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∥四百四病の事典∥
パーキンソン病の主な症状は、両手足の震えと筋肉の硬直です。1817年、イギリスの病理学者であるジェームス・パーキンソンによって見いだされた進行性の病気で、以前は「振戦(しんせん)まひ」と呼ばれていました。
神経系統のうち、筋肉の運動や緊張を調整している錐体(すいたい)外路系が侵されるために、運動調節機能が障害され、日常の行動や動作に変調を来します。近年の研究によれば、この錐体外路系の大脳基底核にある黒質(こくしつ)と線条体における「ドーパミン神経」の変性と脱落によって起こる、と明らかにされました。パーキンソン病の罹患者の脳中では、黒質で作られる「ドーパミン」という物質が減少しているのです。
日本における有病率は人口10万人当たり50~100人で、65歳以上では500人に1人の割合で出現すると見なされています。
また、この病気とよく類似した症状を現すものに、脳炎、脳動脈硬化症、一酸化炭素中毒・ガス中毒後遺症、梅毒、脳腫瘍(しゅよう)などが原因となって起こるものもあります。脳炎などの二次的なものも含めて呼ぶ際は、パーキンソン症候群と呼ばれます。
40~50歳ごろから、徐々に発病します。最も特徴的な症状は、手足や顔の筋肉が突っ張り、硬くなることと、手足が震え、動作が緩慢になることです。
まばたきが少なく、無表情となり、手足が硬くなる影響で、首を少し下げ、膝(ひざ)と肘(ひじ)を軽く曲げた特有の姿勢となってきます。手の震えは、親指と人差し指、およびほかの指を少し曲げたまま、丸薬を丸めるようにリズミカルに横ゆれするのが特徴。
運動をすると、筋肉が硬くなって関節が動きにくくなる影響で、立ち上げるなどの動作がとてもゆっくりで、すくみ足による歩行障害も見られます。歩き始めようとしても第一歩がなかなか出ず、細かい足踏みをしてから初めて足を進めます。歩き方は、足を床にこすりつけるようにして狭い歩幅で歩く、小刻み歩行が普通。体が前かがみになり、バランスをとれずに、つんのめることもしばしばです。
●医療機関での治療と経過
パーキンソン病の薬物治療では、L-ドーパという有効な薬が見いだされ、そのほかブロモクリプチン、アマンタジンやアトロピン系の合剤が作られ、治療効果を上げています。ただし、筋肉の硬直、振戦、動作緩慢などは改善されますが、すくみ足はなかなかよくなりませんし、薬は病気を根本的に治すものではなく、症状を緩和させることを目的としています。
ドーパミンの薬剤で効果が期待できない場合に脳外科手術も検討されますが、高齢者やあまりに障害の程度が高い場合には、手術の効果は期待できません。
多くのケースでは、パーキンソン病は10年~10数年という長い経過をとり、末期には寝たきりとなって、老衰や肺炎などの合併症で亡くなります。
●家庭で根気よく療養に努める
軽度の方については、散歩や体操を一定時間に繰り返して、リハビリテーションを行ってください。慢性進行性で治ることはありませんが、寿命にはさして影響はないと考えても、よいのではないでしょうか。
罹患者は精神的に過敏、抑うつ、不安を持ちやすくなるので、周囲の温かい心配りが必要です。本人も家族も根気よく、家庭での療養に努めるようにしましょう。
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