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∥四百四病の事典∥
1.骨粗鬆症とはどのような病気なのか
骨にはタンパク質やリンなどとともに、たくさんのカルシウム(骨重量の約50%)が含まれています。しかし、骨に含まれるカルシウムなどの量(骨量)は、若年期をピークに年齢とともに減ってきます。
そして、骨量が減少すると、骨の中の構造が壊れ、骨は非常にもろい状態になり(脆弱性亢進)、折れやすくなります。この状態が骨粗鬆症です。
骨粗鬆症には、上のような老化による骨粗鬆症の他に、成長期や出産後などに起こるものもあります。
2.骨粗鬆症になる割合はどのくらいなのか
骨粗鬆症は圧倒的に女性に多い病気で、女性では閉経期の40~50歳代から急激に骨量が減少し、60歳代では2人に1人、70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症を起こすような状態になっています。
一方、男性では60歳過ぎから徐々に増え、70歳以上では10人に4人足らずです。
現在、日本には1,000万人以上の骨粗鬆症患者がいると推定されています。
■なぜ、骨量が減少するのか?■
骨の構成成分であるカルシウムは、食事によって摂取され、腸で吸収されて血液中に入り、骨に運ばれ骨が作られます(骨形成)。その一方で、骨はしなやかさを保つために、古くなった骨の成分を壊し(骨吸収、骨破壊)、新陳代謝を行っています。
また、体の中のカルシウムの約1%は骨や歯以外の細胞や血液中に存在して、神経や筋肉の興奮、あるいは血液凝固(血を固める働き)などで非常に重要な役割を果しています。そのため、血液中のカルシウムが足らなくなると、不足分を骨のカルシウムで補うことになります(骨吸収、骨破壊)。
このように、骨は体を支える他に、カルシウムの貯蔵庫としての役割を担い、骨は作られる一方で絶えず破壊を繰り返しています。骨量の減少は、このような骨形成、骨吸収のバランスが崩れた結果なのです。
骨量の減少には以下にあげるようなさまざまな因子が関係してきます。
1.加齢:年を重ねるとともに、体の中のホルモンが変化するために、骨量が減少します。その他、胃酸分泌の低下や腸の吸収能*能力の低下、腎臓での尿へのカルシウム排泄の増加なども原因となります。
【骨粗鬆症に関係するホルモンとその作用】
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しかし、閉経前後からエストロゲン分泌が激減するた め骨量が減少します。 |
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足すると分泌され、骨吸収を促進します。しかし、高 齢者ではカルシウムの摂取不足により血液中のカルシ ウム濃度が低下するため、副甲状腺ホルモンが分泌さ れて骨吸収が進みます。 |
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はカルシトニンの分泌が低下するため骨吸収が進みます。 |
2.女性、閉経:女性の最大骨量は男性より低く、また閉経後の数年間は急激に骨量が減少します。そのため、女性は男性より骨粗鬆症になる危険性が高く、より若い年齢から骨粗鬆症が見られます(男性では、女性ホルモンと同様、男性ホルモンが骨形成を進めています。しかし、男性ホルモンは女性ホルモンほど加齢によって減少しません)。
3.遺伝:家族に骨粗鬆症にかかった人がいる場合、骨粗鬆症になる可能性が高いです。
4.カルシウム不足:カルシウムは少なくとも1日600mg、成長期の若い人、閉経を迎えた人などは1,000~1,500mgが必要です。高齢者では淡泊なものを好み、食事量も減ってくることから、カルシウムの摂取量が減りがちです。
5.ビタミンD不足:腸におけるカルシウムの吸収にはビタミンDの作用が必要なため、ビタミンDが不足するとカルシウムを吸収することができません。
6.日光浴不足:ビタミンDは、腸でのカルシウムの吸収に不可欠なビタミンです。そして、皮膚の中で日光の紫外線にあたって、はじめて、その役を果すことができるようになります(活性ビタミンD)。そのため、日光に当たらないとうまくカルシウムを吸収することができません。
7.運動不足:筋肉だけでなく、骨の強さを保つためにも運動は非常に大切です。運動といっても、スポーツとは限らず、日常生活の自然な動作や生活様式も、骨や筋肉の維持に影響します。
8.喫煙、飲酒、カフェイン:喫煙は胃腸の働きを悪くしてカルシウムの吸収を悪くし、過量のカフェインは尿へのカルシウムの排泄を増やします。また、過量のアルコールはカルシウムの吸収を減らして、排泄を増やします。
9.食塩、糖分:食塩や糖分を取りすぎると、カルシウムの尿への排泄が増加し、からだの中のカルシウムが不足することになります。
10.ストレス:過度のストレスは、腸におけるカルシウムの吸収を妨げます。
■症状■
骨粗鬆症は自覚症状が少ない病気です。そのなかで代表的な症状としては、骨折と、それに伴う痛みなどが中心になります。骨粗鬆症による骨折のほとんどは脊柱(背骨)、大腿骨(太ももの骨)、あるいは、橈骨(手首から肘にかけての親指側の骨)に起こります。
1.橈骨(とうこつ)の骨折
転んで手をついた際に起こる骨折です。橈骨(手首)の他、腕の付け根の骨(上腕骨頸部)を骨折することもあります。
2.大腿骨の骨折(大腿骨頸部骨折)
男女ともに60歳以後、年を取るとともに転倒などによる大腿骨折を起こします。
大腿骨の骨折を起こすと寝込むことが多く、そのため運動不足などから,さらに骨量が減少するという悪循環に陥り、高齢者では「寝たきり」の原因になることが少なくありません。
3.脊柱(せきちゅう)の骨折(圧迫骨折)
・脊柱の変形、身長の短縮:重いものを持ったり、転んだりして普段より少し余計な力がからだに加わっただけで、椎骨(脊柱を構成している一つひとつの骨)が変形します。椎骨の変形は上下からの圧迫によって起こるため、全体が押しつぶされた状態を圧迫骨折と呼びます。椎骨の変形の種類や変形したり圧迫骨折を起こした椎骨の数によって、脊柱はさまざまな形に変形します。そのため、身長が短縮し姿勢や歩行の仕方にも変化が見られます。
・慢性の腰痛:椎骨の変形が徐々に生じると、背骨やその両側の筋肉が次第に痛むようになります。痛みは、寝返りや起床、歩行開始時など動作を始めるときに生じます。
・突然起こる腰、背中、時には胸の痛み:脊柱の中には神経(脊髄神経)が通り、さらに椎骨の間から体の各部に向かう神経の枝が出ているため、椎骨の圧迫骨折が起こると、神経の枝が圧迫され、腰や背中に突然、激しい痛みが生じます(腰痛や背中の痛み)。時には、胸やお尻に痛みを感じることもあります。
■予防■
●日頃からカルシウム摂取を心掛けた食生活を実現し、骨量を増やし減少を防ぎましょう。
●自分の骨量を知っておきましょう-早期発見。
●骨折の原因となりやすい動作や転倒などに注意しましょう。
最も大切なのは、骨量が最大となる若年期に、骨量をより多くしておくことです。この時点の骨量が多ければ、歳をとって骨量が減少しても、骨粗鬆症になる危険な値に達することはありません。そのためには、小児期および青年期から、しっかり骨量を増やしておくことが大切です。
是非とも、若い時からの長期的に骨粗鬆症の予防に取り組み、明るい高齢期を実現してください。
1.カルシウムを含む食品をたくさん食べましょう
成人におけるカルシウムの1日所要量は600mgとされていますが、成長期の若いひと、閉経を迎えたひと、また、これを過ぎて骨粗鬆症の危険度が高いひとは1,000~1,500mgが必要です。しかし、カルシウムはなかなかとりにくい栄養素で、日本人の平均摂取量は未だに1日所要量の90%程度といわれています。
まず、牛乳を1日2本飲み、骨ごと食べられる小魚類や大豆製品、海草類をとるようにしましょう。野菜では、カルシウムの含有量が多い小松菜がお勧めです。カルシウム強化補助食品も市販されていますが、あくまで補助として利用し、工夫して食生活を充実させましょう。
最近、若い女性の間でダイエットをするひとが多く見られますが、カルシウムを意識しないダイエットは骨量を著しく減少させます。骨粗鬆症はおばあさんのなる病気と決め付けてはいませんか。実は病気になるもならないも、10~20歳代からの食生活が大変影響してきます。ダイエットをする際には、くれぐれもご用心を。
カルシウムの多い食品 |
食品の種類 |
目安量 |
カルシウム量 |
豆・種実 |
豆腐(木綿) |
1/3丁 |
120mg |
生揚げ |
1/2丁 |
156mg |
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凍り豆腐 |
1枚 |
118mg |
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ごま |
3g |
36mg |
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野菜 |
小松菜 |
1/4束 |
232mg |
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かぶの葉 |
1/4束 |
115mg |
大根の葉 |
30g |
63mg |
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切り干し大根 |
10g |
47mg |
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乳製品 |
牛乳(200ml) |
1本 |
200mg |
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スキムミルク |
大さじ2杯半 |
220mg |
ヨーグルト |
1個 |
120mg |
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魚介・海草 |
わかさぎ |
中5尾 |
450mg |
いわし |
中4尾 |
840mg |
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ししゃも |
中4尾 |
264mg |
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桜えび |
10g |
150mg |
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しらす干し |
20g |
106mg |
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ひじき |
10g |
140mg |
2.腸でのカルシウムの吸収を良くしましょう
・ビタミンDを摂る:ビタミンDは、カツオ、マグロ、アジ、レバー、バター、たまご、椎茸などに含まれています。
・日光にあたる:食物に含まれるビタミンDは、正確には前駆体(プロビタミンD)です。実際に役立つビタミンDになるには、いったん皮下の脂肪組織に蓄えられて、日光の紫外線の作用を受ける必要があります。夏なら木陰で30分、冬なら顔や手に太陽を1時間当てるくらいで、1日に必要なビタミンDが十分作られます。
・タバコを吸わない
・アルコールをとりすぎない
・ストレスをためない
3.定期的に運動をしましょう
・運動とは:骨に力(体重)がかかるような運動(陸上競技、重量挙げなど)が骨量をよく増加させます。しかし、長距離走や過度の運動や減量を必要とするもの、ストレスになるほどの運動は、かえって骨量を減少させることがあります。高齢者では、心臓、肺や、手足の関節に負担をかけない運動(歩行、ジョギング、自転車、体操など)が勧められます。なかでも、歩行は最も簡単で、速度によって強さを調節することもできる運動です。
・適度な運動量とは:運動は、軽く汗ばむ程度で1日60分、2日程度の休息をとりながら、1週間に3日以上行います。
・注意点:高齢者や膝、股関節に変形が見られる方や、他の病気を治療中の方は、必ず主治医と相談のうえ行ってください。また、運動中に体に異常があったら、すぐに中止し医師の診断・治療を受けてください。
4.カルシウムがおしっこに排泄されすぎないようにしましょう
・食塩、糖を摂りすぎない。
・カフェインを摂りすぎない。
5.骨折を防ぐための日常生活上の工夫や注意点
・つまづきそうなものは片づける。
・段差をなくす。
・階段には、手すりや滑り止めをつける。
・風呂場には手すりをつけ、湯船の中には滑り止めマットを敷く。
・暗いところには、足下をてらす明かりをつける。
・家の中では素足、外では運動靴がよい。
・大雨、強風、雪などの日は外出を避け、人混みも避ける。
・重いものを持ったり、運んだりしない。
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