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∥四百四病の事典∥


非定型うつ病

■典型的でなく、若い女性に多いうつ病

 非定型うつ病とは、典型的なうつ病とは異なるタイプのうつ病。発症した人は周囲から、うつ病と思われないことや、社会不安障害など他の心の病気を合併することが少なくありません。

 非定型うつ病は従来、不安障害(神経症)や人格障害などと診断されることが多かったものですが、最近は米国などで、典型的なうつ病とは違うアプローチで治療され、その割合も米国では、うつ病全体の3~4割を占めています。日本では精神科医の間でもようやく認知されてきた段階で、大きな環境の変化に対応できない適応障害と間違われて、診断されるケースもあります。

 従来の典型的なうつ病は定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲・食欲・集中力・性欲の低下、不眠などが主な症状となります。

 この定型うつ病とは現れる症状が違うのが非定型うつ病で、気分の落ち込みはあるものの、何か楽しいことがある時には元気が出るのが大きな特徴です。その他、タ方になると調子が悪くなったり、過食や過眠ぎみになるなどの特徴もみられます。

 20~30歳代でかかるうつ病では、多くがこの非定型うつ病に相当すると考えられます。特に、女性の場合は8割が相当し、男性と比べ3~5倍多いとされています。

 以下、定型うつ病と非定型うつ病の症状を比較します。気分の面では、定型うつ病は終始落ち込んで、元気や気力がないのが特徴。出来事の内容を問わず、何に対してもやる気が持てず、今まで積極的に楽しんでいた趣味にも、関心や喜びが持てなくなります。

 一方、非定型うつ病は気分の落ち込みや気力、集中力の低下など、うつ病に特有の症状はあるものの、楽しいことやいいことがあると明るくなります。すなわち、出来事に反応して気分が変わる「気分の反応性」がみられます。発症者は常に落ち込んでいずに気分が高揚している時もあり、社会生活の適応度もそれほど悪くないため、周りからの理解を得にくくなります。

 リズムの面では、定型うつ病は「モーニング・デプレッション」と呼ばれ、朝起きた時に調子が悪く、気分が落ち込みます。家事や仕事も面倒で、何をやる気にもなれないという憂うつな気分がダラダラと続き、やがてタ方くらいになると少し気が楽になってくるのが特徴。

 一方、非定型うつ病は1日のうちでは、タ方になると気持ちが不安定になりやすいのが特徴。午前中から昼は比較的穏やかに過ごせるものの、「サンセット・デプレッション」と呼ばれて、タ方から夜になると不安やイライラが高まって調子が悪くなります。時には、気分が高ぶって泣きわめいたり、リストカットなどをしてしまうことも。調子の悪い時間帯が、定型うつ病と全く逆になります。

 睡眠の面では、定型うつ病は夜、布団に入っても、なかなか眠れず、夜中にも度々目が覚める上、朝早くに目が覚めてしまい、そのまま眠れません。特に早朝に目覚める傾向が強く、慢性の睡眠不足になりがちです。

 一方、非定型うつ病は1日の睡眠時間が10時間以上にも及ぶほど、「過眠」傾向にあります。睡眠時間が長いにもかかわらず、昼間に眠気を感じ、いくら寝ても寝足りないような気がします。

 食欲の面では、定型うつ病は性欲などを含めた基本的な欲求が低下するのが特徴で、食欲が落ちて食べる量も減るため、やせて体重が落ちます。

 一方、非定型うつ病は食べることで、気持ちを紛らわしたり、甘い物が無性に欲しくなって発作的に食べる「過食」傾向がみられ、体重も増加しがち。

 また、非定型うつ病では、疲労感を通り越して、手足に鉛がついたように、体が重くなる「鉛様まひ」を示すこともあります。

 発症する人の性格を分析すると、定型うつ病では、きちょうめんで、まじめで、完壁主義な人ほどなりやすい傾向があります。

 一方、非定型うつ病の場合には、相手からどう見られるかを気にし、他人の顔色をうかがう性格傾向がみられ、特に他人から拒絶されることに過敏になる「拒絶性過敏」が重要な特徴となっています。他人の何気ない一言であっても、過剰な気分の落ち込みの引き金となりやすいのです。

 その根底には、他人の評価が気になってしょうがないといった不安があり、子供のころから、常に相手のいうことを尊重し、従うために「いい子」といわれていた人、人見知りがある人、人前で上がりやすい人、うまく自己主張するのが苦手な人がなりやすい傾向にあります。

 原因を分析すると、定型うつ病では、脳内で情報交換をしている神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが少なくなるために、発病するといわれています。非定型うつ病でも、神経伝達物質のノルアドレナリンが関係していると見なされていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。

 非定型うつ病の日常生活における支障としては、他人の批判を過剰に受け止めてしまうために、親密な人間関係を築くのが困難であったり、他人の批判を恐れるあまりに、人間関係に気を使いすぎてしまうことが挙げられます。過眠傾向にあるため、朝、起きれなくて、約束の時間に遅刻してしまうこともあります。

 また、病気の影響で、大脳の前頭葉の血流が悪くなりやすくなります。ここは、思考や情動をつかさどっていて、人間が人間らしくあるために大切な部分。血流が悪くなると、前頭葉がスムーズに機能しにくくなって、心身の不調として出ることがあります。

■薬物療法と心理療法による治療

 非定型うつ病の症状が2週間以上続き、つらい時には、我慢をせず精神科や心療内科へ相談に行き、適切な治療を受けましょう。

 病院によっては、定型うつ病と非定型うつ病を区別して診断しないこともありますが、治療法や対処法に異なる部分があるため、注意が必要です。そもそも、この非定型うつ病がうつ病の一種として認識されたのは、日本では近年のこと。従来は、適切な治療や投薬が行われないために治りづらく、ほかの病気と診断されることも多かったのです

 非定型うつ病の治療には、薬の服用による薬物療法が行われるほか、生活のリズムを改善するための生活指導や、考え方を整理し捕らえ直すための心理療法が行われます。

 時には、入院による治療が行われることもあります。うつ病には、定型・非定型を問わず自殺の危険性があり、特に非定型では、人間関係のやり取りの中で感情が激し、衝動的に自殺を完遂してしまう恐れがあることに、対処しなければならないためです。 

 非定型うつ病に使われる薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。通常、定型うつ病に多く使われるパキシルなどのSSRIだけでは、非定型うつ病にはあまり有効でないことがわかっているために、薬を組み合わせるのです。

 薬を飲むことで、落ち込みやイライラが改善され、気分が安定して楽になりますが、治るまでには1年は続けて飲むことが必要です。

 薬による治療に加え、認知行動療法などの心理療法的なアプローチも重要です。とりわけ、認知行動療法には薬物療法と同等の効果があることが確認されています。

 非定型うつ病の人は、マイナス思考に捕らわれがちで多角的な思考ができず、突発的な問題が起きると、状況や自分の気持ちを整理することが困難になってしまいます。気分の不安定さを解消するために、ギャンブルや買い物、セックス、お酒などに依存する傾向もあり、そうしたものにのめり込む罪悪感から自傷行為を繰り返してしまうことも。

 そこで、認知行動療法の助けを借りて、自分の考え方の癖を知り、よりよい行動に修正する方法で、カウンセリングやグループ療法を通じて、ストレスへの有効な対処法や人間関係の結び方を身に着けます。この認知行動療法は、前頭葉の働きを高めるのにも効果的な治療法です。

 認知行動療法のプログラム例としては、親など大切な人から愛されているという認知の増強・確認、劣等感の除去、自己主張のスキル、自己の客観視の向上、ストレスヘの対処、情動コントロールがあります。

 しかしながら、休養を取り、薬を第一とした適切な治療を受けることで回復していく定型うつ病と異なり、非定型うつ病の場合は悪循環を繰り返すことが多く、なかなか治りにくいのが現状です。

 治療を続けるうちに、ふとしたきっかけによって、よくなることもあります。人間関係で不快な刺激が少なくなるなど、人によってそのきっかけはさまざま。職場の人間関係が影響する場合、異動を申し出たり、転職を試みるのも一つのきっかけになります。

 症状が治まっても、うつ病は再発しやすい病気ですので、薬を飲み続けることが大切。自己判断で薬をやめるのは禁物です。治癒には平均3年かかるとされるので、焦りも禁物。

 そして、医師による治療も大切ですが、この非定型うつ病の改善には、普段の生活習憤も重要なカギを握っています。 

■非定型うつ病を改善する生活のヒント

 非定型うつ病では過眠傾向になるため、昼夜が逆転し、生活リズムが乱れがちになります。生活のリズムを乱れたままにしておくと、憂うつ、イライラなどの気分や、体の重さといった症状がますます悪化してしまいます。

 規則正しい生活を心掛け、軽い運動を行う。この当たり前のことが、気持ちを安定させる一番の特効薬となります。とりわけ、仕事に行くなど昼間は目的を持って活動することが、リズムの乱れを改善するために大切です。

 具体的な方法を、以下に紹介します。

規則正しい生活をする

 朝はきちんと起きて、3度の食事を食べ、夜は12時前には寝るという規則正しい生活を心掛けましょう。人間の体内リズムは、朝起きて光を浴びることで調整されます。目に光が入ると、脳の松果体から出るメラトニンという睡眠物質の分泌が抑制され、体内リズムがリセットされることによって、1日およそ24時間で一巡する体のリズムが整います。 

可能な場合は仕事に行く

 仕事に行ける場合には、多少つらくても時間どおり会社に出勤し、業務に取り組むことも必要です。やらなければいけないことがあり、それに取り組むことが、精神の覚醒(かくせい)を促すため、体内リズムを正常にしてくれるのです。

毎日、何か目標を持って生きる

 仕事を持っていない人の場合には、朝起きたら「今日はこれをしよう」、「何かをやり遂げよう」と、その日の目標を持って、毎日を生きることが大切。「この本を読もう」など簡単なことでかまいません。自覚を持つことが、昼間の覚醒を促します。

掃除や片付けなど、整理整頓を心掛ける

 体を動かす方法としては、掃除や片付けなどの整理整頓(せいとん)もお勧め。適度な運動になるだけでなく、「今日は部屋の掃除をする」ということが目標になって、リズム調整に役立ちます。きれいになると達成感もあり、周囲の人に感謝されることで人間関係の改善にもなり、気分がよくなります。

外に出て散歩などで体を動かす

 1日1回は外に出て、太陽の光を浴び、公園を散歩するなど体を動かすようにします。ウォーキングなどの軽い有酸素運動をすると、脳では気分を安定させる脳内物質の分泌が増え、心も体もリラックスします。

身近な人がうつ病になったら

 うつ病のタイプによって、接し方が違います。典型的なうつ病である定型うつ病の場合は、とにかくゆっくりと体を休め、休養を取ることが必要。周囲の人が「頑張れ」と言葉を掛けたり、励ましたりすると、本人が自分自身を追い込んでしまうため、よくありません。

 逆に、非定型うつ病の場合は、少し励ますことがかえって本人のためになります。「決まった時間に起きて会社に行こうよ」、「1日1万歩を目指して歩いてみたら」など掛ける言葉は優しくても、心は厳しく持ちながら、本人の気力を奮い立たせるように接することが大切です。

 また、非定型うつ病では、周囲の人に助けを求めるサインとして、衝動的に自殺を企てる恐れがあります。不安や焦燥感が強い時は、しっかり見守ることが大切になります。

 

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