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‖四百四病の事典‖


知的障害

■出生時や乳幼児期に知的能力が低下した状態

 知的障害とは、知的能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態で、発達障害の1つ。かつては、精神薄弱とか精神遅滞という言葉が使われていましたが、日本の法律用語、行政用語では、知的障害という表現で統一されるようになっています。

 知的能力とは、実際の日常生活において自分で物事を判断したり、必要に応じて適切な行動を行う能力であるといえます。一般的には、金銭の管理、読み書き、計算など、頭脳を使う知的行動を指します。臨床的には、知能検査、ないし幼児では発達検査を行って、知能指数が70以下の場合には、知的障害としてさまざまな援助の対象とされます。

 療育手帳が交付され、各種料金の免除などの特典が与えられ、障害年金や特別障害者手当などの制度も利用できます。

 知的能力の低下した状態には、痴呆(ちほう)もあります。こちらは、いったん知的能力が正常に発達した後に、何らかの理由で二次的に低下するもので、老年痴呆はその代表例です。知的障害は痴呆と違って、生まれた時点、あるいは早期の乳幼児期に知的能力の発達そのものがあまり進まない状態です。

 知的障害とはどのような障害なのか、日本の法律では定義はされていませんが、厚生労働省の平成17年調査によると、知的障害のある人は54万7000人で、そのうち施設で暮らしている人が12万8000人、地域で暮らしている人は41万9000人です。現在、日本国内で運営されている施設は、3600を数えています。 

 知的障害を起こす要因は、おおまかに3つに分けて考えられています。

 1つは生理的要因で、体には特別の異常が見られませんが、脳の発達障害によって知能が低い水準に偏ったと考えられるものです。生理的要因の知的障害がある親からの遺伝や、知的障害がない親から偶然に、知能指数が低くなる遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因。

 知的障害者の大部分はこのタイプで、合併症はないことが多く、健康状態はおおむね良好です。本人、家族などの周囲とも、障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多く見受けられます。

 次は病理的要因で、脳に何らかの病気あるいは損傷があって、知能の発達が妨げられるものです。例えば、乳幼児期の脳外傷、髄膜炎や脳炎などの感染症、フェニールケトン尿症などの代謝異常症、ダウン症などの染色体異常などがあり、出産の際の障害も重要なものです。胎児の時期に母親が風疹(ふうしん)、梅毒などに感染することや、有機水銀など体外から入った物質の中毒によるものもあります。

 この病理的要因で知的障害を起こす場合、脳性麻痺(まひ)やてんかんなどの脳の障害や、心臓病などの内部障害を合併していることも多く、身体的にも健康ではないことが多くなります。

 第3は心理的、社会的要因で、知的発達に著しく不適切な環境に置かれている場合であり、養育者の虐待や会話の不足がその典型例です。リハビリによって知能が回復することが可能。

 症状の現れ方については、ダウン症などの 染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。身体発達に異常がない場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多く認められます。

 言葉の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。知的能力の遅れだけではなく、社会生活への適応にも難のあることがみえてきます。

 読み書き、計算など限定された部分の発達障害や、全体としての発達が水準以下だけれど部分的にずば抜けた能力を発揮する子供は、療育の上では別に考えるのがよいでしょう。

 また、かつての日本では知的障害を3段階に分けて、重度知的障害を白痴、中度知的障害を痴愚、軽度知的障害を軽愚と呼んでいましたが、現在では国際疾病分類に合わせて、最重度、重度、中度、軽度の4段階に分けています。

 最重度は、知能指数ないし発達指数が20以下。重度は、知能指数ないし発達指数が20〜35程度。中度は、知能指数ないし発達指数が35〜50程度。軽度は、知能指数ないし発達指数が50〜70程度。

■検査と診断と治療

 兄弟姉妹と比べて、あるいは近所の子供と比べて、自分の子供は発達が遅いのではないかという心配があれば、成長障害や身体的な病気の有無も含めて、小児科医、児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師の診察を受ける必要があります。

 医師による診断では、面接や診察、質問用紙、知的水準を測る知能検査、ないし幼児では発達検査などを行って、症状を調べます。これらの検査は、発達の遅れている点を明らかにするだけでなく、子供の優れた能力を見いだすことにもなります。

 専門医であっても、一度の診察や検査で長期的な発達の予測をすることは困難です。時間を空けて診察し、発達の経過も併せて判断することが必要です。

 しかしながら、フェニールケトン尿症や被虐待児など、ごく一部の場合を除けば、知的障害に対する医学的治療はありません。元来が知的機能の遅れであり、その基礎は大脳皮質に存在する神経細胞の働きの弱さにあるため、薬物によって治したり、知能段階を高めることは不可能とされています。

 合併する身体の病気が予想される場合には、必要な検査を定期的に行うことがあります。例えば、てんかんの合併が考えられる場合には、脳波検査を行います。もちろん、合併症の症状を改善させる治療も行います。

 知的障害に対する医学的治療はないため、治療の目標は一人ひとりの子供に応じた教育と訓練に置かれます。つまり、現在の知能に沿った生活能力を訓練して、その知能段階で生きていける能力を開発することが、目標となります。身体機能訓練、言語訓練、作業療法、心理カウンセリングなどを開始し、現実的で達成可能な目標を定め、教育と訓練を行うことにより、子供の持つ発達の可能性を最大限に発揮させることができます。

 心理的な問題、自傷行為などの行動の問題に対しては、カウンセリングや環境の調整を行います。十分に行き届いた指導やサポートのためには、個別や少人数集団における特別な教育環境が必要になります。

 長期的には、身の回りのことが一人でできるようになること、将来の職業につながるような技能を身に着け、社会に適応していくことが目標となります。

 知的障害の子供の抱える問題点は、年齢や発達段階によって変化します。周囲の人にとって大切なことは、年齢や発達の段階によって直面するハンディキャップを理解し、子供の能力に見合った教育手段を選ぶことです。小児科医などの医師、発達相談、地域の発達支援プログラムなどを利用して、情報を得るとよいでしょう。

 ある程度の障害のある子供には、療育手帳を交付してもらい、特別児童扶養手当の受給手続きを取ることも大切です。公的援助の内容と手続きについては、児童相談所に相談してください。

 

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