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‖読書で脳細胞を刺激する1‖

●尊重したい脳細胞の要求

 人間は一日ざっと、八時間くらい眠る人が多いようだから、生涯の三分の一は床の中という計算になる。睡眠に費やす時間がもったいないからと、省略するわけにもいかなければ、まとめてすます寝だめもできない。

 人間は、人生の三分の一を、眠りに当てなければならないようにできているのである。 それはなぜかといえば、まさか人間を使って試してみるわけにはいかないが、小犬を眠らせない実験をすると、脳細胞は一週間もすると壊れ始める。

 つまり、脳細胞は鋭敏な代わりに、すこぶる疲れやすいものなのである。人間は脳細胞の疲労回復のために、眠るわけだ。

 「ああ、眠くなった」というのは、脳細胞が「もう疲れました」と危険信号を発しているものと思っていいだろう。

 よく「眠れない、眠れない」と、こぼしている人があるが、脳細胞は疲労がぎりぎりのところまでくると、必ず休息、すなわち睡眠を要求する。極論すれば、眠くない人は、眠る必要がないのだといってもよいくらいである。

 いずれにしても、脳細胞の要求は尊重したいものである。

 というのは、脳細胞は百四十億から百五十億あり、その中の四億個がものを考える作業をする細胞であるが、これら脳細胞の成長は十八歳から二十歳までがピークで、その後は減りこそすれ決して増えることはない上に、一度壊れたら最後、いくら養生しても埋め合わせのきかない貴重なものだからである。

 手足の皮膚の細胞などは、少々の切り傷、擦り傷ではびくともしないが、脳細胞はちょっとわけが違う。眠りによって脳細胞を休ませる必要は、誰もが拒めない義務のようなものであるわけだ。

 この脳については、すでにギリシャ時代、医学の祖ヒポクラテスが、次のように書き残している。

 「人間は脳によってのみ、歓びも、楽しみも、笑いも、冗談も、はたまた、嘆きも、苦しみも、悲しみも、涙の出ることも知らねばならない。特に我々は、脳あるがゆえに、思考し、見聞きし、美醜を知り、善悪を判断し、快不快を覚えるのである」。

 現代の日本の脳生理学者は、「脳が人間のすべてであり、高度に分化発達した大脳皮質である新皮質のすべてが人間性の根源である」といい切っている。右脳と左脳の役割分析も、注目されているところだ。

 私は脳も体の一部分で、人間は脳とすべての器官を使って考えているという見解に立つにしろ、精神と心の問題は、脳の働きと切り離すことができない。「気」によって、健康が大きく左右されることは、日常体験していることであるが、肉体に生じる「気」が湧きいずる座の一つは、大脳辺縁系にあり、精神と肉体のバックボーンになっているのである。

 人間の若さは、大脳に集約されて表れるといっていい。脚が衰えると長生きできないといわれるのも、足の筋肉から大脳へゆく信号が減り、弱くなるためである。歩く時には足の筋肉が働いているので、その中にある感覚器の筋紡錘からは、しきりに信号が出て大脳へ。大脳は感覚器から網様体経由でくる信号が多いほどよく働き、意識は高まって、頭ははっきりするようにできている。

 しかし、脳細胞を老化させるのは足などの筋力低下だけではない。精神生活でストレスや不安が続いたり、気疲れしたりすると、大脳に強いダメージを与える危険がある。

 逆に、喜びの心、たくましく生き続けようとする盛んな意欲などは、大脳の若さを保つ特効薬である。

●読書で頭脳を明晰に保つ

 そして、決して枯れることがない知識欲を満たす読書、それによる感銘などは、確実に若さをよみがえらせてくれる原動力になる。

 本に夢中になりすぎて、悪い姿勢を続け、体調を崩すのは感心しないが、誰もが余裕があるなら、せめて一日に一、二時間ぐらい心の糧となるような書をひもとく時間を持ちたいものである。

 人間は年を取るにつれ、つまらない雑用がやたらと多くなる。読むものは新聞、せいぜい週刊誌程度である。よほど向上心の強い努力家でない限り、研究書や新刊書の読破、あるいは古典の世界を散策するなどのことは不可能に近い。

 だいたい、年を取るにつれて知識欲も薄れ、求知心に乏しいのであるから、吸収される知識はきわめて微量でしかない。

 これでは大脳を刺激する適量にも達しないのであり、脳の血流の貧困から脳軟化症をわざわざこしらえているようなもので、忘却現象が加速度を駆って起きるのは当たり前である。

 現実はかくのごとくであるから、特に老人は努めて客観の世界を風化させないよう努力する必要がある。それには若い人に交わったり、読書などで新知識を求めることを怠らぬことである。それこそ頭脳を明晰に保つ方法なのである。

 定年退職した人の場合などは、余裕のできた時間を活用して、読書の趣味を持つことで、今までの仕事だけが生きがいだという、狭い価値観を作り替えることもできるはずである。

 老年や壮年ばかりでなく、若者も心掛けて、読書などで頭の訓練もうんとやっておくべきであるし、肉体の訓練のほうも怠ってはならない。頭と体の練磨が、人間性の「培根」につながるからである。

 培根とは根を培(つちか)うと書くのであり、すべて物事には根があり、根源の問題がある。例えば、人間の体をはじめとして、命には命の根があるというようにである。

 人間は、常に物事の根源は何かを探究すると同時に、その根本を培い、養うことが大切である。根本をおろそかにして、結果のみをむさぼれば、万事は労して功なく、そのために多大な損失を招き、ついには命取りになりかねない。だから、根の力が充実するほど、物事は発展し、生長し、繁栄するという自然法則に従って、学習に、健康に、あるいは事業に、決断に努力すべきである。

 言い換えれば、培根とは天に通ずる感覚力の培養である。この培根を忘れた企業は、必ず弱体化する。これを人間に当てはめれば、若いうちにせっせと根を培い、修行しておくべきだということになる。山登りでも、スポーツでも何でもよい。つらいと感じること、苦しいと思うことをやり抜いて、自分に記録を作っておくことが肝要だ。生涯のうちどれほどプラスになるか。そういう体験なくして青春を過ごすことは賢明ではない。

 むしろ進んで苦しい体験をしておくべきだと思う。老後の健康生活のために、若いうちにしておいた苦しい体験は必ず役に立つ。

●いつかわかることとの出合い

 独り肉体の経験だけでなく、読書などで頭の訓練もうんとやるべきだ。ことに吸収力の強い十代、二十代は、何でも広く取り込んでおくのがよい。乱読で少々雑学に流れても、いろいろ色彩豊かに吸収しておくがよい。

 乱読や多読は、ともかく量を読むことを第一にしているといってよいだろう。一方、精読、熟読は、はじめから終わりまで、一字一句ゆるがせにせずに読んでこそ、著者の考え方が理解できるという考え方に立っている。

 その一つの乱読は、知的好奇心から始まる。好奇心を持って読んだ本は、たとえ乱読といえども情報として脳に記憶される。そして、それが新たな好奇心を呼び起こし、人間は欲求を満たすべく、さらに多くの本を読もうと、自然に効率的な読書法を身につけていくのである。

 特に若い人は、いつか真理がわかるその日のために、前もって多くの本を手当たり次第に、読んでおくことが大切ではないかと思う。

 読書の対象を広く持ち、あれもこれもと、あらゆる分野の本に手を広げてみると、よほど性に合わないものでない限り、興味が湧き、知識が深まり、さまざまな発想も得られるはずである。

 また、いつかわかるために一生懸命、突き詰めて読書し、考えておくことも大切だ。そうすれば必ず、わかるタイミングが向こうからやってくるのではないだろうか。

 本というものは、少年少女の頃はじめて読んだ時には全然意味がわからなくても、空暗記して、お経のように、口ずさむことができるようになると、次第に、意味がわかってくるものだ。「読書百遍意自ら通ず」とはよくいったもので、まさにその通りである。

 こうした乱読、精読を通じて、若いうちにしておいた読書体験は、必ず役に立つ。日頃から幅広く、あるいは突き詰めて本を読んでおくと、思わぬ時に、思わぬ形で、目先の障壁を突破する視座を与えられるものなのである。若い時は二度ないからこそ、若いうちでなければできない貴重な体験をしておくべきだ。

 要は読む習慣をつけることが大切なのであり、それが自己啓発につながると、必ず将来役に立つ時がくる。大きく伸びるためにはぜひ必要である。

 こうした読書習慣を通じて、大きく伸びた人物の一人として、ナポレオンがいる。ナポレオンの睡眠時間がたった四時間だけだったという話は有名であるが、後の二十時間、彼はひたすら読書をしていたのである。

 政治力、戦略、軍事力、指導力をはじめ、人格すらも、独特の読書法から培われたといわれている。彼はその自分の頭脳に基づいて、大帝国を築いたのであった。

 イマジネーションが頭に目覚ましい影響を与えることは、周知の通りである。イマジネーションというものは、右脳がまず働き、次にそれが左脳をリードすることによって生まれ、創造力につながっていくのである。そして、この両者の機能を意識的に使い分け、想像力を磨く訓練をすれば、右脳を含めた脳の機能全体の活性化につながっていくのである。

 つまり、読書を通してイマジネーションを働かせることが、思考力を養い、頭をよくするということである。

 空想や夢想といったものは、現実的な力にはならないと思いがちだが、これこそ創造の源泉であり、優れた発想のためには必要不可欠なものなのである。そのためには、読みながら考えることが大切である。

●通勤電車の書斎化の勧め

 時間に比較的余裕がある学生などと違って、社会人や主婦などの中には、読書に振り向ける時間がないという人も多いだろう。

 しかし、社会人の場合は、どうしてもある程度は本を読む必要がある。今日のように日本経済を動かす要因や企業成長の要因が複雑であって、それを理解するには膨大な知識や情報が必要な時には、何としても本を読む時間を見いださなくてはならないだろう。

 「忙しいので時間がない」というのは言い訳であって、読書の意欲さえあれば自然に時間を発見できるものだ。

 そこで、確実に本が読めるように、日常生活の中で必ず行うことの中に、読書を組み込むことはできないだろうか。可能ならば、必ず読書の習慣が身につくはずである。要するに、習慣化する工夫が必要なのだ。

 毎朝、早起きをして、社会人なら出勤する前、主婦なら家事をする前に三十分でも、一時間でも読書をすることが最もお勧めだが、通勤時間を活用して本を読む時間を生み出すのもよい方法である。

 今、大都市を中心に通勤に使われる時間は年々長くなっている。片道三時間以上かかる距離を通勤している人もいるようだが、片道一時間半はもはや普通のこととなっている。往復三時間、一日の八分の一もが、毎日の行き帰りに費やされているわけだ。

 このように相当の時間を通勤にとられざるを得ないとすると、問題は当然、その時間をどのように有効に活用するかにかかってくるだろう。

 電車やバスの中で本や新聞や雑誌を読むことを、すでに実行している人もかなりいるはずだが、工夫次第で、もっと徹底した通勤時間の読書活用法も考えられる。

 まず、朝早く起きる習慣をつけて、一時間ぐらい自主的に出勤時間を早めて自宅を出ると、新聞さえ広げられないラッシュ前のすいた電車やバスに乗れるから、座席に座ってゆったり読書できる時間を中心に、一日のスケジュールを組み替えることができる。

 今やエレクトロニクス技術の発達で、ワープロやパソコンやビデオなどが一般に普及している時代である。どうしても見たい夜間のテレビ番組などはビデオに録画して、暇な時間に見るのが無駄がなく便利である。ハイテク機器は有効に使うべきで、眠いのを我慢して、深夜までテレビに付き合う必要はないから、やる気があるなら早起きはできるだろう。

 次に、このようにして朝の電車やバスの座席を確保できたら、貴重な通勤時間の利用法を前もって決めておくのである。この時間こそ自分だけのために使える時間だから、思い切り自分の好きなことをすればいい。

 読書に意欲がある人なら、往復二、三時間の通勤電車内を動く書斎にして、せっせと励めるはずである。すいた車内で、座席を確保できるから、本の欄外に感想などを書いておくこともできる。

 机に向かわないと読書意欲が湧かないという人や、他人の存在が気になって読書に集中できないという人は、まず一日五分頑張ってみる。そして、十五分、三十分、一時間と徐々に目標を伸ばしていく。それが、電車やバスの中で、自然に読書に集中できる道である。

 通勤電車などが落ち着ける空間になったら、しめたものである。ゆっくり本を読めるようになれば、通勤電車の書斎化に成功したことになる。毎朝、電車やバスに乗る際は、読みたい本の一、二冊は持っていくことを習慣にすればいい。

 もちろん、読書ばかりでなく、仕事中心の人ならば、電車内で今日の計画を立案したり、明日の計画を考えるのもよい。アイデア開発に興味のある人ならば、カード片手にアイデアや創造性開発を研究するのもよい。囲碁や将棋の好きな人ならば、ゆったりと定石集を読んで勉強するのが楽しみとなるだろう。

 また、もっぱら英会話など語学の勉強をするのもいい。今は小型のカセットテープレコーダーやウォークマンがあるから、超満員の電車では、手を動かさなくてすむ会話の学習に最適だろう。

 このように通勤時間を利用して、人にはまねのできない大きな仕事をしている人はたくさんいる。彼らは、通勤の時間をただボンヤリしていたり、スポーツ新聞を読むことなどに費やさないで、電車やバスの中を自分専用の移動書斎、移動研究室にして、もっと有意義なことに計画的に活用しているのである。

 新聞などは朝食の時にさっと目を通すだけにして、乗り物の中では、読書をしたり、計画を立てるとか、工夫を凝らすといった創造的なことに専念する。詳しく新聞を読むのは、頭の疲れた帰りの電車の中にするといった工夫こそ、通勤時間を有効に使う方法なのである。

 朝は、すいた電車の中でゆっくりと本を読んだりして会社に着けば、始業までなおたっぷり時間の余裕があるので、一仕事も二仕事もできるだろう。普通の仕事に使わず、創造的な思考の時間に当てるのも一案である。

 

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