回って、汗をかくという効用を見直してもらいたいもの。山紫水明、四季分明の自然に恵まれた日本であるから、都会にも出掛ける場所は、たくさんあるはずである。

 近頃の人間は、エアコンなど冷房設備の整った建物の中で生活を営み、移動する際にも冷房された自家用車、電車、バス、あるいは飛行機、船舶を利用するため、汗をかかなくてすむようになった。真夏の候でも、暑さ知らずで過ごす人もおられることだろうが、それによる弊害のあることも知ってもらいたい。

 人間、尿が出なければ大騒ぎする。汗をかかないことも、人間の生理にとっては一大事。歩いて汗を流し、体を鍛えるということは、人間にとって大切なことなのだ。

 とりわけ、大気や食品、水道水の汚染が問題とされている昨今、有害物質を全く取り入れないということは不可能に近いが、人間の体というものは幸いなことに、自動的に有害物質を体外に排泄する機能を完備している。それが、皮膚に備わった汗腺である。

 休日に限らず朝晩には、外を歩いて汗を出すことである。真夏には、冷房にあまり頼らず自然に汗を出すことである。汗をかくことによって、体温の調節ばかりか排泄の機能も果たされる。

 今日、冷房病などという結構な病に悩まされる人がいたり、太りすぎの肥満症にかかっている人が多くいたりするのは、まさに文明病であり、運動不足の結果といえる。

 冷房病、肥満症の人ばかりでなく、誰もが健康法の一つとして、足腰の筋肉を中心に、労をいとわず自らの体を使うということを忘れてはならない。人間の体というものは、使わなければそれだけ衰えていく。あまり大切にしすぎても、かえって体のためにならない。

■足は脳を養い、脳は手を養う

 この点、一般の社会人が健康状態を維持するには、一日に三十分以上歩く必要があるとする、いろいろな機関の医学的研究が発表されている。

 一日の歩数の多い人ほど、心電図異常の発現が少ないとか、動脈硬化を助長する高脂血状態が改善されるという発表も見られる。速足歩きなどを行うと、血液中の余分な脂質が燃焼し、善玉コレステロールも増えるために動脈硬化が防止され、その結果、脳へよい血液が多量に循環されることになる。

 私たち人間は普通、一分間に七十〜八十歩の速度で歩いているが、速足歩きとは百歩前後にスピードを上げること。時間は、一日に二十分から三十分程度で結構。

 この人間の体を支える足を使って歩くことによって、当然、足の衰えを防ぐことになる上、血液の循環がよくなって血圧も調整されるばかりか、脳の働きも活性化する。

 歩く際には、足の筋肉の中にある感覚器の筋紡錘から、しきりに信号が出て、大脳へ伝えられる。大脳のほうは、感覚器から網様体経由でくる信号が多いほどよく働き、意識は高まって、頭ははっきり、すっきりするようにできているのだ。

 人間の若さは大脳に集約されて現れ、「足が衰えると長生きできない」などと巷間に伝わるのも、足の筋肉から大脳へ行く信号が減り、弱くなるためである。

 歩くのに使われる筋肉、すなわち歩行筋と呼ばれているものだけで、我々の全身の筋肉の半分以上を占めている。歩くという単純な運動を続けるだけで、大脳ばかりか、体の多くの筋肉を鍛えることができる。

 言い換えれば、足の筋肉が大脳を養っており、筋肉の衰えが大脳の衰えに直接つながるということである。

 人間の二本の足は、今どうなっているかという信号や情報を多量に、かつ盛んに大脳に送り続けている。つまり、足は末端から大脳へという求心性の制御機能を多く持っているのである。対して、手は大脳から末端へ指令が出る遠心性の制御機能を多く持っている。

 そのために、脳は手を養い、足は脳を養っているといわれたりするのだ。

 足や胴体に多い求心性に優れた筋肉には、遅筋線維が多く、物を投げたり、つかんだり、けったりする際に主に使われる遠心性に優れた筋肉には、速筋線維が多くある。速筋線維、すなわち相性筋線維は、年齢とともに委縮して大きな力は出せなくなるが、遅筋線維、すなわち緊張筋線維のほうは、速足歩き程度の運動をしていれば委縮することはない。

 そして、この遅筋線維を衰えさせないことが、脳のために重要なのである。というのも、遅筋線維は、立ち上がることや歩くことが減ると、筋線維の数を減らしてしまうからである。すると、脳の働きを活発にさせる機能が弱くなってしまう。

 不断の歩行により、大地に足を印することは、脳に微妙な刺激を与え、脳の疲労を除き、脳を健全にすることにも役立つことを忘れないでほしい。

 頭をはっきりさせるばかりか、歩くことの刺激によって、人体の横隔膜の下にある肝臓、胃、腸、脾臓、すい臓、腎臓、膀胱、それに女性ならば子宮などの臓器において、停滞している機能が適度にほどけて、働きが活発になる。

 同時に、横隔膜の上位にある心臓も肺も、機能的に血液の循環をよくし、血液への酸素供給が盛んになるため、当然、意識はすっきり、気分はさわやかになってくるのである。血液の流れが速くなるので、血管にたまった汚れを掃除する。血管が膨張して、若返る。しかも、刺激が強すぎることもない。

■歩きで精神的ストレスを軽減できる

 歩くことは、非常に有益な運動なのであり、精神的なストレスも軽減できる。

 私たち人間の肉体はよくできたもので、外界から刺激や緊張などのストレスがかかると、これをはね返そうと働き、体を鍛える。運動の原点は、ここにある。

 加えるに、運動によって、脳の中に天然の鎮痛剤であるエンドルフィンという物質が分泌される。モルヒネの数百倍とされる効き目があり、不安の痛みを鈍らせ、ストレスの影響を緩和するといわれている。

 しかしながら、ジョギングなどの強い運動をすると、攻撃性の強い酸素分子で、万病の元になる活性酸素が体内に発生するために、健康に有害な面もあるといわれる。歩くといった緩やかな運動の場合は、脳内ホルモンが出て活性酸素の害を中和してくれる。その意味でも、歩く運動は適しているのだ。

 歩きが減量とか、体重維持に効果があることも、以前から実証されているところだ。

 すなわち、歩くことは、脂肪を燃やすための非常に優れた運動なのである。生活習慣病の大きな原因が肥満、つまり体に脂肪をためすぎてしまう点にあることは、一般によく知られていることだろう。生活習慣病世代である中高年には、過激な運動は向かない。脂肪を燃やすための、できるだけ緩やかな運動が適しているのである。その運動の筆頭が歩くことなのだ。

 やはり、私たちの体は頭と同様、上手に使うことが、その健康維持に大切。頭でも足でも使わないと、だんだん委縮する。機械化、自動化、省力化が進むにつれて、人間の体力は当然落ちていく。とりわけ下半身に力のない人は、概して感情や圧力を起こしやすく、ヒステリー的である。

 なるべく下半身を鍛えるためにも、二本の足で歩くという人間の自然な、根源的な行為を大切に心掛けたいもの。私たち人間は足で立っている動物だから、体が大切ならば足の運動は欠かさずやるべきなのである。

■高い運動効果が得られる坂道や階段歩き

 今の日本では、十五歳以上の平均歩数は、一日七千歩弱とされている。毎日の通勤、通学の際には、一駅前で下車して歩く、買い物の時はいつもより遠くの店へ行くなど、意識的に工夫をしたり、特別な運動プログラムを組んで、読者の方も一日三十分以上、ないし一日一万歩を目指して努力してはいかがだろうか。

 一番よい歩き方は、ブラブラ歩きではなく、姿勢をよくして大きく手を振って、サッサと大股に歩くことである。できるなら、舗装した歩道でなく、地面から大地の磁気を受け得るような、土のにおいのする道を歩くこと。

 また、減量や筋力アップを目的に速足歩きをする人には、毎日のウォーキングコースの中に坂道や階段を取り入れる運動プログラムがお勧め。坂道や階段での歩行は、平らな道を歩く時に比べて筋肉への負荷が増し、運動効果もより期待できるのである。

 例えば、傾斜角度が十度ほどの緩やかな坂道でも、平らな道を歩く時のおよそ三倍のエネルギーが必要とされ、減量や筋力アップに高い効果も得られるのである。

 坂道、階段では、足元に注意を払うことは当然必要だが、うつむいたまま歩かないようにしたいもの。上り坂では上体が前傾に、逆に下り坂では後傾になりがちだが、背筋を伸ばし、上体は重力に従って垂直に保つようにしてほしい。また、歩幅は平らな道を歩く時よりも、やや狭くするほうがよいだろう。

 経験を重ねることで、負担の少ない正しい姿勢を身に着け、より効果的な歩きを楽しんでいただきたい。上り坂の歩行は心臓への負担も増し、下り坂でも間違った歩き方をすると、足腰に負担をかけ、無駄に疲労を残してしまうことには、くれぐれもご注意を。

 階段を使って歩く場合も、まずは安全に一歩一歩、確実に上り下りすることが大切。上りの階段では心肺機能に、下りの階段では足の関節への負担が大きい運動になるため、安全な歩き方を行なう必要があるのだ。

 階段を上る時は、体をやや前傾にしながら足の裏全体で着地し、足の親指の付け根を意識して、その上に膝を乗せる感覚で上れば、膝への負担が軽減される。下りの階段では、重力にも助けられて楽に感じても、勢いよく駆け下りると膝に衝撃を与えてしまうので、注意していただきたい。

 安全な歩き方を身に着けるようにして、会社内での移動をエレベーターから階段に変えてみる、通勤途中の駅でエスカレーターを使わずに階段を上ってみる、などを実践してほしいもの。

 「よしっ、今日から減量だ、筋力アップだ」と、すべての上下移動を階段に変える必要はない。所々で二本の足を使って歩く機会を増やし、それが習慣化して毎日の歩数アップ、健康状態の維持、さらには大脳の働きの活性化につなげることを心掛けたいものである。

 

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