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∥四百四病の事典∥


精神遅滞(精神薄弱)

■全般的な知能が低く、環境への適応に障害

 精神遅滞とは、知的機能が全般的に平均よりも低く、同時に環境への適応機能の障害が認められる発達障害の一つ。法令上は18歳までに、多くは一般的に生まれた時点、あるいは早期の乳幼児期に障害が生じ、日常生活において、何らかの援助や介助が必要となります。

 以前は精神薄弱と呼ばれていましたが、この用語は最近ではほとんど用いられず、1994年頃から精神遅滞と呼ばれるようになりました。日本では2000年から、法律用語、行政用語としては知的障害が用いられています。知的機能が遅れていることで、精神遅滞は自閉症や学習障害と混同されることがあります。

 多くは原因不明です。原因として想定されているものは、以下に示すようにさまざまです。髄膜炎や脳炎などの感染症、頭部外傷、フェニールケトン尿症などの代謝異常症、ダウン症などの染色体異常、子宮内胎児発育遅延や母体のアルコール摂取といった出生前要因などが挙げられ、脳の機能の成熟障害が存在すると見なされています。

 心理的、環境的な原因で発達が遅れている場合には、精神遅滞とはいいません。

 症状の現れ方については、重度の精神遅滞の子供は一般に、首の座りが遅い、座ることができないなど、運動の発達が遅いことで乳児期に気付きます。染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。

 身体発達に異常がない、軽度から中等度の精神遅滞の場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多くみられます。初めの数年間は正常な発達をしているようにみえますが、バイバイをしないことや言葉が出ないことなど、言語の発達の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。

 全般的な知能が低いために、日常生活や社会生活への適応に障害が生じ、食事、衣服の着脱、トイレでの排便、排尿といった身の回りのことが一人でうまくできない、同じ年齢の子供と遊ばない、といった症状がみられます。小学校に入って、集団生活に適応できないために問題行動が目立ち、初めて精神遅滞に気付くこともあります。

 成年期では、一般的な職場への就労はハードルが高いものの、本人の能力に合っている環境であれば問題はありません。一般的な職場での就労が困難な場合は、障害者の保護者やボランティアなどが開設する通所施設で活動するケースが多くみられます。

■検査と診断と治療

 兄弟姉妹と比べて、あるいは近所の子供と比べて、自分の子供は発達が遅いのではないかという心配があれば、成長障害や身体的な病気の有無も含めて、小児科医、児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師の診察を受ける必要があります。

 医師による診断では、面接や診察、質問用紙、知的水準を測る知能検査、ないし幼児では発達検査などを行って、症状を調べます。これらの検査は、発達の遅れている点を明らかにするだけでなく、子供の優れた能力を見いだすことにもなります。

 専門医であっても、一度の診察や検査で長期的な発達の予測をすることは困難です。時間を空けて診察し、発達の経過も併せて判断することが必要です。

 しかしながら、フェニールケトン尿症や被虐待児など、ごく一部の場合を除けば、精神遅滞に対する医学的治療はありません。元来が知的機能の遅れであり、その基礎は大脳皮質に存在する神経細胞の働きの弱さにあるため、薬物によって治したり、知能段階を高めることは不可能とされています。

 合併する身体の病気が予想される場合には、必要な検査を定期的に行うことがあります。例えば、てんかんの合併が考えられる場合には、脳波検査を行います。もちろん、合併症の症状を改善させる治療も行います。

 精神遅滞に対する医学的治療はないため、治療の目標は一人ひとりの子供に応じた教育と訓練に置かれます。つまり、現在の知能に沿った生活能力を訓練して、その知能段階で生きていける能力を開発することが、目標となります。身体機能訓練、言語訓練、作業療法、心理カウンセリングなどを開始し、現実的で達成可能な目標を定め、教育と訓練を行うことにより、子供の持つ発達の可能性を最大限に発揮させることができます。

 心理的な問題、自傷行為などの行動の問題に対しては、カウンセリングや環境の調整を行います。十分に行き届いた指導やサポートのためには、個別や少人数集団における特別な教育環境が必要になります。

 長期的には、身の回りのことが一人でできるようになること、将来の職業につながるような技能を身に着け、社会に適応していくことが目標となります。

 精神遅滞の子供の抱える問題点は、年齢や発達段階によって変化します。周囲の人にとって大切なことは、年齢や発達の段階によって直面するハンディキャップを理解し、子供の能力に見合った教育手段を選ぶことです。小児科医などの医師、発達相談、地域の発達支援プログラムなどを利用して、情報を得るとよいでしょう。

 ある程度の障害のある子供には、療育手帳を交付してもらい、特別児童扶養手当の受給手続きを取ることも大切です。公的援助の内容と手続きについては、児童相談所に相談してください。

 

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