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∥四百四病の事典∥
心筋梗塞(こうそく)とは、心臓の表面を取り巻く血管である冠(状)動脈に動脈硬化が起こり、血が固まった血栓などで、冠動脈のある部分の血管が完全に閉塞、ないし著しく狭まり、心筋が壊死(えし)してしまう疾患です。
壊死とは、体の組織の一部が破壊されて生命力を失うことで、心臓の筋肉である心筋を養っている冠動脈の血流が途絶えて、栄養不足、酸素不足に陥るために起こります。
60歳以上の男性に多くみられ、発病の前兆として狭心症発作が起こるケースもあれば、何の前触れもなく突然、起こるケースもあります。起きやすいのは、朝、活動して一息ついた際や、一日の活動を終えて、くつろいだ際など。朝方に、胸が苦しくて目が覚めた時も、要注意です。
心筋梗塞の症状としては、前胸部の中央に突然、激しい痛みが起こり、悪心、吐き気、冷汗が現れ、ショック状態に陥ることもあります。痛みを感じる場所は前胸部の中央がほとんどですが、左胸部や前胸部全体、あるいは、みぞおちなどが痛むことがあり、左肩や左腕、首や下あご、右肩などに痛みが放散する場合もあります。
この発作は数十分から数時間続いて、いったん治まっても断続的に繰り返すこともあり、数時間から数日間で死亡するケースが、しばしばみられます。激しい胸痛があったら、一刻も早く病院へ行き、CCU(心臓疾患集中治療室)ですぐ治療を受ければ、助かる可能性が高まります。
ただし、高齢者ではこのような痛みのほとんどない無痛性心筋梗塞が多くなり、呼吸困難、ショック状態、意識障害などで見付かるケースが増えますので、十分な注意が必要です。
心筋梗塞が起こった時はもちろん、心筋梗塞の疑いがある時も、我慢したり、自宅で家庭療法をしたりしてはいけません。ためらうことなく直ちに、心臓病専門の集中監視と治療体制を備えたCCUのある病院に入院することが、大切です。
早ければ早いほど、集中治療を受けることによる急性心筋梗塞の救命率は、ずっと上がります。最初の1週間が非常に危険な時期で、特に数時間から3日以内に致命的な事態が起こって死亡することが多いため、専門施設での集中管理による適切な処置や看護が初期に必要なのです。
心筋梗塞急性期の治療として、入院後すぐに冠動脈造影が行われ、その状態によって、経皮的冠動脈形成術、経皮的冠動脈拡張術というカテーテル的治療か、血栓溶解療法が行われます。病院によっては、冠動脈バイパスグラフト術という外科的治療も行われます。
一般に、発症してから1週間以内の急性期は、心身ともに安静にすることが必要で、特に最初の数日間は絶対安静が必要です。痛みや苦痛に対しては、モルヒネなどの鎮痛剤や鎮静剤が用いられます。同時に、致命的となる危険な不整脈や心不全、心原性ショックなどの合併症の予防、治療も行われます。
急性期を乗り越えれば、回復期から慢性期のかなり安定した状態になります。病状にもよりますが、経過が順調ならば2〜4週で退院できます。退院後も医師の診察を継続し、再発作の予防に努めることも大切。
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