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∥四百四病の事典∥
血精液(けつせいえき)症とは、男性の精液の中に血液が混じる疾患の総称。
精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢(せいのう)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。精液が射精によって尿道から出てくる場合には、最初は主に前立腺からの成分で、それから精嚢の成分が出てきます。
血精液症の大多数は、原因がはっきりしません。前立腺肥大症の初期や、後部尿道炎、前立腺炎など付近の炎症や充血によることもあり、精嚢から出血することもあります。前立腺や精嚢腺の奇形、血管の異常によることもあります。 他の原因としては、外傷、結核を含めた感染症、クラミジアや淋病(りんびょう)などの性感染症、血液疾患、寄生虫、40歳以上では前立腺がん、血液凝固を抑える薬の服用などが考えられます。
ほとんどは射精痛などの自覚症状はなく、出てきた精液の中に血液が混じっていることで、偶然に気付くことがよくあります。 新鮮な血液が混じる場合はピンク色や真っ赤になり、古い血液が混じる場合は茶褐色になります。赤黒い小さな点々が混じることもあります。
出血量は微量なので、精液内に炎症を示す細胞がない限り精子に悪影響はなく、妊娠がしにくくなったり、母胎内での胎児の発育に対する影響はありません。
後部尿道炎、前立腺炎が原因の場合には、 排尿時の痛み、射精時の痛み、 頻尿、尿道の不快感、発熱などの自覚症状が出ます。
様子をみて、精液の中に血液が混入する状態が続くようならば、泌尿器科を受診します。
医師による診断では、直腸診、精管や精巣上体の触診、尿や精液を採取しての細菌や結核菌の顕微鏡観察、血液検査で原因を探ります。超音波やCT、MRI検査などで前立腺、精嚢腺の形態も検査します。不妊症になっている場合は、造影検査をすることもあります。
結核は前立腺などにできると、こぶのようになるので、直腸診などによって発見できます。精液のどの部分に血液が混入しているかが確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。前立腺や精嚢、尿道の腫瘍(しゅよう)も調べ、高齢者では前立腺がんなどの悪性腫瘍との関連も調べます。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれなものの、可能性はあります。
一連の検査で尿や精液に異常のないことが確認できれば、特に治療する必要もありません。大部分は2、3週間で自然治癒します。
炎症が確認された場合には、止血剤の投与、抗菌剤の投与などが行われます。短期間の抗菌剤の投与は、精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。前立腺炎の治療には、主に原因の菌に対する抗生剤が使用され、治療期間は約4~12週間となります。治療期間が半年や1年と長くかかることもあります。
血精液症は一度治っても、また再発することがあります。長く続く場合には、精液内にみられる細菌を再確認する必要があります。
軽症の場合は、日常の生活で特に気を付けることはありません。2週間くらい射精を控えてみてもいいですが、それほどこだわる必要はありません。
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