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∥熟睡と不眠の因果関係∥

 

●睡眠と不眠の因果関係

 現代人の関心事はいろいろあるであろうが、その中でも、「どうしたらよく眠れるか」ということについて、苦心を払い、悩んでいる人は多い。

 もし、現代人に、薬剤以外に睡眠の可能な方法が講ぜられ得るならば、大半の疾病は影を没するであろうとさえ思われるほどである。

 睡眠が十分にとれれば、睡眠の間に疲労は完全にとれ、臓器の機能的なひずみは調整され、赤血球、血糖、血圧は安定され、目覚めて起きる生活の喜びを満喫することができるだろう。

 このたった一つのことから、その人の生活を明るくし、生活に対する生きがいある感激を覚えしめることになるのである。

 ところが、眠いのを我慢して夜中まで仕事をしたり、テレビを見たりなどしていると、いざ寝床に入っても、なかなか寝つけないものである。何しろ、嫌がる脳細胞を叱咤(しった)激励して、無理やり働かせていたわけだから、その余勢というか、余じんのようなほてりが続いていて、とてもすんなりと眠れるものではない。

 体はクタクタに疲れていて、本当は眠くてたまらないのに、神経だけがピリピリいら立っている状態というのはつらいものであろう。

 「さあ、早く眠らないと明日がきついぞ」などと思うと、意識が余計にさえ返って、ますます眠れなくなってしまう。展転反側を繰り返した揚げ句、ヒルティの「眠れぬ夜のために」の教訓に従い、そんな時は少しも頭に入りはしないのに、あたりが明るくなる頃まで本を読んでしまうことも多い、という人もいよう。これでは、自分の生命を自分で縮めているようなものである。

 世界的に著名な作家、詩人で、同時に不眠症者だった人物は実に多い。彼らがきわめて優れた感性の持ち主だった証拠でもあろうし、著名な文学者にとって、不眠が優れた作品を生み出すモチーフに変えられるなら、不眠との同居も、ある程度は許容できるだろう。

 しかし、平凡で、規則的な日常生活を送らなくてはならないサラリーマンからすると、不眠の悩みは深刻である。

 不眠は夜間、正常な睡眠を妨げ、熟睡感を得ることによる精神的、身体的安定を妨害するばかりか、決まって昼間の充実した生活を阻害する要因になるからだ。不眠が原因で、仕事に集中できない。一日中神経が高ぶって、イライラしている。客と接していても、どうかすると眠り込んでしまう。サラリーマンであれ事業主であれ、これでは職業人として失格である。

 断眠睡眠不足は、研究でもさまざまな精神不安を引き起こすことが報告されている。ある報告によると、断眠が気分の変化や作業能率の低下の原因になり、さらに過敏、猜(さい)疑的、注意集中困難などになると発表されている。とりわけ、気分の変化、注意集中困難、作業能力の低下は、何も長期にわたる全断眠で現れるわけではなく、一日から二日の短期間でも起こるとされている。

●眠りが足りないとどうなるか

 しかも問題なのは、情報化社会といわれる現代社会においては、不眠の引き金となる要因が身の回りにゴロゴロ転がっていることである。日の出とともに目覚め、太陽の沈むのを合図に床に就いていた原始社会と比べ、それは比較にならないほどの多さである。

 職場のOA化によるテクノストレスなどは、その端的な例だ。複雑な人間関係から生ずるストレスも、単純な原始生活からはおよびもつかなかったことかもしれない。

 このように、現代社会は高度で発達した文明と接する機会を我々人間にもたらした一方で、緊張や不安などさまざまなストレスを生み出す要因を作った。不眠の多くが日常生活でのストレスに起因するという分析結果からも、まさに不眠は現代人特有の悩みなのだということである。

 人間が自然のリズムに逆らっていると、ついに自然から見放されて、哀れな人間になるが、不眠症もその一つなのである。

 今、アメリカ人の三人に一人が不眠を訴え、そのうち半分はかなり重症だといわれる。アメリカに多いのは、個人主義が発達して、人間同士の競争が活発だからかもしれない。

 イギリス人も四人に一人、ドイツ人やフランス人も五人に一人が、不眠で苦しんでいるという。欧米の先進国を超えるほどの発達を遂げた日本も、同程度の五人に一人が不眠で悩まされていると見るのが一般的である。

 この不眠症の一つの特徴は、高齢者に多いことである。人間は年齢とともに、眠り方が下手になっていくともいう。年を取ると、眠りが浅くなる。さらに、リューマチやぜんそくなどの病気で、余計に眠れなくなる。何度も昼寝をして、夜になると眠れない人もいる。

 ある調査によると、老人の睡眠時間は、若い世代とそれほど違わなかったが、年齢とともに睡眠の効率が低下していた。夜中に目覚めることが多くなっており、浅い眠りが増える一方で、熟睡に当たる深い眠りが減っていたのである。

 若い頃の深い眠りが懐かしく、眠りに対する飢餓感が強い老人がいる。実際はよく寝ているにもかかわらず、「全然寝ていない」といい張ったりする。

 こういう不眠が重大な問題を内包しているのは、人生の三分の一を費やす睡眠をうまく管理できなくなってしまうばかりか、人生の三分の二を占める日常生活にも、支障をきたす性格のものだからだ。

 睡眠不足で、日常生活の判断力が鈍るなどというのは枝葉末節にすぎない。本当は、睡眠不足によって生命力が衰えるのである。生命の根源が枯れてしまうのである。判断力が鈍るなどというのは、その結果としての現象にしかすぎない。実相はそんな生やさしいことではないのだ。

 肉体の栄養を食物からとっているように、生命の栄養は眠りの中にこそあるというこの真理を、ぜひ認識していただきたいものである。

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●睡眠障害のいろいろ

 「寝つきが悪くて眠れない」、「夜中に目が覚めて、それっきり寝つけなくなる」、「夢ばかり見て、寝た気がしない」など、不眠で悩む人の訴えは、実にさまざまだ。訴えにあるように、悪い夢ばかり見ているようでも、安らかな眠りにはほど遠い。

 その不眠の原因として考えられることは、寝る時に周りがうるさいといった環境の問題や、悩み事、ストレスが挙げられる。このほか、うつ病や分裂病などの精神疾患に伴うことがある。

 また、特定の原因は明らかでなく、眠れないことを悩み、寝る時に「今晩も眠れないのでは」と心配し、悪循環に陥っている人もいる。

 不眠を訴える人の中には、自分の睡眠時間を過小評価しているケースが案外あるのである。三、四時間しか眠らなくても、ぐっすり眠れたと感じる人がいるのに対し、脳波は八時間ほど眠っているのに、睡眠不足を感じる人がいる。

 実際、医者に相談にくるケースで最も多いのは、睡眠に異常が認められないのに、主観的に不眠を訴える、いわゆる偽不眠症者だという。床に入ると、「眠れない、だが眠りたい」と強く願望するあまりに、かえって眠れない精神状態を作り、熟眠感が得られないという具合である。

 まれには、夜中に息が止まる睡眠時呼吸障害という特殊な病気もある。睡眠時無呼吸症候群ともいい、起きている時は正常に呼吸しているのに、眠ると十秒から二分ぐらい、繰り返し呼吸が途切れる病気である。

 睡眠中の無呼吸は、健康な人でもよく見られるが、十秒以上の無呼吸状態が一時間の睡眠に五回以上ある時、この病気と診断される。

 脂肪が沈着するなど気道をふさぐ原因があって起きたりするもので、圧倒的に男性に多く、年を取るに従って増える。女性も閉経後に見られるので、性ホルモンが関係しているらしいといわれている。

 こういう病気の人たちは、睡眠時間をたっぷりとっているのに、昼間に眠気を感じる場合が多い。呼吸が再開する時は、覚醒時と同じ脳波が現れるので、無意識のうちに、夜中に何度も目が覚めているわけだ。酸素不足から、日中、頭の重さを訴える人も多く、高血圧や不整脈、赤血球の数の増加、心臓肥大など、さまざまな合併症も起こしやすい。これらが、睡眠中の突然死の原因の一部になっている可能性が指摘されている。

 さらに、睡眠相後退症候群という睡眠障害がある。普通、眠気は、体温が一日のうちで最も低い、午前二、三時頃に最大になる。この病気の人たちは、体温が最低になるのは夜が明けてからである。当然、眠くなるのも普通の人より遅い。

 夜なかなか寝つかれず、朝起きられないため、宵っ張りや朝寝坊になり、学校や会社に遅れる。次第に眠る時間がずれていき、通学や通勤する気持ちを失ってしまうと、普通の社会生活ができない。こうした症状を睡眠覚醒リズム障害ともいう。

 普通の人間は、二十五時間前後の体内時計のリズムを、朝の光に当たることや、朝の食事や動き出すことなどで、一日を自動的に測定、昼夜の変化に合わせた二十四時間の生活ができる。睡眠覚醒リズム障害の人は、この体を合わせる体内時計の微調整が大なり小なりできなくなった人たちだ。夜、眠れないとか、寝つきが悪いとかの不眠症とは違う症状である。

 だが、入院してリズム調整すると不登校児も直るといった例が、近年、学会に報告されているという。

●薬物使用による不眠の恐怖

 不眠症については、国際分類法によって種類が分類されているが、私が特に問題にしたいのは薬物使用やアルコール飲酒による不眠である。

 おそらく世界一の不眠国であろうアメリカでは、睡眠薬の売れ行きも大したもので、すでに一九六〇年には、年間三十三億六千万錠の睡眠剤が売れたというし、また別の統計によると、重量にして三千五百トン、金額にして一億二千万ドルの売り上げがあったそうである。

 そこで、あまり眠れないので、やけになって、マサチューセッツ州のある町では、住民が「不眠コンクール」を盛大にやり、新記録を作った人を表彰したという話まであった。

 しかし、これは決してアメリカだけの問題ではなく、我が国でもすでに昭和四十年代後半で、睡眠剤の売り上げが三億九千万円から五億に上り、睡眠剤および睡眠作用を有するトランキライザーが、五百五十四種も発売されていたそうである。

 それからも、睡眠薬の使用は年々増加の一途をたどり、平成四年には日本全国で約十億錠が処方されたと推定されている。全国民が十錠近く飲んだ勘定になる。

 睡眠薬や精神安定剤、アルコールの連用は、レム睡眠を抑制したり、ノンレム睡眠を減少させたりする。このため、睡眠障害を起こし、使用を中止すると、さらに重い不眠を起こすのである。

 つまり、睡眠薬服用やアルコール飲用の弊害は、睡眠パターンを変えてしまうことと、習慣性にある。習慣性というと聞こえはいいが、中毒症状を起こすことがあるという意味で、入眠効果を求めるには、次第に睡眠薬やアルコールの量を増やさなければならないということもある。

 睡眠薬というものは、多かれ少なかれレム睡眠やノンレム睡眠の第三度、第四度を抑制する。本来の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠を一晩に四、五回繰り返して、はじめて脳と体の疲労を回復するもの。その点、睡眠薬を服用すると、特に脳の正常な眠りを阻害してしまう。睡眠薬で眠った場合、目覚めが悪く、起きても頭がすっきりしないのはそのためである。

 こうした作用はアルコールを使用した時も同じで、レム睡眠を抑制し、泥酔状態では、レム睡眠が明け方まで現れないということもある。

 そういう睡眠薬やアルコールは、服用、飲用を中止した時の反動がまた怖い。例えば、睡眠薬の場合、服用をやめると、今度は逆にレム睡眠を増加させる傾向がある。レム睡眠の八十パーセントは夢を見ているとされているが、レム睡眠が極端に増加するために、始終夢を見ているような状態に陥ってしまう。

 このため、睡眠薬の服用を中止したことを契機に、睡眠は分断され、睡眠障害を起こすという具合である。

 もっとも、専門家にいわせると、従来の睡眠薬は脳の働きを抑える作用があり、服用を中断すると異常が起きたり、量が増えないと効かなくなるといった依存性が強いものもあったが、現在では、作用がやさしく、脳の緊張を和らげるような働きをし、依存性の弱い薬が出てきているという。

 薬を飲む場合の注意は、乱用は論外で、とにかく用法や用量をしっかり守ること。「今日は眠れそうだ」と飲まなかったり、「今日はぐっすり眠りたい」とたくさん飲んだりするようなことは慎むべきである。

 睡眠薬と違って、アルコールに関しては、入眠効果が全くないというわけではない。ナイトキャップの入眠効果は、研究で証明されているところである。

●眠気を催すからくり

 人間は心身が健康であれば、眠りは自然であり、自然な眠りによって健康も促進される。熟睡できないからといって、毎夜、薬や酒に頼っては、自然な眠りは得られない。それが習慣化すれば、体にも悪い。要するに、眠りの質が問題なのである。残念なことに、現代人は不眠症で悩む人が多いようである。

 不眠症に悩む現代人のために、いくつかの不眠症の克服法を紹介する前に、まずは、眠りのからくりから問うていく。

 人間の眠りは大脳皮質の疲労回復のためにとるものだが、この大脳皮質には、それぞれ異なった心の動きを営んでいる、新しい皮質と古い皮質があることがわかっている。新皮質は、脳の表面に覆いかぶさっており、古皮質は、その下に埋もれているものである。

 浅い眠りとは、新しい皮質だけの眠りで、深い眠りとは、二つの皮質が同時に眠ることである。

 電車の中で、ついウツラウツラ、これが新しい皮質の眠りである。新しい皮質が非常に眠りやすいということは、誰もがしばしば体験したり、目撃したりしているはずだ。例えば、会社で机の前に座って、ウトウトしている不届き者、学校で先生の講義を子守歌代わりに、気持ちよさそうに舟をこいでいる無作法者である。

 昼寝、居眠り、うたた寝、添い寝など新しい皮質の眠りは、しばしば行儀が悪くなりがちだが、この点さえ気をつければ、大いに有益なことはいうまでもない。

 新しい皮質はフルに働かせたら、二、三時間で疲れ果て、眠りたがるほどなので、眠らせることも比較的簡単である。

 かつて、猫の脳で、新しい皮質に密接な関係を持っているある部分に、電流で刺激を与えられるようにして実験を行ってみると、一秒間に数回継続する電流を三十秒間流して、三十秒間休み、これを繰り返しているうちに、猫は眠気を催してくるのか、首を垂れ、目を閉じ、やがてはゴロリと横になって眠り込んでしまう。犬でも、同じように眠り込ませることができる。

 外国には、脳の手術の最中に、猫や犬の実験で刺激を与えたのと同一の部分に、同じような電流を流したところ、患者が眠り始めたという報告がある。

 新しい皮質は、一定のリズムで繰り返している単調な刺激に弱い。電気刺激などという、物々しい方法によらず、我々人間はもっと手軽な手段で眠らしたり、眠らされたりしてきた。

 それは、音や振動によるリズミカルな刺激である。「コットン、コットン」という車が米をつく音に、水車小屋の番人は眠気を誘われ、よく居眠りをしたものだといわれる。そして、水車が止まり音がしなくなると、目が覚めたそうである。

 音があったほうが眠れ、静かになると目が覚めるとは不思議なようだが、単調でリズミカルな刺激を賢明に利用しているのは、世の母親たちだ。赤ちゃんを眠らせるのに、子守歌を歌いながら、揺すぶったり、背中のあたりを軽くたたいたりしない母親はないだろう。揺りかごの秘密もまた同じ。

 「坊やはよい子だ、ねんねしな……」と聞かされたからといって、まさか赤ちゃんが歌詞を理解して、眠るわけではない。母親たちは、自分のやっていることに、こんなに深遠な脳生理学的からくりが潜んでいようとは、思っていないかもしれない。

 世の中には、睡眠薬を飲まないと眠れないという人がたくさんいるが、それらの人は、もう一度、幼少の頃の母親の子守歌を思い出してもらいたいものである。

 

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