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‖かぜ症候群を知る‖

 

●かぜを侮るべからず●

 「かぜ」は、口、鼻から肺までの空気の通り道である呼吸器が微生物や寒さの刺激を受けたことにより、さまざまな反応を起こした状態を示します。正確には、「かぜ症候群」あるいは「かぜ疾患群」といいます。

 ごく軽いかぜを含めると、人は1年間に平均6回かぜをひくという統計があります。呼吸器は四六時中、外の空気に接していますから、トラブルが多くなるのも無理からぬことです。

 軽い症状のまま約1週間で治ってしまうことがほとんどですが、場合によっては重い合併症を起こすこともあります。昔から「かぜは万病のもと」といわれてきたように、かぜを決して侮ってはいけません。 

●なぜ、かぜにかかるのか?● 

1.かぜの原因 

 かぜは寒さやアレルギー反応で起こることもありますが、多くの場合、病原微生物(病原体)の感染が原因で起こる呼吸器の急性炎症です。

 かぜを起こす病原体にはウイルス、マイコプラズマ、細菌、クラミジアがありますが、かぜの原因の80〜90%をウイルス(かぜウイルス)が占めています。

 かぜウイルスには、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、レオウイルスがあります。

 これらのウイルスは呼吸器以外でも感染を起こすものがあり、アデノウイルスは眼の病気や乳児の下痢症、エコーウイルスは髄膜炎の原因にもなります。 

2.かぜに何回もかかる理由 

 体は、ウイルスに一度感染するとその免疫ができて、次にそのウイルスが入ってきた時には、迅速に攻撃してやっつけてしまう仕組みを備えています。

 しかし、この免疫はいつまでも残っているわけではありません。また、ウイルスには多数の型があり、同じ種類のウイルスでも型が違うと免疫は十分には働きません。そのため、異なるウイルス、また違う型のウイルスが侵入してくるたびに、かぜをひくことになります。 

3.ウイルスの感染と体の反応 

 ウイルスによるかぜをひいている人の痰や鼻水は、たくさんのウイルスを含んでおり、くしゃみや咳をした時にしぶきとなって飛び出し、空気中に漂います。そして、近くにいる人に吸い込まれ、ほとんどが鼻の粘膜にくっつきます。

 ウイルスは粘膜にある感染防御機構と戦い、それに勝利すると粘膜の細胞の中に入り込んで増え始めます(感染の成立)。

 やがて、ウイルスは細胞内を埋め尽くして、ついには細胞を壊します。体は、これに対して「炎症」で応じます。これが急性鼻炎です。

 そして、感染が奥に進むにつれ、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎が起こります。病名で○○炎というのは、炎症の炎なのです。

 なお、かぜウイルスの中には痰や鼻水だけでなく、結膜や便の中にも出てくるものがあります。その場合は、結膜や便に直接触れることでも感染します。 

●症状● 

1.炎症の場所によって異なる症状 

 鼻の炎症は急性鼻炎といい、くしゃみ、鼻水(水状→粘液状→黄色い膿状)、鼻詰まりなどの症状を起こし、のどの炎症である咽頭(いんとう)炎では、のどの粘膜の充血や腫れ、痛みを訴えます。

さらに、感染が呼吸器の奥へと進んだ喉頭(こうとう)炎では、声がれ、時には呼吸困難を起こし、気管、気管支、肺に至ると、咳や痰が出るようになります。 

2.その他の症状 

 かぜには、前述のような呼吸器症状のほかに、頭痛、発熱、腰痛、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状があります。また、腹痛、下痢などの消化器症状が加わることもあります。

3.かぜの病型 

 これまで説明したように、かぜの症状はさまざまです。そこで、全身症状があるのかないのか、呼吸器症状は何が中心かということで、8つの型(病型)に分けられています。個々のかぜウイルスについて、よく見られる病型というものはありますが、同じウイルスでも場合によってさまざまな病型のかぜを起こします。 

主な病原体によるかぜの病型 

* インフルエンザ:インフルエンザウイルス

* 普通感冒:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ

* 咽頭炎:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ、細菌(レンサ球菌)

* 咽頭結膜熱:アデノウイルス

* クループ:パラインフルエンザ・インフルエンザウイルス

* 気管支炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

* 異型肺炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス

* 肺炎:インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌) 

4.インフルエンザ 

A.インフルエンザとインフルエンザウイル 

 インフルエンザは、高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型のかぜをいいます。悪寒とともに39〜40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状の後に現れてきます。

 こういった全身症状が強いかぜは、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他のかぜウイルスが起こすこともあります。

 また、インフルエンザウイルスが起こすかぜは、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻かぜ(鼻水、鼻詰まりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型のかぜ)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。 

 インフルエンザウイルスが感染して、症状が出るまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

B.インフルエンザが怖いわけ 

 インフルエンザが怖いのは、65歳以上を中心にインフルエンザウイルスに感染した人の約1%が肺炎を合併するからです。インフルエンザに肺炎を合併すると、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。

 インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがたまにあり、また、いったん治ったように見えながら2〜3日で肺炎になることもあります。

 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く流行も目立ちません。一方、A型とB型、特にA型は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

5.マイコプラズマ肺炎 

 マイコプラズマ肺炎は、細菌より小さくウイルスよりやや大きいマイコプラズマという病原体が起こす異型肺炎という型のかぜです。

 のどが赤く腫れて痛み、38℃前後の発熱、激しい乾いた咳、胸痛があります。潜伏期が2〜3週間と比較的長く、感染力も強くないため、爆発的に流行することはありませんが、約4年ごとに流行しています。

 時として、重い合併症を起こすことがあります。

 





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●合併症● 

 かぜの合併症としては、中耳炎(ちゅうじえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などが一般的ですが、最も注意を要するのが肺炎です。

 肺炎は、ウイルスによるかぜで抵抗力が弱ったところに、細菌(ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌、レンサ球菌など)が感染して起こります。インフルエンザによる死亡の8割は、肺炎が原因なのです。

 その他、筋炎、心筋炎、また、神経系の合併症(ライ症候群、脳症、ギランバレー症候群、急性小脳失調症、脊髄炎(せきずいえん)、多発神経炎、髄膜炎など)もあり、うっ血性心不全や心筋症などの慢性の病気が悪化することもあります。 

●治療法● 

1.一般療法 

 体の回復力を高めるには、安静と睡眠が大切です。38℃以上の熱がある場合は、安静を助けるために水枕、氷枕を当てます。

 体力をつけるには、食事も大切です。かぜの時には胃腸の働きが落ちるため、葛湯、おかゆ、スープなど、消化が良く水分の多いものにします。

 かぜをひいた人が休んでいる部屋は、気温を18〜20℃、湿度を60〜70%に保ちます。空気が乾燥していると、呼吸器の粘膜が乾燥して抵抗力が弱くなり、感染しやすくなるからです。

 乾燥はインフルエンザウイルスの好むところで、湿度30%で最も盛んに増えるためでもあります。 

2.薬物療法

 かぜの時に使われる薬は、かぜの症状を抑えるためのもの(対症療法)と、細菌を殺すためのもの(化学療法)とに大別されます。かぜの原因のほとんどはウイルスですが、現在のところ、かぜウイルスに効く薬はありません。 

A. 対症療法

●抗ヒスタミン剤:鼻水、鼻詰まり、くしゃみを抑えます。

●うがい薬、口腔用製剤(トローチ):咽頭(いんとう)痛がある時に使います。

●解熱鎮痛剤:発熱は、病原体をやっつけようとする体の正常な反応です。ですから、やたらに熱を下げるのは、決していいことではありません。そこで、解熱剤は38℃以上の発熱、強い頭痛や筋肉痛があり、苦痛のために体が衰弱するような場合に限って使います。

●消炎鎮痛解熱剤:頭痛やのどの痛みが強い時に使います。熱を下げる作用もあります。

●鎮咳剤:咳には、痰を伴う湿った咳と、痰を伴わない乾いた咳とがあります。痰がある場合は、咳は痰を出す役目をするので、止めない方がよいのです。しかし、乾いた咳は安静や睡眠を妨げて体力を消耗させるだけなので、鎮咳剤で止めてしまいます。

●去痰剤:痰の粘りけが強く、気道にくっついて、なかなか出せない場合に使います。痰に水分を補ったり、痰を分解する働きのある薬です。

●総合感冒剤:対症療法剤を2種類以上組み合わせた製剤です。製剤によって、組み合わせや量が異なるので、症状に合わせて選ぶ必要があります。 

B. 化学療法

●抗生物質:抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬です。かぜでは、細菌が原因であることは少ないのですが、かぜで抵抗力が落ちたところに細菌が感染(二次感染)するのを予防するために、抗生物質を使うことが少なくありません。発熱がある場合、特に重症になる恐れのある高齢者や慢性の病気を持っている人には、欠くことのできない治療です。

●かぜの予防●

1.簡単にできること 

 空気中には、ウイルスを含む細かい粒子が浮かんでいて、特に混み合った電車やバス、保育園や学校の教室など、人が多く集まる場所、また、かぜをひいた人がいる部屋では、ウイルスが高濃度で漂っています。そこで、かぜの予防の第一は、このような場所を避けることです。

 インフルエンザウイルスやライノウイルスに感染した人が休んでいる部屋では、湿度を60〜70%に保つと、ウイルスの増殖が抑えられ、呼吸器の抵抗力を保つことにもなり、家族への感染を少なくすることができます。

 手洗いやうがいの励行も、予防に効果があります。そして、何よりも体調を整えて免疫力を保つことです。

 睡眠不足、栄養不足、気のゆるみなどの生活上の乱れや、強すぎる精神的ストレスがないようにしましょう。女性では、生理中はホルモンの関係でかぜをひきやすくなるのでご用心ください。 

2.ワクチン 

 ワクチンの予防接種とは、培養したウイルスの一部を体に入れて血清内に免疫を作らせ、本当のウイルスがやってきた時に、その免疫性による抵抗力でやっつけてしまうことを目的としたものです。現在のところ、かぜウイルスでは、インフルエンザウイルスだけにワクチンがあります。

 流行の直前に、流行するインフルエンザウイルスと同じ型のワクチンを打っておけば、そのウイルスが体に入ってきた時、確実にやっつけることができます。また、ワクチンの型が流行しているインフルエンザウイルスと少し異なっていても、侵入してきたウイルスの増え方を抑える効果があります。

 つまり、ワクチンを打っておけば医師にかかるほどの症状にはなりにくく、なったとしても入院するほどの重症化はしない、と見なされています。重い合併症で命を落とす危険も、少なくなります。

 このように、ワクチンはインフルエンザの予防に有効です。特に、体力や免疫力が低いためにインフルエンザにかかると重症になりやすい高齢者や乳幼児、また、集団生活が流行の温床となる幼小児にとって、確実に役に立つ予防法です。 

3.重症になりやすい人 

 かぜは一般には軽い病気ですが、高齢者や乳幼児、慢性の病気(基礎疾患)を持つ人では、合併症を起こして重症になることも珍しくありません。

呼吸器の病気を持つ人: 気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎など

心臓の病気を持つ人: うっ血性心不全、弁膜症、狭心症など

腎臓の病気を持つ人: 慢性腎不全、透析患者、腎移植など

代謝性の病気を持つ人: 糖尿病、アジソン病など

免疫力が低下している人: 免疫不全状態

その他の人:高齢者、妊産婦、乳幼児など 

 以上の方々は、かぜにかからないよう平常から予防することが大切です。手洗いやうがいを何度でも励行し、インフルエンザが流行する時期に近付いたら、先述したワクチンを受けておきましょう。

 また、人混みに近付かないことも、立派な予防法です。うっかり、かかってしまった場合は、重症になるのを防ぐために早めに治療を受けてください。 

 「かぜ症候群」について説明しました。皆さんの健康を守るために、少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などある場合は、お近くの掛かり付け医などの医療機関にご相談ください。

 

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