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∥四百四病の事典∥


食道神経症(ヒステリー球)

■食道には病変がないのに、食道の違和感などを覚える疾患

 食道神経症とは、食道そのものに病変がなく正常にもかかわらず、食道の違和感や胸痛など覚える疾患。ヒステリー球とも呼ばれます。

 症状は、食べ物が食道につかえる感じ、食道にヒステリー球と呼ばれる異物が存在している感じ、胸焼け、吐き気、胸部圧迫感、胸痛など多彩です。

 発症者の多くは女性で、ストレス、自律神経失調症、情緒不安定、貧血などが背景にあります。いたずらに精神的なもの、気のせいと判断することは禁物で、発症者が不安を持つ食道由来の胸痛の原因としては、胃食道逆流によるものが多くみられます。そのほかに、食道運動機能異常、食道知覚過敏、精神疾患との関連があり、これらが相互に関係して発症することが多いようです。

 中年女性では、食道通過障害の症状のほかに、鉄欠乏性貧血、舌炎を合併するプランマー・ビンソン症候群という疾患もあります。食道上部にある慢性食道炎が通過障害の原因とも考えられていますが、こちらも食道そのものに病変は認められず、心因性要素も関係しているようです。

■食道神経症の検査と診断と治療

 胸が何となくおかしいなど、食道由来の胸部異和感や胸痛を訴える症例の多くは、胃液が食道に逆流して起こる胃食道逆流症が主な原因です。この診断のためには、まず心電図や心臓エコー検査を行って心臓疾患を否定します。次に内視鏡検査やバリウム造影で食道を調べます。

 ここで胃食道逆流症による食道粘膜の病変の存在が確認されれば、そのまま治療に入ります。通常は、酸分泌抑制薬の内服が選択されます。

 前記の検査で胃食道逆流症が証明されない際には、食道内酸逆流の程度を食道内腔(ないくう)に設置したpHセンサーで証明する方法が最も確実です。近年では鼻から挿入する有線型のセンサーではなく、食道内に固定する無線式のセンサーが使用できるようになっています。

 以上の食道の内視鏡検査や食道内のpHのモニタリングで病変が観察されない場合は、心臓の精密検査となります。この目的は、虚血性心疾患の診断です。心臓の冠動脈造影で異常がみられる場合には、心疾患の治療を行います。冠動脈造影で異常が認められない場合で、胃食道逆流症が否定される場合には、骨格筋由来の胸痛の検査に入ります。

 最近では、心臓に異常を認めない非心臓性胸痛(NCCP)という概念が普及しています。非心臓性胸痛の約半数は、胃食道逆流症によるものと考えられています。従って、最も専門的な治療経験が要求される食道神経症をいたずらに精神的なもの、気のせいと判断することは禁物で、順序を追った検査体制で診断を進めていくことが大切となります。

 精密検査を進めても、食道などに病変がなければ、過敏になっている神経を沈めるための鎮静薬や精神安定薬が投与されます。また、抱えている問題やストレスになっている原因を突き止め、その問題についてのカウンセリングを行うことで、自然と食道の違和感が消えていくこともあります。

 日常生活では、運動や趣味に励み、精神的、身体的機能を高めることが望まれます。

 

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